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 頑張れ!女子サッカー 05/09/11 (日) <前へ次へindexへ>

 波乱続きの2日目。それでも2強はセミファイナルへ。
 第60回国民体育大会(晴れの国岡山国体)準々決勝

 取材・文/西森彰
 初日は波乱が少なかった第60回国民体育大会成年女子サッカー。しかし、準決勝4試合が行なわれた2日目は、決勝戦までを見据えた有力チームの思惑や、連戦の疲労、そして35分ハーフという試合時間などの因子が結びつき、波乱に見舞われることとなった。



■埼玉県成年女子代表vs.大阪府成年女子代表

 まず、その餌食となったのが昨年のチャンピオン・埼玉県成年女子代表だった。苦戦した1回戦の試合前にも「トーナメントは1回負けたらそこで終わりなんだよ」ということをミーティングで言われていたにも関わらず、相手のペースに付き合って広島県成年女子代表に金星のチャンスを与えていた。

 この日の出だしは初戦ほど悪くはなかったが、シュートへの意識にやや欠けていた。「きれいに決めよう」という意識からか、コースが見えてもフィニッシュへの意欲に乏しい。大阪府成年女子代表が固めるゴール前で横パスの山が築かれていった。シュートを打ってそこに詰めたほうが確率的に高いことは選手たちも理解していたはずだが…。

 一方、大阪は若い選手たちが耐えながら、しかし、平均年齢が10代と若い大阪府成年女子代表は、キックオフから埼玉県の攻撃にさらされながらも、徐々にその攻撃に対応していく。「昨日の試合が終わってから、ディフェンス面の修正、再確認をしました。選手たちはきっちりと対応してくれたと思います。埼玉さんの攻撃は終始、正攻法でした。ウチはキックオフからずっとその攻撃を受けていたので最後には慣れていました」と大阪の松島芳久監督。時間とともに埼玉の攻勢は脅威を失っていった。

 そして大阪は計算どおりの戦いの中で、望外のゴールを奪う。前半ロスタイムのラストプレー。左ハーフで先発していた相澤舞衣が、埼玉が寄せてこないのを見て、思い切ってミドルシュートを狙う。これが小金丸幸恵の手の先をかすめ、ゴールマウスに飛び込む。喜びに弾けた白と青のユニフォーム。大阪は最高の時間帯に必要最小限の得点を得た。

 攻めるしかない埼玉だが、大阪のGK・海堀あゆみが大当たり。決定的なシュートを何本も防ぎ、さらに自信をつけてビッグセーブを生む好循環。また、一方的に押し込まれる展開の中で、前方の上辻佑実、島村裕子が味方からのボールを信じて、きっちりとカウンターの準備をする。そして、60分、海堀のロングキックの処理をDFが誤ったところを島村裕子が
攫い、決定的な2点目をゲット。その後も埼玉の攻撃を凌いだ大阪は、前回女王を破る大金星を挙げた。

「勝因ですか? うーん、最後まで集中してできたと思うんですよ。このチームが立ち上げの時から目標としていたチームバランス。ひとりひとりの距離ですね。それがしっかりと取れていた。次ですか? まあ悔いの残らないよう精一杯の力を出し切ってやるだけですね。今日勝ったことで最終日までここに残れる。それが嬉しいです」(庭田亜樹子・大阪)

 これからのなでしこジャパンを目指す若い選手たちが、現なでしこジャパンの胸を借りることになった。
埼玉の反撃を、大阪は最後まで凌ぎきった。


2005年9月10日(土)9:30キックオフ 瀬戸内市邑久スポーツ公園多目的広場 観衆:300人 天候:曇
試合結果/埼玉県成年女子代表0−2大阪府成年女子代表(前半0−1、後半0−1)
得点経過/[大阪]相澤(34分)、島村(60分)

(埼玉県成年女子代表)
GK: 小金丸幸恵
DF: 森本麻衣子、田代久美子、笠嶋由恵、西口柄早
MF: 高橋彩子、木原梢(H.T/保坂のどか)、岩倉三恵、安藤梢
FW: 佐藤舞、北本綾子

(大阪府女子代表)
GK: 海堀あゆみ
DF: 長船加奈(H.T/井上新菜)、河上恵実子、山本亜里奈、松下亜紀
MF: 庭田亜樹子、阪口夢穂、松田望、相澤舞衣
FW: 島村裕子、上辻佑実



■岡山県成年女子代表vs.鹿児島県成年女子代表

 開始45秒、右からのコーナーキックに合わせた田中静佳が今大会5ゴール目となる先制点を奪った瞬間、誰がこの結果を予想しえただろうか? 鹿児島県成年女子代表を率いる、鳳凰高校の嶋田正照監督も「あの最初の失点は早すぎた。もう少し長い時間を耐えて欲しかった」と振り返ったとおり、鹿児島もダメージの大きい先制パンチだった。しかし、結果的にはこの早すぎる先制点が岡山のチーム全体に毒となって回っていった。

 1回戦で7得点を挙げていた岡山は、既に勝利が決したかのように淡白なプレーになっていく。落ち込む鹿児島に畳み込むでもなく、ゲームをコントロールするでもなく、闇雲に縦に蹴っては、鹿児島のガードにぶつけるだけ。逆に、岡山の緩手に乗じた鹿児島はここから猛烈に巻き返していく。最大のキーポイントは35分ハーフというレギュレーションだった。

「『35分』に私も選手たちも違和感があった」(本田美登里監督)という岡山に対し、鹿児島は「ウチの主力の高校生たちは『35分+35分』の勝負に慣れていますから。70分なら全力で飛ばしても持つようなサッカーをしていますし、相手は感覚が掴みにくかったと思います」(嶋田監督)。なりふり構わず最終ラインを上げて、深く間合いに踏み込んでくる鹿児島。その矛先を交わすだけの岡山は、いつまでたってもペースが来ない。

 そして岡山が温存していた福原理恵を投入した直後、一瞬集中が切れたのを見逃さず、有吉佐織、筏井りさとつないで、最後に井手上麻子が同点ゴールを挙げる。日本女子がアジアに誇るU-18世代の攻撃が、鹿児島に同点ゴールをもたらした。後半に次々と選手を入れ替えて鹿児島ゴールに迫った岡山だが、バーやポストにも嫌われ、どうしても勝ち越しゴールを奪えない。延長前半、カウンターから有吉に逆転ゴールを奪われ、万事休した。

 敗れた岡山の本田美登里監督は「失うものがない相手は勇気を持って最後までラインをむちゃくちゃ高く保っていました。こちらは点を取られることを怖がって引いて、結果、間延びしてしまった。試合途中で次々に選手たちが体調を崩し、計算していなかった交代や、逆に交代が遅れた部分もあります。バーやポストに当たったボールが内側に入るか、外側に弾かれるかは、神様が決めること。ジャッジを含めて、微妙なところで運がありませんでした」と唇を噛んだ。

「勝たなければならない試合」というプレッシャーを背負っていた選手たちも、敗戦の責任を自覚している。今大会5ゴールを挙げた田中は「自分がいくら得点をとっても、最終的に一番重要なのはチームとしての結果。大会に向けて自分たちを支えてくれた地元の人たちの期待を、こうして裏切る結果になってしまったのが本当に辛い」。

 前年女王を飲み込んだ黒雲は、開催県をも飲み込んでいった。
開催県・岡山も早すぎる終戦。


2005年9月10日(土)11:20キックオフ 瀬戸内市邑久スポーツ公園多目的広場 観衆:800人 天候:曇時々雨
試合結果/岡山県成年女子代表1−2鹿児島県成年女子代表(前半1−1、後半0−0、延前0−1、延後0−0)
得点経過/[岡山]田中(0分)、[鹿児島]井手上(32分)、有吉(79分)

(岡山県成年女子代表)
GK: 福元美穂
DF: 安田邦子、城地泰子、山崎由加、池田瑞穂
MF: 北岡幸子、赤井歩(32分/福原理恵)、中田麻衣子(46分/光藤友希、74分/杉本あすか)、宮間あや、鎌田友理(H.T/中川理恵)
FW: 田中静佳

(鹿児島県成年女子代表)
GK: 佐藤富士
DF: 古城里香(61分/嶋田亜希子)、磯金みどり、森田貴子(87分/前園詩織)、加治屋草織
MF: 三輪由衣、筏井りさ、西田由美(70分/中村あき)、井手上麻子
FW: 松下春子(80分/山本裕美)、有吉佐織



■東京都成年女子代表vs.北海道成年女子代表

 番狂わせが相次ぐ中、第3試合に登場した東京都成年女子代表。「ちょっと変な空気にはなっていたかも知れません。前半は何となくまったりしたペースでプレーしてしまった」と日テレ・ベレーザの松田岳夫監督が渋い顔で振り返った前半だったが、確実にスコアを積み上げて、3対0とリードする。

 しかし、全くシュートすら打てない北海道女子代表が、代表選手に果敢に挑んでいく姿を見せているのに対し、東京都の選手たちは余裕を持ってプレーできるが故に、ペースが上がり切らない。選手たちもゴールの決まった瞬間、通り一遍の表情を見せるだけ。ハーフタイムに指揮官は声をかけずにはいられなかった。

「とても3点をリードして帰ってくるチームの表情じゃありませんでした。暗く、なんかサッカーをやらされているようで…。そこで『君たち、こんなサッカーをやっていて楽しいの? もっと自分たちを表現できる楽しいサッカーをやろうよ』と声をかけました。後半、多少なりとも内容が上がったのはそういうことかも知れません」

 後半、幾分持ち直した東京は、荒川恵理子がハットトリックを達成。途中交代で出場した5人の選手たちも巻き返しに向けて意欲的なプレーを見せてアピール。7対0で勝利し、番狂わせの波を止めて見せた。
後半ロスタイムに荒川がハット達成。東京は磐石の勝利。


2005年9月10日(土)13:28キックオフ 瀬戸内市邑久スポーツ公園多目的広場 観衆:400人 天候:曇
試合結果/東京都成年女子代表7−0北海道成年女子代表(前半3−0、後半4−0)
得点経過/[東京]荒川(7分、40分、69分)、大野(24分)、田村(33分)、永里(51分、56分)

(東京都女子代表)
GK: 小野寺志保(49分/松林美久)
DF: 中地舞、四方菜穂、田村奈津枝、宇津木瑠美(54分/戸崎有紀)
MF: 酒井與惠、伊藤香菜子(59分/岩清水梓)、近賀ゆかり(49分/原菜摘子)
FW: 大野忍(49分/南山千明)、荒川恵理子、永里優季

(北海道女子代表)
GK: 小林富樹子
DF: 保格彩乃(64分/大友利恵)、前田知美、小森有華、波佐谷唯
MF: 近藤由実、北野早苗、高橋優貴子(59分/稲森律子)、坂本珠梨
FW: 神成美紀、谷口祐香



■三重県成年女子代表vs.兵庫県成年女子代表

 初戦が大原学園JaSRAの長野県女子代表で、この日は伊賀FCくノ一の三重県成年女子代表。漫画の主人公のように、次から次へとL・リーグ所属地域を当てられていく兵庫県成年女子代表は第4試合に登場した。

 試合開始8分、山本絵美の左コーナーキックをファーサイドで大谷未央が折り返し、中央で待ち受けた鈴木智子が落ち着いて右足で叩き込む。このシーンでは全てフリーでプレーさせてしまった三重のマークがやや甘かったか。それでも、相手の隙から生まれた得点チャンスを、こうして逃さないあたりは、さすが兵庫だ。

「1点をとった後は無理せんでいい」と指示を送ったTASAKIペルーレFCの仲井昇監督。受けに回った分だけ、その後は三重にやや押されたが、1点のリードをキープしたまま前半を折り返す。そして後半に入ると、最初にガツンと行って三重陣内に深く攻め込んだ上で、ボールを大事にしながらゲームを完全にコントロール。前半3対5と劣勢だったシュート数も後半は8対1。計算どおりの試合運びでセミファイナルに進んだ。

 ここまで来ると2大会ぶりの優勝も完全に視野に入っているはず。TASAKIの仲井監督も「昨日、今日と出っ放しの選手もいますし、明日はちょっと入れ替えるかも知れません」と、メンバー変更も示唆した。相手も福島、岡山とL1所属県を連破し、波に乗っている鹿児島。好ゲームを期待したい。
兵庫もライバル・三重を完封し、準決勝へ進出。


2005年9月10日(土)15:02キックオフ 瀬戸内市邑久スポーツ公園多目的広場 観衆:400人 天候:曇
試合結果/三重県成年女子代表0−1兵庫県成年女子代表(前半0−1、後半0−0)
得点経過/[兵庫]鈴木(8分)

(三重県成年女子代表)
GK: 小林舞子
DF: 宮崎有香、馬場典子(45分/井坂美都)、山岸靖代、藤村智美
MF: 那須麻衣子、原歩、吉泉愛(57分/中尾直子)
FW: 村岡夏希(64分/佐藤愛)、小野鈴香、水本喜美

(兵庫県成年女子代表)
GK: 秋山智美
DF: 磯崎浩美、中岡麻衣子、下小鶴綾
MF: 甲斐潤子、新甫まどか、柳田美幸、佐野弘子、山本絵美
FW: 大谷未央、鈴木智子(45分/大石沙弥香)
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