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 頑張れ!女子サッカー 05/09/24 (土) <前へ次へindexへ>
チーム一丸で「世界制覇、そして金メダル」を目指したが・・・。

 本田ジャパン、世界への挑戦 (5)
 〜ユニバーシアード日本女子代表戦記〜

 取材・文/西森彰
 グループリーグ2連勝で2ndラウンド進出を決めたユニバーシアード日本女子代表。第3戦のフランス戦は、本田美登里監督が目論んでいたとおり、ターンオーバーを実行できた。各グループの順位は最終戦まで縺れていた。計算ずくでこのゲームの行方を決したところで、決勝トーナメントの組み合わせが楽になる保障はない。自分たちで今の勢いを止めるつもりはさらさらなかった。あくまで本田はチーム状況を最優先した。

 (ユニバーシアード日本女子代表 グループリーグ第3戦VSフランス)
 GK: 岸星美
 DF: 岩清水梓、田中景子(79分/奥田亜希子)、柴田里美、宮崎有香
 MF: 那須麻衣子、河田優、川澄奈穂美(60分/中川理恵)、北本綾子、佐藤衣里子
 FW: 江口なおみ(66分/伊藤美菜子)

 本田は、選手選考の際に「協調性の有無」も条件に入れていた。選抜チームは言ってみれば他人同士の寄り合い所帯。しかも今回は事前に集まる回数が少なく、互いのパーソナリティを理解する時間も限られている。本大会は心身に負担がかかる中1日続きの短期決戦。そこで空中分解=自滅があってはならない。

「もちろん、サッカーチームなんだから個の能力でひとりひとり選んでいって、最後の2、3人。『どっちを採るか?』の場面で初めて考慮したんですけれども。場を乱しても、それを敢えてしている自覚がある者はまだ良い。そういう選手はある場面でチームに刺激を与える個性にもなるから。問題は、自分が場を乱している自覚がない者。これは困る」

 メンタル面まで考慮して選ばれたサブメンバーは、出場機会が巡ってこない中でも、きちんと自分たちの準備をしていた。フランスについての情報はほとんどなく、男子をイメージしていたそうだが、対戦してみると五分以上に戦えた。その原動力となったのは、実戦に飢えていたメンバーたちだった。スコアレスドロー(その後にこのゲームの勝敗を決する3人ずつのPKが行なわれて勝利)だったが、試合内容に本田は満足だった。



 負けることが許されないトーナメント方式の2ndラウンド。その初戦は、グループリーグで降しているカナダとの再戦になった。本田はここでギャンブルに出る。前2戦に先発した松林美久に変わって、フランス戦からゴールマウスを引き継いだ早稲田大学の岸星美をそのままGKに起用したのだ。

「ターンオーバーの際にツケが回ってくるのは、実戦で呼吸を合わせていないディフェンス面です。実際、フランス戦でも微妙な感覚のズレから相手に決定機を与えていました。そして、このピンチをことごとく岸がビッグセーブで防いでいたんです。松林も良いGKなんですが、前の2試合がやや低調なデキでした。そこで河合一武コーチ、西入俊浩GKコーチと相談したんですが、私を含めて全員が『甲乙つけ難い』という意見なんです。結局、どっちを使っても結果論になるなら、ここは大会に入ってからの勢いに賭けてみようと」

 (ユニバーシアード日本女子代表 クオーターファイナルVSカナダ)
 GK: 岸星美
 DF: 岩倉三恵、岩清水梓、宮崎有香、西口柄早
 MF: 那須麻衣子、庭田亜樹子、渡辺夏奈(69分/中川理恵)、近賀ゆかり、佐藤衣里子(57分/川澄奈穂美、88分/伊藤美菜子)、
 FW: 北本綾子(83分/江口なおみ)

 カナダに今大会初めて先制を許したものの、岸は期待に応えてこのゲームでもスーパーセーブ、好フィードを見せた。そして、慌てずにボールをつないで戦う日本は、前半のロスタイムにPKを得る。負ければ終わりのトーナメントで、重要な場面、時間帯でのPK。よほど心臓が強くないプレーヤーでなければ、ボールを手にすることはできない。ベンチの指示を仰ごうとほとんどの選手たちがベンチを振り返った。

「この試合の前に『セットプレーは、局面によって私がキッカーを指示するけれども、自信のある者がいたら蹴って良い』って言っていたんです。でも、あの場面ではほとんどの選手が自信無さそうにベンチを向いていた」

 本田はちょっと嫌な予感がした。すると、気まずい雰囲気に背中を押されたように、キャプテンの庭田亜樹子が進み出た。

「監督からは『自信のある選手が行け』って言われてましたけれども、誰も行かないし。キャプテンっていうこともあって『ここは行かなきゃいけないのかな』と。でも、いざボールを置いたら、緊張はしなかったです。前日の練習後、何人かの選手と声をかけあってPK練習をやっていたんです。その時に一度も外していなかったので良いイメージがあった。本当にあの練習はやっておいて良かったです」

 選手たちがPK戦を想定して、自発的に行なった予行演習が活きた。庭田のキックで同点に追いついた日本は、後半、東アジア女子サッカー大会から直前合流した北本綾子が、期待に応えて2ゴールを奪う。3対1とカナダを降した日本はセミファイナルへと歩を進めた。



 アテネ五輪では、アメリカと五分に戦って準優勝。女子サッカー界でもいよいよ盟主の座に近くなってきたブラジル。グループリーグでブラジルの試合を見た本田は「これは強いな。このチームと当たったところが決勝戦だ」という印象を持っていた。しかし、そう思っていたのは相手も同じだったらしい。ブラジルのほうでは、12チーム中最速でグループリーグを突破した日本を警戒していたのだ。攻撃的なお国柄のブラジルが、日本へのリスペクトを持って試合に入った。こうして、ブラジル戦は意外にもスローな展開になった。

 (ユニバーシアード日本女子代表 セミファイナルVSブラジル)
 GK: 岸星美
 DF: 岩倉三恵、岩清水梓、宮崎有香、西口柄早
 MF: 那須麻衣子、庭田亜樹子、川澄奈穂美(72分/江口なおみ)、近賀ゆかり、渡辺夏奈(59分/佐藤衣里子)
 FW: 北本綾子

 互いに相手を見る感じでスタート試合は、徐々に日本が主導権を握り始めた。この時間帯に日本が先制点を奪っていれば「やっぱり日本は強いんだ」という過剰な意識をブラジルに刷り込めていたはずだ。だが、押し気味に進める中で近賀、北本がゴールチャンスを掴むが、得点を奪うには至らない。25分過ぎまで日本に傾きかけていた勝負の天秤は、29分からブラジル側に揺れた。

「ウチの選手がアウト・オブ・プレーで外に出ていたんですよね。で、ピッチ内に戻ろうとしていて、レフェリーの判断を待っていた。中にいる10人がそっちに気を取られていたんです。それがセットプレーのこぼれ球への反応を、ほんの一瞬、遅らせてしまった。2点目はシューターが前に立っているウチの選手を気にせずに打ったミドル。『絶対に相手の足元に飛び込むな』と言っていたんですが、結果的にはその一歩を寄せていれば違ったのかも知れません」

 ブラジルを相手に2点のビハインドを背負って後半に臨んだ日本。「攻撃陣が好調だし、2点なら何とかなる」と、相変わらず士気は高かった。そして選手交代でFWタイプの佐藤衣里子、江口なおみを投入してブラジルゴールに向かう。しかし、チャンスは幾つも作り出すのだが、相変わらずゴールが遠い。そして81分、「完璧なスライディング」(本田)でボールを奪った宮崎のプレーに対して、PKの笛が吹かれた。

「宮崎たちが懸命に抗議していましたけれど、やっぱり判定は覆らない。あの不運な判定で、それまで選手たちが持っていた緊張、そして追いかける気持ちが完全に切れてしまった」

 80分を過ぎての3点目は、疲れきっていた日本の選手たちから闘志を奪うのに十分だった。84分にも1ゴールを追加されて、最終的には0対4のスコアが残された。決して勝てないゲームではなかった。「最初の得点がウチに来ていれば逆のスコアもあった」と本田は悔やみ、「90分を通してみても、流れが来ていた時間は日本とブラジルが半分ずつ。決してスコアほどの差があったわけではありません」と庭田も振り返る。

 だからこそ、誰もが敗戦のショックを消化し切れなかった。泣き伏した日本の選手たちは、試合終了の笛がなってから30分経っても、ハルカプナーシ・フットボールスタジアムビルのピッチを立ち去ることができなかった。「世界制覇、そして金メダル」。ユニバーシアード日本女子代表が掲げた大目標は、セミファイナルで潰えた。
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