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鞘ヶ谷競技場の入り口にある、1940年2月の竣工時の銘板とプレート。
千疋監督は現役時代、日本リーグでこの会場でプレーしたことがある
との事。
過渡期
第33回 Kyuリーグ 第7節 ニューウェーブ北九州vsFC琉球


文/ふかえ まさひろ

2005年6月5日(日) 鞘ヶ谷競技場 観衆:1000人強
主審:廣重 副審:有田・野田 第4:森本
試合結果/ニューウェーブ北九州1−1(0−0、1−1)(PK1−3)FC琉球
得点経過/[北九州]近藤(64分) [琉球]松原(67分)
PK戦 [琉球]  比嘉○ 望月× 佐藤真○ クリスティアーノ○
   [北九州]  日高× 大塚○ 山崎× 井手田×

 今年のKyuリーグが昨年までと比べて大きく変わった点として、ホーム&アウェー制の導入があるのは、拙稿「長崎からの船出」にも書いたとおりだが、その効果は、特に熊本、琉球、長崎が数千人単位の観客を動員していることからもいい方に出ている感がある。そんな形でリーグ全体が活性化する中、北九州市で活動するのがニューウェーブ北九州(以下NW)である。

 北九州のサッカーといえば、1965年の第44回天皇杯で八幡製鉄が優勝(古河電工と同時優勝)し、翌1965年にスタートした日本サッカーリーグの初代8チームにも参加(ちなみにこの8チームの中でその後Jリーグに入らなかったのは豊田自動織機、名古屋相互銀行と八幡製鉄)。東京やメキシコオリンピック代表にも宮本輝紀をはじめ複数の選手を送り込むなど日本サッカー界での古豪だった。 また、平山、本山など、北九州からは今でも多くの有能なサッカー選手を輩出している。

 しかし、「北九州市は全国の政令指定都市の中で唯一、Jリーグクラブもプロ野球団もない都市」ということから、地域に根ざすクラブを目指し、2001年に三菱化成サッカー部を母体にNWが発足。百貨店と地図会社の地元大手企業をユニフォームスポンサーに迎え、ユースや女子、シニアチームを作るなど底辺を広げ、2004年10月にNPO法人化に踏み切った。5年目となる今年は初のプロ監督となる千疋美徳氏(前鳥栖監督)を迎え、Kyuリーグからさらに上を目指している。かなり大まかに言えばこんな感じ。



九州女子サッカーリーグでプレーする北九州ガールズ(白)
NW北九州のマスコット「Wavy」。小倉南区の曽根干潟に飛来する
「ズグロカモメ」をモチーフにしている。
 そんなNWが6月第1週の週末、クラブユース、九州女子リーグとトップリーグをホーム北九州で集中開催した。6月4日に新門司球技場で行われたの九州クラブユース(U-18)サッカー選手権2部でNWはヴィクサーレ沖縄に1−4で敗れ4チーム中4位で終了(ヴィクサーレ沖縄は1部最下位の春日イーグルスと入れ替え戦。ちなみに1部はアビスパ福岡が優勝し全国大会出場)。私は翌5日の試合を見に行った。

 5日の会場は戸畑区の鞘ヶ谷競技場。今でこそ北九州市立、メインスタンドは市原臨海のような神殿みたいな構造のスタンドとなっているが、ここは1940年に当時の八幡製鉄の従業員が勤労奉仕で建設した非常に歴史ある競技場で、かつては八幡製鉄サッカー部の本拠地として日本リーグが開催されたこともある。

 午前中に行われたのは九州女子サッカーリーグのNWガールス対福岡女学院FCアンクラス戦。私が到着したのは後半キックオフ開始時だったが、その時点で0−3。後半も一方的な展開で、追加点こそ1点だったものの0−4。テクニック、当たりの強さなどまさに「圧勝」で福岡女学院は4連勝、NWガールズは4連敗となった。(九州女子サッカーリーグについては、6月3日付福岡通信「歩みつづける九州女子サッカー」を参照してください)



 そして13時からはメインとなるKyuリーグ。NWはエースストライカーの植木を欠き、一方の琉球はベトナムで開催されたAFCアジアフットサル選手権に出場した比嘉リカルドが当日朝8時に帰国して福岡空港から会場に直行、ベンチ入りして臨んだ。

 試合は最初からNWペースになっていく。10分に近藤の折り返しを古賀がダイビングヘッドもゴール右、11分にも古賀がボレーシュートを放つも枠の上、18分には日高のFKもバーの上と、攻め込むもののゴールならず。琉球は24分、佐藤真也の右にそれたミドルがようやくファーストシュート。しかしその後も運動量でNWが琉球を圧倒し、何度となく攻め込むものの、肝心なところでトラップやパスにミスが出て、詰めが甘くゴールならず。琉球は文字通り最終ラインで何とか守って、残り5分からセットプレイに活路を見出せそうな感じはしたが、バーを越えたりクロスバーに嫌われたりで前半終了。

 後半立ち上がりは一進一退の攻防。53分に琉球は左サイドの石井に代え帰国したばかりの比嘉を投入。比嘉はボランチの位置に入り、中盤にいた佐藤真を左に移す。一方NWも54分、FW古賀を星原に入れ替えた。その後NWが攻めるものの琉球の体を張った守りにゴールを奪えず、観客のイライラが募ってきた64分。左サイド大塚のクロスに近藤がヘッドで合わせNWが先制。スタンドが一気に盛り上がる。しかしわずか3分後の67分。左サイドから比嘉のCKがファーサイドに飛んだところ、走りこんできた松原がダイビングヘッドを決め、すぐさま同点に追いついた。

 その後は琉球がボールをキープする時間が長くなり、NWはカウンターに活路を見出そうとするものの、84分に琉球のCKのこぼれ球からNWの森本が独走、右のアウトサイドキックでゴールを狙うも、琉球GKがこれをはじきだしゴールならず。

 ロスタイム、ゴール前中央から距離のあるFKを比嘉が直接狙うもバーの上に飛び、終了のホイッスル。Kyuリーグ特有のシステムである「同点でのPK戦」に入った。
 そしてPK戦では、NWのGK永冨が1本止めたものの、琉球のGK野田が4本中3本を止め、琉球が勝ち点2をもぎ取った。



ニューウェーブ北九州を支援する自販機。北九州市の施設を中心に
市内各地にあり、クラブの貴重な運営資金源となっている。設置場所は
公式HPにも案内されている。
ニューウェーブ北九州ガールズの選手たち。彼女らもクラブの重要な
一員である。
 FC琉球の試合を見るのは今年初めてだったが、比嘉が帰国したばかりで本調子には程遠かったとはいえ、正直言って今年見たKyuリーグ上位の新日鉄大分、ロッソ熊本と比べて一番落ちる気がした。与那城ジョージ監督も試合後、やれやれという表情だったが、勝点1を失ったというより、勝点2をもらったというのがこの試合については正しい評価ではないだろうか。

 一方のNWは、図らずもホームで開催した各種別3試合でいずれも敗戦という結果になってしまった。決定力のなさに泣いて、植木の不在が結果として響いたのもあるが、膠着状況を打開する交代の手を打たない千疋監督に、ついつい鳥栖時代を思い出してしまった。

 しかし、この日は来場を各地で呼びかけていたらしく、1000人以上がスタンドにやってきて、最後まで声援を送っていた。売店のTシャツやタオルマフラーが軒並み売り切れるなどの効果もあったみたいだ。また、地元CATVがホーム全試合を録画中継したり、民放テレビが数局取材にくるなど、少しづつながら関心が高まっているのだろうか。



 この度、日本代表がドイツワールドカップ出場を決めたが、私を含め前回(フランス98予選)ほど熱中できない人が、特にJリーグのサポーターに少なからずいると聞く。私などフランスの予選は全試合録画し、現地にいけなくても代表ユニを着てテレビの前に座っていたが、今回は試合中に寝たことが1度や2度ではなかった。

 このもやもやした気持ちは、サッカーへの関心が、代表からクラブ単位へ移行する際の過渡期の現象なのだろうか。エルゴラッソ6月3日号の後藤健生氏のコラムによると、欧州の強豪国も通ってきた道(ただし数十年前だが)とあり、多少はすっきりしたが。

 企業チームから市民クラブへ、アマからプロへ、北九州を代表するチームのあり方は、そのまま日本サッカーの縮図に見える。まさにその過渡期にあるNWは、成績だけいうと、JはおろかJFLにもまだまだ手が届かず、後からきたクラブの後塵を拝するような状態ではある。

 しかし、NWは九州のJやJを目指すクラブでは唯一、女子やシニアといったクラブとしての広がりも持っている。あとは、どう「地元(5市合併の経緯がある北九州市では、これが一番難しいかもしれない)」に根付いたチームを作っていくのか。あせらず、じっくりとクラブを作っていってほしいと願う。








(ニューウェーブ北九州) (FC琉球)
GK: 31永冨 GK: 1野田
DF: 4上農 6森脇 13山本 14山崎 DF: 3松原 5クリスティアーノ 14渡邉
MF: 7大塚 8日高 10井手田 17森本 MF: 9當間(80分→FW18小栗) 8望月 4佐藤真 19石井(53分→MF10比嘉) 7佐藤拓
FW: 11近藤 28古賀(54分→FW 20星原) FW: 16黒田(63分→FW20宮城) 17関
SUB: GK1西岡 DF16手嶋 DF23川添 MF22中原 MF24福山 FW19半田 SUB: GK30和田(琉球はベンチ入り4人のみ)
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