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 webnews 03/12/04 (木) <前へ次へindexへ>
「こぼれた掌中の優勝」アントラーズがレッズに無念のドロー
2003Jリーグ ディビジョン1 2ndステージ 第15節 浦和レッズvs.鹿島アントラーズ

2003年11月29日(土) 14:04キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:51.195人 天候:雨
試合結果/浦和レッズ2−2鹿島アントラーズ(前0−2、後2−0)
試合経過/[鹿島]小笠原(6分)青木(32分)[浦和]永井(76分)エメルソン(89分)


取材・文/砂畑 恵

 フェルナンドのロングクロスがぐんと伸びる。ジャンプしたニキフォロフの体勢は、わずかにバランスを欠いて、クリアが短い。フリーの小笠原は躊躇せず、浮いたボールをダイレクトボレー。試合開始から6分、がむしゃらに攻めるのだと、そんなアントラーズの心意気を感じさせるゴールがゲームの幕開けだった。
 この日の埼玉スタジアムは霧雨。時折、もやが発生してピッチを煙らせる。大粒の雨なら屋根で覆われ濡れることもない指定席の一部も、風で巻いた細かい雨粒が降りかかる。それでも5万人を越える大観衆でスタジアムは紅に染まった。



 最終戦までもつれ込んだ2ndステージの優勝争い。勝ち点24、得失点差+2でアントラーズは2位につけている。同時刻のマリノスvs.ジュビロの結果によって、事情は様々に考えられるが、優勝カップを手にするには、アントラーズはともかく勝つことだけが絶対、そして最低条件だった。故に、立ち上がりは相手の出方を探る慎重なアントラーズが、今日はキックオフから烈しい闘志を剥き出しにしてレッズを攻め立てたのだ。

 前節のグランパス戦の惨敗でリーグ優勝の芽が潰えたレッズにとって、この試合に対する意識付けはやや薄れ気味。目の前でアントラーズの胴上げは阻止し、サポーターに無様な姿を見せられないという意地だけとなる。「絶対に勝つ」というモチベーションの高いアントラーズに、レッズイレブンは引けを取った。そんな心理状態が冒頭のシーンに繋がったとも言えるだろう。

 アントラーズの先制点を受け、目を醒ましたレッズは攻撃に出た。しかしここでも、底から沸き上がるような闘争心に燃えるアントラーズDFに阻まれる。レギュラー組の戦線離脱で先発起用となった、若い内田・池内を統率しながら、秋田が、大岩が、レッズFWを潰しに掛かる。相手の厳しい寄せにペナルティーエリアへボールを持ち込めないレッズは、ミドルシュートなどで単発な攻めを繰り返した。

 しかも22分にはニキフォロフが足を痛め、長谷部を急いで投入して、内舘をバックラインへ。今シーズン、何度も経験する布陣ではあるとはいえ、早い時間帯でポジションの変更を余儀なくされた。それでも23分、CKの零れを内舘が押えたミドルシュート、28分には山瀬がFKから直接ゴールを狙ったが、いずれもゴールを揺することは出来ない。



 対するアントラーズは、遡ること20分に石川のシュートがポストに当たってからというもの、ややレッズにボールをキープされる時間が増え始めていた。その悪い流れを断ち切ったのが深井である。32分、右サイドでボールを受けた深井は2度、3度と切り返し、マークに付いた坪井をフェイントに掛ける。坪井を引き離した深井はとゴール前へとマイナスのパスを送った。味方と重なって山田のクリアは不十分となり、そのボールを石川が横に叩いて、最後は青木が蹴り込んだ。

 2点のリードを奪ったアントラーズであったが、後半になるといきなりピンチを喰らう。46分、池内がエメルソンにファウルを犯しFKとなる。キッカー山田の早いリスタートに、池内はマークをしようとしたエメルソンをペナルティーエリア内で倒してしまった。そのPKに臨んだエメルソンはシュートミス。アントラーズとしては胸をなで下ろす一幕であった。

 そういうことではアントラーズに運が味方をしていたと思われるのだが、アントラーズには前半の気迫が薄れていた。確かに前半2得点を挙げ、無用な失点を避け、そしてあわよくばカウンターでの得点を狙うというのは、勝利の常道だとも言える。ロングボールをFWに預けての攻撃もよくあるパターンだ。ところが、平瀬・深井にロングボールを放り込むだけで、中盤以降の押し上げがなくなってしまったのだ。守りに入った分、徐々にアントラーズは自分達の攻撃のリズムを乱していった。



 逆にレッズは調子が上向く。DFは小まめにボールを拾い、サイドに早目にボールを展開する。中盤でもフォアチェックを仕掛けてボールを奪うシーンが目立ち始めた。今シーズンのレッズらしい動きが戻る。だが簡単には引き気味となった相手を崩せないとみたベンチは、60分、山瀬に代えて永井を投入。この采配が運命の歯車の掛けがねを外した。

 73分、相手の壁に苦しみ、なかなか突破出来なかった田中が、秋田をかわしてペナルティーエリアに侵入。ゴール前に控えたエメルソンにパスを戻す。エメルソンのシュートは曽ヶ端が阻止するも、ゴール前に詰めた永井が蹴り込み1点差に追い上げた。その時のアントラーズは本田を投入しようという矢先だった。

 この失点で、アントラーズは本田に続いて、中島をピッチに送る。だがレッズに傾いたゲームの大勢を引き戻すのは容易くはない。82分には再びDFの金古を交代出場させて守備の引き締めを図る。ただアントラーズが怖いのは、90分を間際にしてもセットプレーで得点をもぎ取ることが出来ること。事実、85分に大岩のロングパスから中島へとボール渡ってCKを得た。そのCKで大岩が紙一重の飛び込みを見せている。瀬戸際追い詰められても、守り切れる、得点を奪える、それが去年まで培ったアントラーズ神話とも言えた。

 しかし今年のアントラーズを象徴するような事態が起こった。既に時間はロスタイム。テクニカルエリアからセレーゾ監督が両手を押し下げて「そのまま」という動作を行なう。そのことは選手も解っていた。ところがマイボールを内舘にカットされ、素早く鈴木、永井とボールを繋がれた。永井は対面する大岩の股を抜いて、ボールをゴール前に運びクロスを挙げた。そのボールに秋田の背後から飛び出したエメルソンがダイビングヘッド。アントラーズが勝利ばかりか、掌に収めたはずの優勝をも手放した瞬間だった。



 アントラーズにとって、今期は苦しんだシーズンだった。主力選手の移籍や、相次ぐ怪我人によりベストといえる期間はほとんどなかった。シーズン途中でチーム内にも不協和音があるなどと囁やかれもした。かつての粘り強さが色褪せ、最後の最後で、守り切れずに落とした星も多い。チームが変革期を迎え、新たな1歩を踏み出だす上で、様々な問題点が浮き彫りとなったといえよう。

 最後に、引き分けに持ち込んだレッズについても。こちらもこの試合は今シーズンのレッズを表しているゲームだったと思う。前半2失点という状況、それも苦手としていたアントラーズ。今までなら恐らく負け試合になっていたことだろう。今シーズンは、そこで引き分けに持ち込める強さが身に付いてきた。それと同時に念願のタイトルも手にすることも出来た。だが、あと2、3試合という大事な場面でゲームを落とし、リーグ優勝の機会を棒に振った。それはチームとしての勝負強さは安定期に入っていない証拠だろう。

 アントラーズは過渡期、レッズは成長過程の真っ只中と、足りないモノが何かしらあった。来シーズンに向けて、それが何であるかを悟った時、真に逞しいチームへと更なる飛躍を遂げるに違いない。


(浦和レッズ) (鹿島アントラーズ)
GK: 都築龍太 GK: 曽ヶ端準
DF: 坪井慶介 ゼリッチ ニキフォロフ(22分/長谷部誠) DF: 内田潤 秋田豊 大岩剛 池内友彦(82分/金古聖司)
MF: 山田暢久 鈴木啓太 内舘秀樹 平川忠亮 山瀬功治(60分/永井雄一郎) MF: 青木剛 フェルナンド(77分/本田泰人) 小笠原満男 石川竜也
FW: 田中達也 エメルソン FW: 平瀬智行 深井正樹(78分/中島裕希)
SUB: 山岸範宏 三上卓哉 堀之内聖 SUB: 西部洋平 野沢拓也
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