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 webnews 04/08/22(日) <前へ次へindexへ>
日本、ガーナに意地の1勝。彼らはアテネで何を掴んだか
アテネオリンピック2004 グループB 第3戦 日本vs.ガーナ

2004年8月18日(水)20:30キックオフ パンテサリコ・スタジアム 観衆:6813人 天候:晴
試合結果/日本1−0ガーナ(前1−0、後0−0)
得点経過/[日本]大久保(37分)


文/中倉一志

 メダル獲得どころか、世界との差をまざまざと見せ付けられたアテネ五輪。早々とグループリーグでの敗戦が決まった日本が、果たして自分たちのサッカーを発揮するだけのモチベーションを持てるかどうか。それが最も心配だった。これまでの試合を観ても、彼らは決して自分たちの力を発揮できなかったわけではない。むしろ、良くも、悪くも彼らは自分たちのサッカーを存分に発揮していた。それでいての2連敗。その現実は、単なる悔しさという言葉では片付けられるものではなかったからだ。

 しかし、立ち上がりから日本はいいリズムで試合に入る。高い位置からプレッシングをかけて奪ったボールを素早く前線に展開する。山本ジャパンが2年間をかけて追い求めてきたサッカーのスタイルだ。中でも、今大会初出場となった石川と菊地の動きが目立つ。持ち味である縦へのスピードと突破力を生かして何度も右サイドを駆け上がる石川。前線への球出しと中盤の守備に非凡なものを発揮する菊池。この2人のプレーが日本に落ち着きを与えていたことは間違いない。

 引分け以上でグループリーグ突破が決まるガーナが、それほど攻撃的に仕掛けてこなかったことも日本に幸いした。ガーナのスタイルはトップのA・ギャンに長いボールを当てて、それを両サイドの選手と、やや低い位置に構えるアッピアがフォローして前へ運ぶというもの。それぞれの選手のポジションは固定されておらず、頻繁にポジションチェンジを繰り返して自由奔放に攻めてくる。しかし、この日の試合に限っては、それほどスピードも迫力もない。「引分けでOK」。そんな気持ちが選手たちの中にあったのかもしれない。



 相変わらず、最終ラインでの不用意なプレーでピンチを招くという日本の癖は消えてはいなかったが、それでも決定的なピンチを招くことだけは免れた。全体的に見れば、高い位置からのプレッシングで相手のスピードを殺し、ボールに対してしっかりと身体を寄せることでガーナの個人技を発揮させることも防いだ。そこへ石川の突破と、菊地の落ち着いたプレーが加われば、日本が自分たちのペースで試合を進められたことは当然のことだったのかもしれない。

 18分、阿部のFKに今野があわせる。30分、やや遠めの位置から放った阿部の直接FKがゴールを襲う。33分には菊地からのロングフィードを受けた石川が決定的なラストパスをゴール前に通す。さらに34分、小野の狙い済ましたループシュートがクロスバーをかすめた。ジワジワとガーナゴールを脅かす日本。そして待望の瞬間が37分に訪れる。相手のDFラインの裏へ巧みに走りこんだ大久保に菊地のロングフィードが渡る。やや難しい体制ながら、大久保は前に出ていたGKのポジションを瞬時に確認。頭で合わせてループシュートを放つと、静かに、ゆっくりと、しかし確実にボールはゴールマウスに吸い込まれた。

 負ければグループリーグ突破が危うくなるガーナは、後半に入ると積極的に前に出る。しかし、日本は人数をかけてこれに対抗。大久保を前線に残して全員でゴール前を固めた。時間の経過とともにズルズルと下がる最終ライン。ゴールをこじ開けられそうな気配が漂う。しかし、日本は集中力だけは失わない。さらに、ガーナが中央からの突破にこだわり続けたことも幸いした。そして90分が経過。日本は最終戦で、ようやく勝ち点3を手に入れた。



 アテネの舞台は日本に何を残してくれたのだろう。余りにもあっけない終戦は、様々なところで批判にさらされているが、誤解を恐れずに言えば、監督を含めたスタッフ、選手たちは持てる力を存分に発揮していた。決して、戦えなかったわけではなく、経験のなさから来る緊張があったわけでも、臆病な面が出たわけでもなかった。自分たちの力の全てを世界を相手にぶつけたのだと思う。そういう意味では、戦えなかったとする批判はお門違いだ。

 しかし、彼らが2年をかけ、過去最大とも言える試合数をこなして準備してきたものは、世界に対しては不十分すぎた。2年前に課題とされていたものは、結局最後まで解消することなく、また競争という名のもとに選手の入れ替えは行ったが、2年間をかけて大きく成長の後を見せた選手も少なかった。「谷間の世代」と呼ばれながらも、ポテンシャルの高さでは過去の代表と遜色のないものを持っていたが、それを発揮する術を2年間で身につけることができなかった。

 世界との正確な距離を図ることができていなかったことも、戦ってみて明らかになった。チームが追い求めていた戦術は世界相手に通用しないものだった。そして、過去、スカウティングにかけては安心していられた日本だったが、パラグアイ、イタリア相手に何の策も用意できなかったことも驚きだった。「アテネ経由ドイツ行き」のキャッチフレーズで戦った五輪代表チームだが、残念ながら、その目論見は外れたというしかない。改めて分かったことは、このままでは世界には勝てないということだった。



 決して、彼らを責める訳ではない。しかし、目の前にさらされた現実を正確に掴むことこそが、敗れた日本のすべきことだと思う。慰めや同情、そして言い訳は彼らにとって何の役にも立たない。メダル獲得を目指していながら、相手にもされずに敗れたという現実から目をそらさないことから始めるべきだろう。なぜ、そんなに大きなギャップがあったのか、そして、なぜ、準備ができなかったのか。そのひとつ、ひとつをしっかりと分析することが、今は求められていることだ。

 正直に言えば、世界と戦ったという事実以外に得られたものは多くはない。戦ってみて分かったことだが、メディアやファンも含めて、オリンピックでメダルを獲得すことの大変さを見誤っていたということが分かったに過ぎない。そんな大会を振り返ることは、とても厳しく、辛いものだろう。しかし、それをしなければ、本当にアテネは単なる歴史の1ページとして埋もれてしまう。アテネから何かを得ることができるのか。それとも敗戦という事実だけが残るのか。その答えは、これからの態度一つにかかっていると言える。

 戦えそうに見えたが、実は世界はまだまだ遠かった。確かに日本の実力は飛躍的に伸びたが、世界の強豪と伍していくには、まだまだ足らないものが多かった。そういう認識からスタートすることが、代表チーム、メディア、サポーター、ファンも含めた我々に求められていることなのだと思う。


(日本代表) (ガーナ代表)
GK: 曽ケ端準 GK: オウ
DF: 阿部勇樹 田中マルクス闘莉王 茂庭照幸 DF: オセイ パポエ コールマン
MF: 菊地直哉 今野泰幸 石川直宏(62分/松井大輔) 小野伸二 駒野友一(23分/森ア浩司) MF: チブサ
FW: 高松大樹 大久保嘉人(82分/田中達也) FW: B・ギャン(57分/テイラー) アッピア ムンタリ(77分/ラミネ) A・ギャン ピンポング(46分/ポク) ティエロ
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