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 webnews 04/12/29 (水) <前へ次へindexへ>
「試合を読む目」、勝負所でのベテランの活躍で磐田が天皇杯決勝進出。
第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝 浦和レッズvs.ジュビロ磐田

2004年12月25日(土) 15:04キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆:35.523人 天候:晴
試合結果/浦和レッズ1−2ジュビロ磐田(前0−0、後1−2)
試合経過/[浦和]田中達(71分)、[磐田]藤田(72分)、中山(83分)


取材・文/砂畑 恵

 ユニフォームから私服に着替えた藤田はより痩身に見える。横でコメントを取る自分の方がややもするとムダ肉だが体格がよく見える。藤田が途中交代で出場する際、山本監督から求められたことは「タメを作ること」と「ゴール前に飛び出していく動き」だった。指揮官が勝負所での起用を考え、ベンチスタートとなった藤田。「監督がそう言うのなら、そうなんでしょう。僕には何とも言えませんが、自分は与えられた役割をやるだけですから」と、凛とした声の響きに藤田のプライドを感じた。



「前半は両チームともほとんどチャンスらしいチャンスはない、ほとんどノーエヴェント試合だった」(浦和・ブッフバルト監督)。両チーム無得点で折り返し、GKが慌てる決定的なシーンがほとんどなかったということで言えば確かにそうだ。

 だがピッチ場での両チームの闘いに心は踊った。激しい中盤の潰し合い。浦和の前線にボールが入れば福西を中心とした磐田守備陣が一斉に襲いかかり、磐田のキーマンである名波にボールが渡れば鈴木や長谷部が身を呈して囲い込む。サイドの主導権争いも熾烈。浦和は左から平川が、右からは山田やアルパイが積極的に攻め上がれば、それに負けじと、磐田も西や河村が前線に攻撃参加して押し返した。DFの集中力も高く、簡単には相手をバイタルエリアへと侵入させない。ボールポゼッションこそ浦和がややリードはしていたが、ゲーム支配という点では五分と五分。意地のぶつかり合いが繰り広げられた。

 そんな中、特に目立った活躍を見せていたのは永井だ。準々決勝では「前半20分もてば」と医師から告げられていた程で、この試合でも相手にハードなチャージを受けてうずくまるシーンが見られるくらい、腰のコンディションは万全ではない。だが「永井からの攻撃っていうのは本当に止めようもないくらい迫力がある」(磐田・山本監督)と恐れられるプレーで磐田をキリキリ舞いさせた。64分、ドリブル突破で右サイドを切り裂き、自らがシュート。これは残念ながらクロスバーに阻まれるも、71分にはアルパイの縦パスをダイレクトでセンタリングして、田中のヘディングによる得点を呼び込んだ。



 しかしその1分後、磐田が直ぐに追い付いた。そこにはベテランの藤田らしい「流れを読む目」があった。先制した浦和はほんの少しだが集中力を欠いていた。そんなタイミングで磐田にFKが与えられる。福西が素早くリスタートするのを見越して、福西が蹴る前にゴール目指して走り出しを開始。福西からパスを受けた河村が粘って上げた低いクロスをしっかりと捉えた。浦和は今までもこういった藤田のプレーに苦汁を舐めさせられてきて警戒はしていたはず。それでも藤田の勝負所を一瞬で見極める眼力は上回った。

 この同点弾で「慌てて2−1にしようとそういう気になってしまって、我々のやっていたサッカーというものを崩してしった」(浦和・ブッフバルト)という浦和。81分には田中がゴールマウスを飛び出した佐藤の鼻先でループシュートを狙うが、ボールわずかポストの右脇に外れてしまう。

 逆に手繰り寄せたゲームの流れを断ち切ることなく、DFの選手も勢い付いて攻めに出る磐田。そして83分、鈴木の縦パスに反応した川口からのマイナスのパスに西が飛び込み、タメを作ってDF2人を引きつけ前にパスを送る。そこには中山。9月18日のリーグ・鹿島戦以来となる値千金のゴールを決め、元日の国立に立つ切符をもぎ取った。



 今年1年を振り返り、浦和を「登り龍」と表現すれば、磐田は「伏龍」。波間に身を潜んで力を蓄え復活の時を待つ。代表クラスの選手を多く抱える磐田は「試合の流れを読み、危険を察知する力」が備わっていると、ブッフバルト監督でさえも賞賛する。しかしこれは今まで積み上げた財産だ。「ジュビロのベストパフォーマンスとはいかない」と山本監督も感じている通り、新たな「強い磐田」にはまだハードルが残る。今日の試合でも、かっての磐田では考えられないパスミスでチャンス逸する場面が何度も見られた。若返りを図るチームは天皇杯のタイトルを取るかどうかで、大きな転換点を迎える気がする。

 一方、ナビスコ杯、チャンピオンシップ、天皇杯とタイトルを目の前にして、結局は1つも獲得することが出来なかった浦和。「理想とする攻撃サッカー」を追求し続け、破れ去ったことに関し、中にはタイトルの為に「現実路線のサッカーをすべきだった」という意見も聞こえる。だが今年は浦和にとりベース作りの年。そんな浦和に、まだ足りない点を今日の磐田が知らしめてくれた。来シーズンはどこも浦和を研究し、打ち負かす機会を狙うだろう。だがそれは1シーズン前の浦和がモデル。「また0からしっかりスタートして、足りない部分をしっかり伸ばしていきたい」(浦和・ブッフバルト監督)。古きを壊し、新しい浦和の誕生が来年の課題になる。


ブッフバルト監督(浦和レッズ)記者会見
山本昌邦監督(ジュビロ磐田)記者会見


(浦和レッズ) (ジュビロ磐田)
GK: 山岸範宏 GK: 佐藤洋平
DF: アルパイ 堀之内聖(88分/岡野雅行) 内舘秀樹 DF: 鈴木秀人 田中誠 菊地直哉
MF: 山田暢久 鈴木啓太 平川忠亮 三都主アレサンドロ(70分/酒井友之) 長谷部誠 MF: 河村崇大 福西崇史 服部年宏 西紀寛 名波浩(67分/藤田俊哉)
FW: 田中達也 永井雄一郎 FW: グラウ(78分川口信男) 前田遼一(60分/中山雅史)
SUB: 都築龍太 坪井慶介 横山拓也 SUB: 岩丸史也 山西尊裕
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