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 webnews 04/12/31 (金) <前へ次へindexへ>
チーム一丸でライバルを一蹴。日テレ、忘れ物を取り返しに国立へ。
第26回全日本女子サッカー選手権大会準決勝 日テレ・ベレーザvs.TASAKIペルーレ

2004年12月29日(水)13:00キックオフ 国立スポーツ科学センター西が丘サッカー場 観衆:1,198人 天候:雪 
日テレ・ベレーザ3−1TASAKIペルーレFC(前半3−0、後半0−1)
得点経過/[日テレ]荒川(28分、44分)、澤(44分)、[TASAKI]鈴木(83分)


取材・文/西森彰

 インカレの準決勝で、運営を手伝いに来ていたTASAKIペルーレFCの吉田茂之部長と会った。「強さが戻ってきた? うーん、どうでしょう。まだ昨年のデキに戻っている途中だと思いますけれどね。この間、ベレーザとの決勝をビデオで見たんですが、選手たちが自分たちのプレーに『うわー、このチーム、強いわー!』と言っていたくらいだから(笑)」。

 なでしこジャパン所属選手は、チームでの練習の他に100日程度の代表合宿、遠征があった。上田栄治前監督下で主力を成した5人の選手は、ほとんど休みなく転戦した。さらに五輪の活躍でテレビからの出演依頼も増えた。「ウチは会社の業務を休んで行かせているわけだから、TVの出演料も彼女たちの手元には入りませんよ」。それでも世間の認知度をあげるために、1泊2日で東京へ向かう。

「やっぱり体に応えてきますよね。テレビを見て、試合に来てくれる人たちも、増えてきているのは事実ですが、この11月、12月は一切、出演禁止にしました」。今年最後のタイトルに照準を合わせ、2回戦、準々決勝と強いTASAKIの姿が戻りつつあった。だが、そこでチャイニーズタイペイ戦と代表合宿が入った。代表にも強いこだわりを見せる選手たちは、ハードな合宿でも頑張ってしまう。元の木阿弥になった。

「(川上直子の欠場は)昨日の晩まで悩んだんですが、彼女の膝はボロボロ。とても、このピッチで使えるコンディションになかった。ウチの代表組でまともだったのはヤナギ(柳田美幸)とイソ(磯崎浩美)くらいでしょう」と仲井昇監督は悔しそうに語った。長期間に渡って、高いパフォーマンスをキープする荒川恵理子や、コンディションが本来のものに近づいてきた澤穂希を擁し、控えのメンバーも層が厚い日テレ・ベレーザ。ゲームを前に勝敗は決していたのかもしれない。



 TASAKIに唯一、勝機があったとすれば、この日のピッチコンディションだった。天気予報を上回るペースで降ってくる雪は、芝の上に白い厚化粧を施した。こんなピッチコンディションでは、日テレの選手たちが持っている、細かいボールテクニックが使いにくい。大きな展開で走力勝負に持ち込み、日テレのDFを疲れさせ、そこで起こりうるミスやアクシデントに乗じた得点を狙いたかった。前半7分、大谷未央のヘディングでウラに抜けた鈴木智子が、小野寺志保と1対1になりかけたが、シュートの寸前で須藤安紀子のスライディングに防がれる。これがTASAKIにとって最大のチャンスだった。

 日テレの宮村正志監督は雪の積もったピッチを見て「いつものサッカーは諦めてくれ」と選手たちに伝えていた。中盤で小刻みにパスをつなぐ自分たちのスタイルを放棄し、まずは相手陣内にボールを放り込んでリスクを回避する。そして、そのボールを目がけて前線の選手たちが追い込んで、TASAKIのミスを誘う。2年連続で煮え湯を飲まされた相手に勝つための勝負に徹した采配を振るい、主導権をこちらに引き寄せる。

 28分、澤から伊藤香菜子とつなぎ、右サイドから伊藤が上げたクロスに荒川が頭を合わせる。美しいループがTASAKIのゴールネットを揺らした。その後も日テレはTASAKIを一方的に攻め立てる。44分、右サイドの角度の無いところから放った澤のシュートが、クリアしようとした相手DFの足に当たってGKの頭上を越える。さらにロスタイム、須藤が前線に蹴りこんだFKが混戦を産み、その中で荒川がきちんと詰めて3点目。

「前半を1点で終われていたら」と悔やんだTASAKIの磯崎浩美。「良い時間帯に点がとれた」と笑顔がこぼれた日テレの宮村監督。どちらにとっても大きな意味を持つ、前半終了間際の2点だった。

 劣勢で推移するゲームの中で、53分、仲井監督は2枚のカードを切る。2年目の中岡麻衣子、そして新人の大石沙弥香だ。「若い選手たちを出すと『ベレーザ』の名前に負けてしまう」と語っていた仲井監督は、昨年の決勝戦でもギリギリまで選手交代を引っ張った。この日は敗戦を覚悟の上で、明日の力に経験を積ませようとしたのだろう。69分には、さらにもう一人のニューフェイス・岩田久美もピッチに送り出す。

「後から出てきた若いフレッシュな選手たちが良い動きをしてくれた」と、ゲームキャプテンを務めた磯崎からも合格点が出たように、彼女たちは強敵を前にしても怖がることなく、スムーズに試合へ入り込んだ。この日、唯一のゴールも、右サイドから上げた大石のクロスが起点。相手クリアがファーサイドへ流れたところを鈴木が蹴りこんで、ライバルに一矢を報いた。



 最後にケチがついたとは言え、日テレはスコア以上の完勝を収めた。「こういうグラウンドへの対応、こぼれ球への反応が、ウチのほうが良かったということだと思います。(『兄貴分の東京ヴェルディ1969とアベック優勝がかかりますが』)そうですね。ヴェルディもなかなか行くことはないんで(笑)。チャンスがあるうちに決めたいですね」。そう語った宮村監督以下、チームは久しぶりのタイトルへ向けて、気持ちがひとつになっている。

「ひとつ言っていいですか? 今日、試合の前にいろいろあって、みんなでスパッツをはいて出たんですけれど、スタッフの皆さんが走り回ってユニクロで買ってきてくれて…。優勝して、スタッフの皆さんに恩返しをしたいと思います」(荒川・日テレ)

「(『ファンの方たちへ一言』)そうですね。今日はサッカーをやって走っている自分たちもすごく寒くて。見ている人たちはもっと寒かったでしょうけれども、皆さんの声援があったので、勝つことができました。『本当にありがとうございました』と伝えたいです」(澤・日テレ)

 日テレのスタッフは、規定で認められていないスパッツの着用を認めさせ、スパッツ、そしてスパイクのポイントを入手するために走り回った。ファンも、凍りついたスタンドで「中地(舞)が半袖なら、俺たちだって半袖だ」と、見ているこちらが寒くなりそうな姿のまま、90分間、声を出し続けた。

 もちろん、相手のゴールネットが3度も揺れたのは、こんなことが原因ではない。スタッフやファンのサポートに応えようとした選手たちが、雪上で普段以上のパフォーマンスを見せたから、である。


(日テレ・ベレーザ) (TASAKIペルーレFC)
GK: 小野寺志保 GK: 大西めぐみ
DF: 中地舞、四方菜穂、須藤亜紀子、豊田奈夕葉 DF: 磯崎浩美、白鳥綾、佐野弘子
MF: 酒井與恵(65分/小林弥生)、近賀ゆかり、伊藤香菜子(79分/井関夏子)、澤穂希 MF: 土橋優貴(53分/中岡麻衣子)、新甫まどか(69分/岩田久美)、柳田美幸、甲斐潤子、山本絵美(53分/大石沙弥香)
FW: 荒川恵理子(75分/永里優季)、大野忍 FW: 大谷未央、鈴木智子
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