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 webnews 05/12/04 (日) <前へ次へindexへ>
最終戦のキックオフを待つ、西京極のスタジアム。
"To be continued." 甲府の冒険は、まだまだ続く。
2005Jリーグ ディビジョン2 第44節 京都パープルサンガvs.ヴァンフォーレ甲府

2005年12月3日(土)14:05キックオフ 京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場 観衆:8,803人 天候:晴
試合結果/京都パープルサンガ1−2ヴァンフォーレ甲府(前1−1、後1−0)
得点経過/[京都]田原(9分)、[甲府]長谷川(40分)、アライール(80分)


取材・文/西森彰


 2001年11月18日(日)、J2最終節を前にした西京極のスタジアムには、きれいな虹がかかっていた。そして、その虹の橋を渡って、ベガルタ仙台はJ1へと昇っていった。

 あれから4年。逃げる立場となった仙台を追いかける、ヴァンフォーレ甲府のファンの頭上に、あの日と同じようにきれいな虹が姿を見せた。今年、J1への架け橋を渡る切符は、甲府にもたらされるのか、仙台か、それとも…。

 西京極のスタンドから、虹を眺めながら、そんなことを思った。



勝利の美茶。
 3位・仙台との勝ち点差は、僅かに1。だが、前節喫した大敗で、ゴールディファレンスで大きく差をつけられた甲府は、自らが勝利し、福岡で戦う仙台が引き分け以下の結果になる以外、昇格の目がない。今シーズン、ここまで3戦3敗の相手に、1試合平均約2点を誇る、攻撃陣の奮起が期待される。

 対戦相手の京都パープルサンガは、既にJ2優勝も、昇格も決めているが、このゲームがホーム最終戦。大活躍した、アレモン、パウリーニョの2トップこそ、登録されていないが、1シーズン支えてくれたファンに、無様な試合を、見せるわけにはいかない。

 14時5分、J1、J2の15会場を通じて、一番、遅いキックオフ。

 まず、攻勢に出たのは甲府。中盤が逆三角形を作る4−3−3。攻撃的なスタイルは、勝利が絶対条件のチームにふさわしいシステムだ。7分には、相手ゴール前の混戦から、3度に渡ってシュートを浴びせたが、京都GK・西村弘司のセーブに、防がれる。

 京都はボックス型の4−4−2。この日は、右サイドハーフに位置する加藤大志を、積極的に走らせてきた。そして9分、加藤の右CKから、田原豊が、身体能力を生かした、高い打点のヘディングシュート。しっかりと額で捉えられたボールは、きれいな放物線を描いた。京都が先制する。

 目の前で失点を突きつけられた、甲府のファン。その視点で見れば、決定的なチャンスを逸した後の失点という、最悪の試合展開だった。だが、後から振り返れば、これはひとつのプロローグにすぎなかったのである。



 リードした京都には、ふたつの選択肢があった。先制ゴールの勢いを生かして、殴り合いにつきあうか。甲府の言い分を聴いて、ひとまず下がるか。ホームチームは後者を選択した。

 忠実にボールホルダーの前に立って、シュート、パスのコースを狭める紫のユニフォーム。ワイドに開く前線の3人は4バックが対応し、藤田健、倉貫一毅は中盤の選手がしっかりと捕まえる。これまで、どちらかといえば、アバウトなゲームを作ってきた京都。J1昇格後の戦いへ向けてのモードチェンジかもしれない。

 昇格には同点ゴール、そして逆転ゴールの2点が必要になった甲府は、当然のように前へ出る。早い時間帯の失点で、攻撃サッカーのスタイルを貫くしかなくなった。ディフェンスを奈須伸也とDFに任せ、前の5人はバレーをポイントにして、京都陣内でボールをつなぐ。厚い守りに苦しみ、セットプレー以外にチャンスが見出せない。しかし、集中力を切らすことなく、辛抱強く戦い、相手の綻びを探る。



アライールの逆転弾。もう、お祭り騒ぎ。
 40分、京都は加藤がまたもや左サイドを破り、クロスを上げる。田原の高さを警戒したGK・阿部謙作がハイボールの目測を誤り、飛び出したうえに触れない。京都の選手も触れず、ファーサイドにボールは流れたが、甲府の守備陣形は崩れていた。ここで京都が2次攻撃を作り直せば、決定機が生まれていたはずだ。

 だが、リスク回避のゲームコントロールがイメージされていたのか、京都はここからボールを後ろに戻す。次々にボールが下がり、とうとうDFラインへ。そして、リカルドが大久保裕樹へ預けようとした瞬間、甲府の長谷川太郎が、そのボールを攫った。独走状態に入った長谷川は、GKの足元を抜くシュートを、京都ゴールに流し込む。

 極めて幸運なこの得点によって、甲府は1対1で折り返すことができた。気になる福岡・博多の森球技場のゲームは、アビスパ福岡が仙台にゴールを許さず、0対0の状態が維持されている。甲府のファンに、一筋の光明が見えてきた。



 守勢が続く京都は、50分にトップの松田正俊を美尾敦に代えて、それまでのツインタワーを、縦の関係に変える。これで、やや体勢を持ち直した京都。66分にはDFラインからのフィードを、田原がポストになって落とし、それを美尾が拾って侵入という狙い通りの形で、あわやPKのシーンも作った。

 甲府もリスクは承知のうえで、勝ち越しを目指す。再三に渡り、石原克哉とバレーがシュートを放ち、長谷川も2点目を狙う。そして80分、左サイド深くで得たFKのチャンス。藤田の蹴ったボールは、それまで前線に顔を出していなかったDF陣のひとり、アライールの頭にピタリとあった。逆転。ブルー&レッドのレプリカユニフォームが、アウェー側のスタンドで、モゴモゴと蠢く。

 この瞬間、甲府の選手たちの脳裏に、入れ替え戦がちらつき始めたことは、想像に難くない。その一方で、京都の選手たちはようやく目を覚ました。ここから、両チームは、攻守所を替えた。



マフラーを振り回す、ゴール裏の人口も増えてきた。
さあ、これで入替戦だ。
 京都は、ペナルティエリア内へ次々にボールを入れて、混戦を生み出す。京都のパワープレーに、体を張って守る甲府のイレブン。「頑張れ!」「まだ終わっていないんだぞ!」。スタンドの甲府ファンが、悲鳴にも似た声援を送る。彼らもまた、刻一刻と変化している、博多の森の状況など知らぬかのように、ひたすら選手を鼓舞する。その声援が、時計の針をゆっくりと、しかし着実に進めていく。

 そして迎えたロスタイム。甲府のペナルティエリア付近で、途中出場の京都FW・小原昇を、甲府のDF・杉山新が倒してしまう。PKか、否か。辺見康裕主審は、副審に確認をとったうえで、ペナルティエリアすぐ外でのFKと、杉山新の一発退場というジャッジを下す。両チームの激しい抗議で生まれた約3分の中断を経て、鈴木悟が蹴ったFKは、ポストが弾き返した。

 数プレー後、西京極のピッチに試合終了の笛が響き渡る。ホイッスルとともに大きくガッツポーズした甲府のファン。おそらく、仙台のドローを確認したのだろう。数秒後、アウェーゴール裏から、タイムアップ時に数倍する歓声があがった。



 まだ、何も成し遂げてはいない。確かにJ1経験クラブを競り落とし、入れ替え戦に進出した。しかし、そのままJ1昇格が約束されたわけではないのだ。ここで満足してはいけない。この勝利も途中経過でしかないのだ。残り180分プラスアルファの時間を戦って、なお勝者の座にいた時、初めて喜べ…。本来なら、甲府には、そんな檄を飛ばすべきなのだろう。

 しかし、人目もはばからずに泣き崩れているファンの姿を見ていると、そんなことはどうでも良くなってきた。25連敗とか、存続運動とか、幾多の苦難を潜り抜けて、ようやくここまで辿り着いたのだから。


(京都パープルサンガ)
GK: 西村弘司
DF: 大久保裕樹、リカルド、鈴木悟、鈴木和裕
MF: 米田兼一郎、斉藤大介、加藤大志、中払大介(76分/小原昇)
FW: 田原豊、松田正俊(50分/美尾敦)

(ヴァンフォーレ甲府)
GK: 阿部謙作
DF: 杉山新(89分/退場)、アライール、秋本倫孝、山本英臣
MF: 奈須伸也、藤田健、倉貫一毅
FW: 石原克哉(71分/須藤大輔)、バレー、長谷川太郎(89分/青葉幸洋)
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