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 webnews 05/12/31 (土) <前へ次へindexへ>
粘る大宮を振り切り、浦和、25年ぶりのファイナル進出。
第85回天皇杯全日本サッカー選手権準決勝 浦和レッズvs.大宮アルディージャ

2005年12月29日(木)15:04キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:31,441人 天候:晴
試合結果/大宮アルディージャ−浦和レッズ(前1−1、後1−1、延前0−2、延後0−0)
得点経過/[浦和]マリッチ(23分)、[大宮]片岡(26分)、[浦和]長谷部(62分、102分)、[大宮]冨田(89分)、[浦和]山田(95分)


取材・文/西森彰

 この天皇杯では、決まって上位に勝ち残ってくる清水エスパルス、セレッソ大阪。そして選手、スタッフ、ファンの総力を結集して、どんなタイトルにも全力を尽くす浦和レッドダイヤモンズ。いずれも、シーズン最後のタイトルを象徴するかのような顔ぶれである。

 その中でひときわ異彩を放っているのが、大宮アルディージャ。J1残留争いという暗く長いトンネルを抜けると、初めてのタイトルへ向けて登頂を開始。準々決勝では常連の鹿島アントラーズを降し、準決勝進出。大方が予想していたレッドダービーから、さいたまダービーに模様替えして見せた。準々決勝までの累積警告で、中心選手のひとり、藤本主税が出場停止。大宮の三浦俊也監督も「今日のゲームだけを考えれば、本当に少ない勝機をどこに求めるかという試合」と苦戦は覚悟の上だった。

 だが優勢と見られる方が、往々にしてそれをプレッシャーにしてしまうもの。これまでも多くのファンから優勝を望まれてきた浦和だが、Jリーグ創設後準決勝では4戦4敗。前身の三菱時代を通じても24年間もの長きに渡り、決勝戦から遠ざかっている。嫌なジンクスも感じていたろうし、ダービーマッチ。ギド・ブッフバルト監督も「簡単な試合ではない」と予想していた。



 大宮の三浦監督が重視していたのは先制点の行方。「ウチはリーグ戦でも先制点をとって負けた試合はない」というとおり、11試合で8勝3分け。いっぽうの浦和も15勝1分け。データからも、先制点が決勝点とも言うべきものになっている。

 キックオフから始まった浦和の攻勢を支えきって、さあこれからという前半12分、大宮は桜井直人を負傷退場で失う。「若林と森田だと高さ、ポストプレーで勝負をしなくてはいけない。速攻などでは得点のチャンスが生まれない」(三浦監督・大宮)。大宮の攻撃パターンが絞られた。さらに、浦和のトミスラフ・マリッチが、テクニカルな体の入れ方からのヘディングシュートで、天王山とも言える先制点を奪う。浦和にとっては最高の、大宮にとっては最悪の流れ。しかし、ここからゲームはもつれた。

 鈴木啓太のイエローカードとともに、大宮に与えられた正面やや左のフリーキック。ひとり、フェイクを入れた上に、2人目の久永辰徳も後方にチョンとボールを動かしただけ。3人目に控えていた片岡洋介が思い切りこれを叩くと、赤い壁の一番右側で競ったオレンジのユニフォームがしゃがみ、ゴール右隅へ飛び込むボールの露払いをした。完璧なサインプレー。浦和の先制点が生まれた僅か3分後、大宮が同点に追いついた。

「ウチが優勢だと言われていたので、選手が逆にナーバスになったところがあった」と振り返ったブッフバルト監督。その後も5分毎に、流れを奪い合うようなゲーム展開。両チームの得点者、マリッチと片岡が競り合いの中で頭をぶつけて運び出されるなど、激しいプレーも見られる。浦和・堀之内聖のヘディングシュートがロスタイムにゴールバーを叩くもゴールならず。前半はタイスコアで終了した。



浦和、元日の舞台へ。
 後半も浦和が主導権を握りながら、大宮が耐える。そしてようやく大宮にイニシアチブが移りかけた62分、浦和のカウンターが炸裂。左サイドを駆け上がった三都主アレサンドロのクロスは、中央に飛び込んだマリッチとマーカーの頭を越えて、ファーサイドでフリーの長谷部誠の元へ向かう。これで浦和が再びリード。直前の接触プレーで足を痛がる仕草を見せていた長谷部だったが、長距離を良く走り切った。

 三浦監督は早めの選手交代に活路を求める。65分に金澤慎、71分に島田裕介を投入。早い時間帯にカードを使い切って、反撃への気迫を見せた。選手たちもその気持ちが乗り移ったように戦う。無表情に進む、時計の針との競争になった。

 そして89分、ペナルティエリアの遥かに前まで出ていたGKの荒谷弘樹が、前線にハイボールを送ったところからドラマが始まる。森田浩史がこれを頭でつないだ瞬間、飛び出した浦和GK都築龍太がこれと交錯する。主を失ったゴールめがけて、こぼれ球を押し込む冨田大介。それまでと同じサポートソングを歌い続け、務めて平静を保とうとする浦和ファンの対面では、大宮のファンが土壇場の同点劇に喜びを爆発させていた。

 後半終了の笛に大きく2回手を叩いて、選手を出迎えた三浦監督。そして腕組みをしたまま、ゆっくりとタッチラインに向かったブッフバルト監督。頼れるロブソン・ポンテを代えて、守備固めに動いた上での逃げ切り失敗。メンタル的にも浦和が不利だったが、選手たちはこの部分の成長を見せる。

 約10分間の休憩を挟んで再びピッチに散った浦和の選手たちは、3度目の正直を目指して、大宮のゴールに迫る。最後に試合を決したのは長谷部誠。中盤でのパスカットから長いドリブルに入り、ゴール前まで持ち込むと、相手DFを引きつけて、キャプテン・山田暢久の決勝ゴールをアシスト。さらに102分にはハーフウェーラインからピッチにスラロームを描き、DF、GKを交わして駄目押しの4点目をゲット。驚異的な粘りを見せた大宮に引導を渡した。



 敗れた大宮の三浦監督はマイボールを失ってからのカウンターで喫した3失点を悔いた。確かにボールを奪ってからの安定性という部分で、浦和との差は感じた。しかし、不利な状況下で2度追いついた闘志は、高く評価されて良い。「決して悪くなかった」2005シーズンを振り返り、来期にどうつなげるか。三浦監督と選手たちに期待したい。

 勝った浦和は、薄氷を踏む決勝進出だった。パワープレーに苦しんだ最終ラインに一抹の不安を残すものの、オフェンス面では豊富なタレントを抱えている。この日は決定的な仕事を繰り返した長谷部、そして左サイドから危険な動きを再三見せていた三都主の活躍が目立った。浦和が現在の充実度にモノを言わせて、清水の経験を凌駕できるか。元日決戦はそこに注目だ。


三浦俊也監督(大宮アルディージャ)記者会見
ギド・ブッフバルト監督(浦和レッズ)記者会見


(大宮アルディージャ) (浦和レッズ)
GK: 荒谷弘樹 GK: 都築龍太
DF: 西村卓朗、片岡洋介、奥野誠一郎、冨田大介 DF: 細貝萌、堀之内聖、坪井慶介
MF: 斉藤雅人、ディビッドソン純マーカス(65分/金澤慎)、久永辰徳、横山聡(71分/島田祐介) MF: 岡野雅行(77分/永井雄一郎)、鈴木啓太、長谷部誠、三都主アレサンドロ、山田暢久(104分/赤星貴文)
FW: 桜井直人(12分/若林学)、森田浩史 FW: ロブソン・ポンテ(87分/酒井友之)、トミスラフ・マリッチ
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