topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 Go for Athens 04/04/19(月) <前へ次へindexへ>
サポーターのありったけの思いを乗せたコールで戦いは幕を開けた。
全てをかけた戦い。日本女子代表がアテネへ向けて好発進。
アテネ五輪女子サッカー・アジア予選 第1戦 日本女子代表vs.ベトナム女子代表

2004年4月18日(日)12:15キックオフ 駒沢陸上競技場 観衆:6513人 天候:晴
試合結果/日本女子代表7−0ベトナム女子代表(前3−0、後4−0)
得点経過/[日本]宮本(3分)、大谷(7分)、宮本(41分)、大谷(59分)、丸山(60分)、山本(85分)、沢(90分)


取材・文/中倉一志

「さあ、行くぞ!ニッポン!ニッポン!ニッポン!」

 バックスタンドホーム側に集まったサポーターのコールで、日本女子サッカー最大の戦いが始まった。ジャパンブルーのレプリカユニフォームを身にまとい、自主制作したタオルマフラーを片手に発する声が、静かな住宅街に位置する駒沢陸上競技場に響き渡る。その声を浴びながらピッチの上でアップを行う女子代表選手たち。6,513人の観衆の応援を力に変えて自分たちの中に蓄積していくかのようだ。

 この日の先発に名を連ねたのは戦前の予想通り。ゴールマウスを守るのは不動の守護神、山郷のぞみ(さいたまレイナスFC)。最終ラインは右から川上直子(TASAKIペルーレFC)、磯崎浩美(TASAKIペルーレFC)、下小鶴綾(スペランツァFC高槻)、柳田美幸(TASAKIペルーレFC)の4人。中盤では酒井與惠(日テレ・ベレーザ)と宮本ともみ(伊賀FCくノ一)がダブルボランチを組み、山本絵美(TASAKIペルーレFC)が左の高い位置に、澤穂希(日テレ・ベレーザ)がトップ下に構える。そして2トップを務めるのは大谷未央(TASAKIペルーレFC)と荒川恵理子(日テレ・ベレーザ)の2人だ。

 選手の表情に緊張感はない。あるのは全てをかけて準備してきた自信と、女子サッカーを変えようという気概、そして大勢の観衆とともに戦う充実感だ。格下といわれるベトナムとの戦いも決して消化試合ではない。打倒・北朝鮮のための貴重な実践テストの場だ。誰もが感触を確かめるようにボールを扱い、ピッチを踏みしめる。そして12:15、上田ジャパンの全てをかけた戦いの開始を告げるホイッスルが鳴り響いた。



選手とともに戦ったサポーター。代表に大きな力を与えた。
 日本の先制点は3分、左からのCKが大谷を経由してゴール前中央へ。そこへ上がってきていた宮本が左足を振り抜いた。両手を空に突き上げて満面の笑みを浮かべる宮本。スタンドからも大歓声が湧き上がる。その4分後、今度は大谷が続く。ゴール前でワントラップすると回り込むようにして右足を一閃。ゴールネットが大きく揺れた。その後も一方的にベトナム陣内へ攻め込む日本。ベトナムは最終ラインを5人で固め、守るだけで精一杯だ。

 しかし、ここから日本はゴールを奪えない展開が続く。川上の積極果敢なオーバーラップから何度もクロスボールが入るのだが、微妙に中央に詰める選手とタイミングが合わない。左ハーフの山本選手は自重気味なプレーで、どちらかといえば攻撃参加を控えている様子。これは北朝鮮のスカウティングを意識してのことだろう。また、21分、27分には決まったと思われたシュートを、ベトナムのGKド・チ・ツ・チャンがスーパーセーブを見せてゴールマウスの外へはじき出した。

 それでも日本のリズムが悪くなることはない。11人がサボらずに高い位置からボールを追い込み、相手のプレーエリアを限定してボールを奪っては、切り替えの早い攻撃を繰り返す。ゴールを奪うことも大事。しかし、今は積み重ねてきたことをきちんと実践することこそが最も大切なことだ。そして41分、日本に3点目が生まれる。右からのCKの場面、ペナルティエリア内でルーズになったボールを宮本が頭で合わせる。大きな弧を描いたボールは、GKド・チ・ツ・チャンが精一杯伸ばした手の上を通過してゴールマウスに吸い込まれた。



ベトナムサポーター。彼らも90分間、戦い続けた。
 後半に入ると日本は酒井に代えて小林弥生(日テレ・ベレーザ)を、荒川に代えて丸山佳里奈(日体大)を投入する。そして小林が日本の4点目を演出した。時間は59分、やや高めの位置で攻撃に絡む小林は、柳田からのパスを受けて左サイドをドリブルで突破。GKとDFの間に絶妙のクロスを入れる。バン・チ・タンともつれるようにしてゴール前に飛び込む大谷。飛び出してくるGK。しかし、大谷は一瞬早くボールに触れ、ボールをゴールマウスに流し込んだ。

 そして丸山が続く。60分、大谷からのパスを受けると一気に加速。自分を囲んでいた3人のDFをあっという間に置き去りにして右足を一閃。男勝りの豪快なシュートをゴールマウス右上に突き刺した。さらに85分、今度は山本が続く。この日は、どちらかというと意識的に消えていた山本だったが、交代出場で右サイドに入った山岸からの大きなサイドチェンジを受けてフリーに。貯めていたものの全てをぶつけるように右足を振り抜いた。

 日本代表の締めくくりは、やはりこの人、沢穂希。15歳の時に日本代表に選出されて以来、10年間にわたって日本代表を支えてきた押しも押されぬエースだ。そんな沢も、この日は点を取るという強い気持ちが裏目に出て、ことごとくシュートを外していた。90分、そんな沢に宮本からパスが出る。GKと1対1になる沢。飛び出してきたGKの動きを見極めてループシュートを放つ。緩やかな放物線を描いたボールは、ゆっくりとゴールマウスに吸い込まれた。




開場を待つ長い列。国立競技場にもみんなで駆けつけよう。
 7−0の完勝。日本は幸先の良いスタートを切った。クロスボールが合わなかったり、中盤でのパスミスがあったりと、修正を要する点も見られたが、それは初戦ゆえのもの。選手たちは、きちんと修正してくれるはずだ。それよりも、北朝鮮対策用の戦い方を試しながら、なおかつ、格下のベトナム相手に力の差を見せ付けて勝利するという難しい課題を易々とやってのけた選手たちに、たくましさを感じたのは私だけではないだろう。

 ところで、日本の北朝鮮対策については、ここでは触れずにおこう。まさか、このサイトに北朝鮮サッカー関係者がアクセスしているとは思えないが、彼女たちが大事に積み重ねてきた戦い方を、わざわざ公表する必要を感じないからだ。右サイドが空いている変則的なスタイル。ボランチの右にいる酒井。宮本のバランスの取り方。そして静かにしていた山本。このあたりに日本の狙いが見え隠れするが、それが形になったとき、日本はアテネへの切符を手にすることが出来る。

 勝負は24日の準決勝。彼女たちが全てをかけて積み重ねてきたものの結果が出る。決して楽な戦いではない。むしろ厳しい戦いになることが予想されている。それでも、自分たちのサッカーにかける思いの全てを、そして、日本女子サッカー界の未来をかけて、彼女たちはアテネへの切符を取りにいく。そんな彼女たちに私たちが力を貸すことが出来るとしたら、それはスタジアムに駆けつけることしかない。22日、そして24日の国立競技場が大観衆で埋まることを信じたい。


(日本女子代表) (ベトナム女子代表)
GK: 1山郷のぞみ GK: 1ド・チ・ツ・チャン
DF: 3磯崎浩美 5川上直子(81分/15山岸靖代) 13下小鶴綾 18柳田美幸 DF: 2ブイ・チ・トエット 16チャン・チ・ビック・ハアン 17ブ・チ・タン(80分/12グエン・チ・フォン) 19ダオ・チ・ミエン 22レ・チ・ブイ
MF: 6酒井與惠(45分/16小林弥生) 7山本絵美 8宮本ともみ 10沢穂希 MF: 5グエン・チ・マイ・ラン 7フーン・チ・ミン・グェット(68分/6ド・ホン・チェン) 14ドアン・チ・キム・チ 21バン・チ・タン
FW: 9荒川恵理子(45分/19丸山桂里奈) 11大谷未央 FW: 8ルー・ゴック・マイ
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送