topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 Go for Athens 04/04/24(土) <前へ次へindexへ>
腹を括った上田采配。日本、手の内を見せずに、最終決戦へ。
アテネ五輪女子サッカー・アジア予選 第2戦 日本女子代表vs.タイ女子代表

2004年4月22日(木)19:00キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆:5086人 天候:晴
試合結果/日本女子代表6−0タイ女子代表(前2−0、後4−0)
得点経過/[日本]丸山(11分)、安藤(32分)、丸山(47分)、小林(51分)、大谷(72分)、山本(89分)


取材・文 西森彰

 2日前に私が書いた予想メンバーとは大きく異なるイレブンだった。当てはめ方は別にして使うのではないかと思った山郷のぞみ(さいたまレイナス)、磯崎浩美(TASAKIペルーレFC)、宮本ともみ(伊賀FCくノ一)、澤穂希(日テレ・ベレーザ)、大谷未央(TASAKIペルーレFC)というセンターラインは全てベンチに退き、初戦で出場しなかった選手たちが次々と名前を読み上げられる。

 この日のスターティング・メンバー11人が読み上げられた時点で、登録選手20人全員が今大会のピッチを踏むことになった。私が主軸組の起用を考えたのは次のような理由による。まずは、あまりにも内容が乏しかったベトナム戦を踏まえ、主軸メンバーを起用してコンビネーションの確認をしておく必要はないか。そして、サブメンバーとの相性をもう一度確認しておく必要はないか。中一日というリスクこそあるが…。



 しかし、上田栄治・日本女子代表監督はセオリーどおり、ターンオーバーを徹底してきた。福島合宿当時から語っていたとおり、20人全員での総力戦を選んだのだ。「初戦は相手のレベルと自分たちのやりたいことが噛み合わなかっただけ。チームは完成している。だからコンディションだけを重視する」。2日後に向けて上田監督の自信が漲る先発メンバーだった。

 GKは小野寺志保(日テレ・ベレーザ)。最終ラインは山岸靖代(伊賀FCくノ一)、大部由美(YKKフラッパーズ)、下小鶴綾(スペランツァ高槻)、宮崎有香(伊賀FCくノ一)。初戦に出場していた山岸、下小鶴の起用で、ラインの呼吸を合わせておく。4枚総取替えをしなかったことで、次へのシミュレーションにもなる。

 中盤は、ボランチの右に小林弥生(日テレ・ベレーザ)、左に矢野喬子(神奈川大学)、左サイドに安藤梢(さいたまレイナス)が入り、トップ下には初戦で左SBを務めた柳田美幸(TASAKIペルーレFC)が入る。そして高校生ストライカーの永里優季(日テレ・ベレーザ)と、初戦でゴールを奪った丸山桂里奈(日本体育大学)だ。



 前半はベトナム戦にも増してぎこちなさが見られた。神奈川大学ではセンターハーフを務める矢野だが、A代表では恐らく初めてのボランチ起用。コンビを組む小林が縦横無尽に動き回るため、1枚でワイパー役を割り当てられた。ケガ上がりでおっかなびっくりのプレー、そしてカバーリングの遅れは試合勘不足を感じさせた。このゾーンでバランスを崩したことが、リズムに乗れなかった最大の原因だろう。

 攻撃面でも、先発起用の永里が固さからつまらないミスを繰り返し、安藤も2列目から抜け出す得意のプレーがそれほど見られない。攻め上がりを自重する両サイドバック。丸山の気持ちで捻じ込んだボテボテのゴールと、フリーの安藤が奪った追加点。日本は悪い流れの中でも2点のリードを手に入れて前半を折り返した。

 前の試合からあわせて135分間を戦った下小鶴と柳田がここでお役御免となり、後半からは酒井與惠(日テレ・ベレーザ)と山本絵美(TASAKIペルーレFC)がピッチに入る。宮崎が本来のセンターバックに入り、宮崎の抜けた左サイドバックに矢野が下がる。そしてボランチにはチームで小林とコンビを組む酒井。

 チームでこれまでやってきたポジションに戻すことで、攻守のバランスを急激に回復した日本は、試合内容が良化。タイの疲れもあり、一方的に攻め立て、丸山、小林、大谷、山本と4ゴールを重ねた。トータルスコア6対0。ベトナムに続いて、タイを大差で退け、グループC1位を勝ち取った。ケガ人を増やすことなく、出場停止の選手も出さず、最低条件をクリアしてのグループリーグ突破だった。

 サッカーが噛み合わなかったのか。それとも、手の内を隠したのか。いずれにしろ、日本はほとんど本領発揮することなく、グループリーグの2戦を終えた。この2試合を見ているだけではクエスチョンマークがつくような内容だから、北朝鮮のスカウティング部隊もどう報告して良いのかわからないだろう。その迷いを消しきれないまま、日本との対戦を迎えてくれれば好都合だ。



「ここまでの道程で、思い通りの強化はできましたか? 後悔とか、やり残したことはありませんか?」。静岡合宿で報道陣の質問に上田監督はきっぱりと答えた。

「いえ、そんなことはありません。上手く行かなかったこともあるし、失敗したこともあったし、敗戦もあったし。アジアカップで韓国に負けて、ワールドカップの出場権がメキシコとのプレーオフまでいかなければとれなかった。逆にそれが良かったこともある。決して順調に来たわけじゃありませんね」

 山を越え、谷を越え、転んで、回り道をした。でもオリンピックへ通じる最後の扉に辿り着いたその時、このチームは様々なアイテムを手にしていた。それはメディアへの露出であり、協会の支援であり、多くのファンから贈られる声援だ。そして、彼女たち自身がこれまで積み重ねてきたひとつひとつを出し切りさえすれば、結果は必ずついてくる。

 勝てばアテネオリンピック出場が決まる明日の準決勝のために、北朝鮮側には6,000枚のチケットが手配された。少なくはない。だが、その6,000人分の席を除いても、国立霞ヶ丘陸上競技場には約50,000人分の席が残っているはずだ。ぜひ、選手たちに「ホームゲーム」をプレゼントしてやってほしい。

 日本女子代表史上最高のサポートを受けたこのチームなら、絶対に北朝鮮に勝てる。もう「挑戦」する時代は終わった。明日からは「対戦」だ。仰ぎ見て戦う相手でも、決して勝てない相手でもない。それを確認するために、そして日本女子代表がアテネへの切符を勝ち取る瞬間を見るために。さあ、国立へ行こう!

(日本女子代表) (タイ女子代表)
GK: 小野寺志保 GK: グスマーン(ノーンクラン)
DF: 大部由美 下小鶴綾(酒井與惠) 宮崎有香 山岸靖代 DF: プラニー スジットラー スパポーン
MF: 矢野喬子 小林弥生 安藤梢 柳田美幸(山本絵美) MF: アヌットサラー チュティマー スニサー(ジャンペン) サランヤー ハタイラット
FW: 丸山桂里奈(大谷未央) 永里優季 FW: チャウワニー(ポンティップ) ギライヤー
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送