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 第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
天敵・FC東京に逆転勝ち。浦和が準決勝へと駒を進める
第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝 浦和レッズvs.FC東京

2004年12月19日(日)13:02キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:33.480人 天候:晴
試合結果/浦和レッズ2−1FC東京(前0−0、後2−1)
試合経過/[FC東京]石川(61分)[浦和]田中(64分)三都主(85分)


取材・文/砂畑 恵

「我々のペースで闘えている」(ブッフバルト監督・浦和)
「前半0−0はうちのペース」(原監督・FC東京)

 ハーフタイムの談話に奇しくも双方の監督は同じような言葉を残した。浦和は、この日は全く経験のないダイヤモンド型の中盤に4バックという布陣。一昨日に思いついたという急な変更だったが、選手たちは長短を折り交ぜたワンタッチパスで相手を翻弄し、中盤からどんどんゴール前に飛び出した。殊に果敢にゴールを目指す三都主が目立つ。最後尾から平川もアルパイもサイドを積極的に駆け上がった。

 守備面でも25分に阿部にシュートを打たれた場面以外は、FC東京にほとんどチャンスを作らせなかった。DFは相手のクロスに競り勝ち、ワンボランチの鈴木もDFをしっかりバックアップ。よくセカンドボール拾えている。ゲーム内容を考えれば先のコメントも納得だ。

 だが、浦和対FC東京のゲームという見方をすれば、前半0−0で折り返すことは必ずしも浦和ペースとは言えない向きがあるのも事実。FC東京・原監督の「ウチのペース」というコメントも過去の対戦を考えれば当然だろう。むしろ着々と「浦和の堀」を埋めたとも言えた。

 前半は浦和を切り崩せはしなかったが、石川のドリブル突破を武器に虎視眈眈と仕掛けるカウンターは鋭い。また茂庭に金沢のレギュラー2人を欠き、不安視されていたバック陣も安定している。ジャーンを中心にまとまりを見せ、お互いのカバーを堅実に行なった。まさに難攻不落の守備をベースにワンチャンスをモノにするFC東京の力は健在だ。



 そんなFC東京が先制する。その立て役者は6月半ばから怪我で戦列を離れ、出場機会を失っていた浅利。投入直後の61分、浅利を中心に長谷部を囲い込んでボール奪取。そのボールを浅利が一挙に左に展開した。アルパイのマークを外した阿部が素早く石川にパスを繋げる。フリーの石川は狙い澄ましてシュート。FC東京が理想通りの形で先制点を挙げた。「誰が出てもやれるというのがうちの今のチーム良さ」(FC東京・原監督)という監督からの信頼に応えた浅利のプレーがチームを活気付けた。

 この先制点で、いつもならFC東京が逃げ切りという図式を頭に浮かぶのだが、今日の浦和は一味違った。その3分後、鈴木のサイドチェンジから右サイドを破った永井がゴール前にマイナスのパス。長谷部がスルーし、その背後にいた田中がシュートし同点に追い付いた。

 実はこのゴールに至る展開に浦和の狙うポイントがあった。後半、永井は右に張り出すポジションを取っている。これは「両サイドを突いていこう」(浦和・ブッフバルト監督)という指示を受け、永井が自ら判断したことだった。鈴木も「相手の左サイドの連携が、ボールに対しチャレンジするのか、フォローに行くのか曖昧だった」と後述している。つまり鈴木、永井の狙い所のイメージが一致し、呼び込まれた得点だった。



 こうなると埼スタという会場の雰囲気も手伝って浦和が押せ押せムード。FC東京は浦和の勢いに押し込まれていく。しかし70分、原監督が切り札ケリーを投入するとFC東京は再び流れを引き戻した。ケリーが前線にタメを作ることで阿部や石川が思い切った上がりを見せられるようになったからだ。75分を過ぎると戦況はがらりと変わってFC東京のリズムに。そして83分、ケリーのパスから石川が縦を突破し、平川をかわすと低いクロスを送る。相手DFを背負いながら阿部がポストとなり、走り込んだケリーのシュート。だがクロスバーの鈍い金属音が響いた。

 その2分後、命拾いした浦和にビックチャンスが訪れた。山岸のゴールキックをまたも右タッチライン際にいた永井が足の裏側で前にいた長谷部にフィード。その長谷部を追い越すようにトップスピード駆け上った永井にリターンパスが渡る。ゴールラインの寸前で緩やかに上げられたボールは、GK土肥の頭上を越えて三都主へ。左足のインサイドで丁寧にインパクトしたボールがネットを揺らした。その後、FC東京は近藤、ジャーンを前線に置いてパワープレーを試みるも、浦和は堅守を保持。今年、様々に煮え湯を飲まされFC東京にリベンジを果たした。



 切り札ケリーの投入で流れを引き寄せることに成功したFC東京にとって、ケリーのシュートがクロスバーを直撃したシーンは悔やんでも悔やみきれないことだろう。しかし、浦和のボランチの前に出来るスペースを、もう少し上手く使えていれば別の展開もあったのではないか。「来シーズンはもっともっとレベルの高いチームにしていきたい」とは原監督。ナビスコ杯を獲得してレベルアップしたチームが更なる向上を果たすためには、武器であるカウンター攻撃に加え、中盤の構成力を上げることの必要性が感じられた試合だった。

 勝った浦和は、天皇杯タイトルに一歩近づいたことに加え、新たにチャレンジした布陣がフィットする感触を手にした。また、オフト時代の「言われたことを忠実に再現するチーム」から、「選手自身で発想して切り開くチーム」への変貌を遂げつつあるという印象を持った試合でもあった。準決勝の相手はジュビロ磐田。志向するサッカーという点では先輩格である磐田を破り、元日決戦に弾みを付けたいところだ。


原博実監督(FC東京)記者会見
ブッフバルト監督(浦和レッズ)記者会見


(浦和レッズ) (FC東京)
GK: 山岸範宏 GK: 土肥洋一
DF: アルパイ 堀之内聖 ネネ DF: 加地亮 ジャーン 前田和也(87分/近藤祐介) 藤山竜仁
MF: 山田暢久 鈴木啓太 平川忠亮 三都主アレサンドロ 長谷部誠 MF: 今野泰幸 宮沢正史(60分/浅利悟) 石川直宏 阿部吉朗
FW: 田中達也(89分/内舘秀樹) 永井雄一郎 FW: 馬場憂太(70分/ケリー) ルーカス
SUB: 都築龍太 坪井慶介 酒井友之 岡野雅行 SUB: 塩田仁史 増嶋竜也
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