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 第85回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <次へindexへ>
「熊本からJリーグへ」。地元の夢を乗せて活動を続けるロッソ熊本
JFLの貫禄。三菱水島が120分間の消耗戦を制して2回戦へ
第85回天皇杯全日本サッカー選手権大会 1回戦 ロッソ熊本vs.三菱水島FC

2005年9月17日(土)12:00キックオフ 熊本市水前寺競技場 観衆:1120人 天候:晴
試合結果/ロッソ熊本1−2三菱水島FC(前1−0、後0−1、延前0−0、延後0−1)
得点経過/[三菱水島]山下(24分)、[熊本]朝比奈(89分)、[三菱水島]高松(115分)


取材・文/中倉一志

 大会開催方法の変更により、昨年から9月に始まることになった天皇杯。2ヶ月半も早くなった開催は、寒風の中でベンチコートに身を包んで声援を送るという天皇杯観戦スタイルを変えた。この日の水前寺競技場の気温は32度。運営スタッフはウインドブレーカーの代わりに半そでのTシャツを身につけ、スタンドの風景も、まるで夏の大会のようだ。じっとしているだけでも汗が流れるコンディションは、選手たちにとっても厳しいものだ。

 この日、水前寺競技場に姿を見せたのは、「熊本からJリーグへ」の合言葉の元に設立された熊本県初のプロチーム・ロッソ熊本(以下、熊本)。メンバーの全てがプロ契約で、ほとんどの選手がJリーグでのプレー経験を持つ。対する三菱水島FC(以下、三菱水島)はJFL所属チーム。今シーズンは20節を終えて2勝2分16敗と苦しいシーズンを過ごしているが、メンバーのほとんどを岡山国体成年男子チームに送り出す等、実力は高い。



苦しい中から先制点挙げてガッツポーズの山下(26)
 試合は熊本のペースで始まった。3−5−2のフォーメーションの熊本は、テンポ良く、人もボールも動かして三菱水島陣内へと攻め込んでいく。ゲームを作るのはトップ下の森。中盤の高い位置でボールを受けると、鋭いスルーパスを連発してチャンスを作る。そして右サイドからは市村がスピードを生かして何度もサイドを駆け上がりを三菱水島を圧倒する。13分には森と関、続く14分には町田が決定的なシュートを放った。地元チームの構成にスタンドからも歓声が上がる。

 一方、国体出場の疲労が残る三菱水島は完全な省エネサッカー。4−4−2のフォーメーションから長いボールを蹴って2トップに裏に抜け出すことに専念させ、守りでは熊本の森、町田を重点的にマークして相手の特徴を消しにかかる。前に出てくる熊本に対して慌てずに自分たちのサッカーを続けていけるのは、やはりJFLで長いシーズンを戦っている経験が物を言っているのだろう。押し込まれてもポイントだけは押さえ、そして淡々とゲームを進めている。

 そして先制点を奪ったのは三菱水島だった。攻め疲れからか熊本の動きが鈍くなったところを見逃さずにロングボールとFWの突破という狙い通りの展開から強烈なミドルシュート。最後はGKが弾いたボールを山下が押し込んだ。これで熊本のリズムが完全に崩れた。テンポの良いパスワークは消え、森もピッチの上から消えてしまってチャンスの芽さえ掴めない。そして淡々と試合を進める三菱水島の狙い通りに前半が終わった。



ロスタイムで追いついたロッソ熊本。流れを引き寄せたかに見えたが・・・
 後半も流れは変わらず。変わらぬペースで試合を進める三菱水島に対し、熊本はボールキープで上回っても攻撃の形を作れないままに時間を過ごす。そして試合はロスタイムに突入。後は終了のホイッスルを聞くだけになった。ところが、ラストチャンスに熊本がゴール前に上げたクロスボールにフリーになっていた朝比奈がヘディングシュート。これがゴールマウスを捕らえて試合は振り出しに戻った。三菱水島にとっては、DF加藤が足がつってピッチの外に出ていたことが悔やまれる。

 延長戦で先に攻め込んだのは熊本。97分には際どいシュートが右ポストをかすめた。しかし、それも長くは続かず、一方的にボールを持つものの、やがて攻めあぐねるようになっていく。そして、両チームの足が止まってからは試合は膠着状態に。前にボールを運びだせなくなってしまった三菱水島にとっては、この時間帯で熊本の勢いが消えたのは幸運だった。そして、この時間を凌いだことで最終的に三菱水島は勝利を手にすることに成功する。

 決勝ゴールが生まれたのは115分。中盤の右サイドでFKのチャンスを得た三菱水島は土屋がゴール前へ放り込む。そして混戦の中から高松剛太郎が右足でゴールネットを揺らした。59分に途中出場した高松剛太郎は、足が止まってしまった仲間たちが必至で守る中、ゴール前で危険な匂いを漂わせ続けていたが、最後の最後で大きな仕事を果たした。そして終了間際に放った熊本のシュートが右へ外れてゲームセット。地元・熊本は初戦を突破することが叶わなかった。



厳しい戦いだったが、JFLでの経験が生きた三菱水島
「JFLできついサッカーをやらされてきたことが身になった。なんとか相手についていけたこと、諦めなかったことが勝因」(熊代正志監督・三菱水島)。個々の技術なら、プロ経験者を揃える熊本が上。戦術がはまった時の攻撃も熊本が上だった。しかし、熊本が時間帯によってリズムを掴んだり、攻めあぐねたりしたのに対し、120分間を通して一定の水準を保っていたのは三菱水島だった。また、常に慌しさが付きまとう熊本に対し、冷静さという点でも三菱水島に分があった試合だった。

「まだ、このチームはアマチュア」とは池谷友良監督(熊本)。課題は個々の力をチームとして発揮すること、そして、勝負に対する逞しさを身につけることだろう。随所で相手を上回っていたとはいえ、勝負という観点から見れば、敗れるべくして敗れた試合。Kyuリーグで初黒星を喫したV.ファーレン長崎との試合と基本的には同じ流れだった。身に着けているはずの技術と経験を、高いレベル試合で発揮できなければ、ただの宝の持ち腐れ。初心に返って戦うことが求められているのではないだろうか。







(ロッソ熊本) (三菱水島FC)
GK: 加藤竜二 GK: 杉本憲彦
DF: 朝比奈伸 河端和哉 福王忠世 DF: 五藤幸範(71分/渡辺勇気) 加藤寿一 三宅一徳 川口正人
MF: 山口武士 森一紘 市村篤司(61分/河野健一) 関光博 熊谷雅彦 MF: 山下聡也 土屋健太郎 曽根祐一 原賀啓輔(79分/高松健太郎)
FW: 嘉悦秀明(52分/奈良安剛) 町田多聞(70分/高部望) FW: 高畑龍太(59分/高松剛太郎) 松岡大輔
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