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 第85回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へindexへ>
決定力の差で手に入れた勝利。浦和が25年ぶりの天皇杯王者に
第85回天皇杯全日本サッカー選手権大会 決勝 浦和レッズvs.清水エスパルス

2006年1月1日(日・元旦)14:03キックオフ 国立競技場 観衆:51536人 天候:曇
試合結果/浦和レッズ2−1清水エスパルス(前1−0、後1−1)
得点経過/[浦和]堀之内(39分)、マリッチ(73分)、[清水]市川(76分)


取材・文/中倉一志

「今年は厳しいんじゃないか」。昨年の2月9日、鹿児島・国分陸上競技場で行われたアビスパ福岡とのトレーニングマッチを取材したときの私の率直な感想だ。しかし、清水は苦しいシーズンを過ごしなからも、現場スタッフ、選手、クラブを挙げて多くの努力を積み重ねて元旦の国立に駒を進めてきた。「サッカーどころの御三家同士の対戦。恥ずかしくない試合をしたい」(長谷川健太監督)。もちろん、視線は4年ぶりの優勝を捉えている。

 対する浦和は、第60回大会に前身の三菱重工時代が優勝して以来の25年ぶりの決勝進出。過去2年間、あらゆる場所で優勝争いを繰り広げながらも、最後の壁が破れない浦和にとっては、足りない最後のピースを手に入れるための戦いになる。ゴール裏にはサポーターが赤と白のストライプと白星を浮かび上がらせる。地の底から響き渡るような野太い「浦和レッズ」コールがスタジアムを包む中、選手たちは国立のピッチに姿を現した。



 立ち上がりから前に出るのは浦和。右からは岡野が、左からは三都主がスピードを活かした突破を図る。しかし、清水はMF、SB、伊東の3人が連携して浦和のサイド攻撃を封じ込める。そしてハーフウェイライン手前に敷いたゾーンで浦和を捕まえると、中盤で手間をかけずに大きなサイドチェンジを使って前へ出る。リーグ戦で優勝争いを演じた浦和と互角の戦いを繰り広げるばかりか、20分を過ぎた辺りからは、むしろ清水が押し込む機会が増えていく。

「試合前から行こうよと話していた。そういう意味では思い切りやれた」(山西尊裕・清水)。時間の経過とともに、清水の攻撃の鋭さが増して行く。最初の決定機は29分。山西からの大きなサイドチェンジで右サイドに起点を作ると、そこからの折り返しにチェ・テウクが飛び込む。しかし、これは細貝がブロック。清水サポーターが陣取るアウェイ側ゴール裏から大きなため息が漏れる。しかし、その後も試合は清水ペースで進んでいく。

 そんな展開の中、浦和はワンチャンスを生かして先制ゴールを奪う。左からのCKはクリアされたが、そのボールを拾った三都主が再びゴール前へ。前線に残っていた堀之内が一瞬の隙を突いてDFの前に飛び出して頭で合わせた。浦和が放ったシュートらしいシュートはこれが1本目。数々の修羅場をくぐってきた浦和の決定力が垣間見えたゴールだった。しかし、清水は気落ちすることなく前に出る。まだ勝負の行方は分からない。



「内容的には問題はない。あと45分、強い気持ちですべてをかけて戦おう」(長谷川監督)。その指示を受けて清水は更に前に出る。53分には山田とGKが1対1になるという絶体絶命のピンチを招いたが、これをGK西部がスーパーセーブ。そして、ここから清水の怒涛の攻撃が始まった。中盤の激しいプレスと、早い攻守の切り替え。そしてパスをつないでサイドから駆け上がり、クロスボールにゴール前へ飛び込んでいく。浦和は跳ね返すだけで精一杯の展開が続く。

 そんな展開の中、先に動いたのはブッフバルト監督。清水の左サイドを封じるために山田を右サイドへ。トップ下に赤星を投入する。長谷川監督動いたのは72分。一気にカタをつけるために、平松と市川を同時に投入した。そして試合が動いたのは73分。中央でボールを拾った長谷部から、ポンテ、赤星、ポンテとすべてワンタッチでつないでゴール前へ。最後はニアへ走り込んできたマリッチがゴールネットを揺らした。

 しかし、それでも試合の行方は決まらない。決定的と思われた2点目にも浦和がゲームを落ち着かせられなかったからだ。そして76分、ゴール前の混戦から市川の右足がゴールを捉えて1点差に。さらに清水はチェ・テウクに代えて北嶋を投入。3トップにして最後の勝負を仕掛けた。だが清水の反撃は意外な終止符を打つ。84分、途中出場の平松が審判へ異議。これで2枚目イエローカードが提示された。「平松の退場で厳しくなった」。この瞬間、清水の天皇杯は終わった。



 試合内容なら間違いなく清水だった。だが、サッカーの神様は清水に微笑むことはなかった。「そんなに甘くはないということ。もっともっと苦労して、もっともっと精進して、初めてそういう結果が出るんじゃないかと思う」。長谷川監督は試合を振り返った。一方的に攻め込みながらゴールが奪えなかった原因が「決定力不足」にあるのは明らか。平松の退場も、優勝を常に争うチームであればあり得ない出来事だった。

「今日だけでなく、この2年間選手が一生懸命やってくれたことを誇りに思うし、だからこそ今日の試合の結果は妥当だったと思っている。今年せっかくいい結果を出したので、この結果を保つために来年は今まで以上の練習、努力ををつんでいかなければいけない。そうしなければせっかく得たものがあっという間になくなってしまう」とはブッフバルト監督。25年ぶりの優勝に喜びを表しながらも、すでに新シーズンに向けて心を引き締めた。

 清水が優勝を逃した主要因が決定力不足なら、浦和に勝利をもたらしたものも決定力だった。試合内容は、ここまでのチーム事情を象徴するようなものだったが、それを乗り越えて勝利という結果を手にしたという事実が何よりも大きい。「今回のこのタイトルは成功の始まりであると考えたい」(ブッフバルト監督)。天皇杯優勝という経験を身につけたチームがどう変わるのか。新しいシーズンが楽しみでもある。


(浦和レッズ) (清水エスパルス)
GK: 都築龍太 GK: 西部洋平
DF: 坪井慶介 堀之内聖 細貝萌 DF: 山西尊裕 高木和道 森岡隆三(72分/市川大祐) 青山直晃
MF: 山田暢久 長谷部誠 酒井友之 三都主アレサンドロ ポンテ MF: 伊東輝悦 兵働昭弘 チェ・テウク(80分/北嶋秀朗) 枝村匠馬(72分/平松康平→84分/退場)
FW: 岡野雅行(65分/赤星貴文) マリッチ FW: 岡崎慎司 チョ・ジェジン
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