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 第84回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
ユニフォームと同じオレンジ色は、徳島商業の応援団。
徳島商業、一条を振り切り、3回戦へ進出。
第84回全国高校サッカー選手権 2回戦 奈良市立一条高校vs.徳島県立徳島商業高校

2005年1月2日(月)14:10キックオフ 国立西が丘サッカー場 観衆:3,581人 天候:雨
試合結果/奈良市立一条高校0−3徳島県立徳島商業高校(前0−1、後0−2)
得点経過/[徳島商業]中村(33分)、斎賀(70分)、打樋(79分)


取材・文/西森彰

 西が丘サッカー場の第2試合は、既に1試合戦っているチーム同士の対戦。奈良市立一条高校は、国立霞ヶ丘陸上競技場のピッチで、甲府東高校と開幕戦を戦い、これを5対2で破った。徳島県立徳島商業高校は、福島県代表・湯本高校を破っての2回戦進出。「初戦のほうが全然緊張していましたよ。2年連続初戦敗退に終わって、今年こそは初戦突破と意気込んでいましたから、選手も私も相当プレッシャーがありました」と徳島商業の河野博幸監督。開会式直後のゲームを戦った一条も、それは同じだろう。



リスタートから、中村のゴールで徳島商業が先制。
 まずは、徳島商業が序盤のペースを握った。それは、最終ラインを高く保ち、一条の誇る徳村真ノ介、南恭平の2トップに仕事をさせなかったから。「練習試合もやらせていただいて、あの2トップのデキ次第だと思っていました。ふたりとも高さはそんなにない。スピードはあるけれども、怖がらずに最終ラインを高く保って、駆け引きでオフサイドにしよう」(河野監督)。その作戦が、完璧に嵌った。

 長身の中川大輔がターゲットになって後ろからのボールを引き出し、川村達郎と齋藤瞬も再三、サイドアタックを仕掛けて、一条の稲垣竜哉、下谷有祐の攻撃参加を封じる。孤立した2トップには、なかなかボールが渡らない。あとは、主導権を握っている時間帯に得点が奪えるかどうか、だ。徳島商業に待望の先制点が生まれたのは33分。薩摩将輝の右CKを、ニアサイドに飛び込んだDF・中村将大が頭であわせた。バックスタンドにいる徳島商業の応援団は大喜びだ。

 徳島商業攻撃陣の圧力は、後半に入っても一条に大きな負荷をかけた。「前後半40分ずつ、トータルで80分あるので、絶対に得点をとれると思っていたし、選手も練習試合を通じて、イメージができていたと思います」(前田久監督・一条)。いつか必ず訪れるチャンスを待ちながら、懸命に徳島商業の攻撃を耐える白いユニフォーム。しかし、48分、思わぬアクシデントが一条を襲った。

 徳島商業のCKを凌いだ直後だった。ゴール前のハイボールで競り合った相手選手に腹を立てた一条のGK・己浪学が、暴力行為を働いてしまう。八木あかね主審は迷わず赤いカードを取り出した。一発退場。一条の前田監督は控えGK・岡野一也を入れるために、中尾真也を下げざるを得なかった。反撃可能な30分間を前に、一条は数的不利を負った。



 皮肉だったのは、この退場と前後して、徳島商業の前線にいる選手たちがガソリン切れに陥ったこと。ボールの収まりどころがなくなったことで、思い切った押上げができなくなり、中盤が間延びした。それに伴って、押し込まれていた一条の2列目が息を吹き返した。勝負どころと見た前田監督は、57分、梅本拡司を左サイドバックに入れて、右サイドにキャプテンの稲垣を回す。

「ウチの選手たちは、普段から狭いところでの練習を結構しているので、数的不利の中でも崩し方を知っている。だから、ひとり少ないからといって追いつくことができないとか、そういうことは思っていなかったと思います」(前田監督)。とにかく1点を返さなくてはいけない一条の反撃が、ようやくここに始まった。

 59分、稲垣が右サイドを駆け上がり、中央にグラウンダーのボールを折り返すと、徳島商業のDFがこれを空振り。その裏にフリーで走り込む尾山敏基。だが尾山は、力が入ったか、これを宙に吹かしてしまう。3分後、今度は南のシュートをファンブルしたところに再び尾山が飛び込むが、ここは徳島商業のフィールドプレーヤー・浦川祐基がクリアする。さらに64分、左サイドから梅本が入れたクロスを、ファーサイドで追いついた本井良亮がシュート。しかし、これも僅かにポストの外を転がった。どうしてもゴールの枠を捉えられない。

 一条の攻勢を紙一重で凌いだ徳島商業は、斎賀淳のループシュートで加点。数的不利、残り10分での2点差。一条の闘志を折るには十分だった。ロスタイムにも途中出場の打樋耕平がコーナーキックのこぼれ球を押し込んで駄目押し。徳島商業が3対0で2回戦を突破。ディフェンディング・チャンピオンへの挑戦権を得た。



数的不利を背負おうとも、仲間たちの逆転を信じる、一条応援団。
 勝った徳島商業の河野監督は「相手が引いていたので、こちらが上手くつなぐことができました」と振り返ったが、それはキックオフから飛ばした前線のプレーヤーに負うところが大きい。2点をもたらしたセットプレーは「県大会の決勝が終わった後に練習したんですけれども、1回戦はキッカーが酷いデキだったので。今日は、上手く得点に結びついてくれました」とのこと。本来はもう少し、ビルドアップしていくチームだという。

 いよいよ翌日は鹿児島実業高校との一戦。考えられる勝ちパターンとしては、やはり先制点。「何本かは今日みたいにチャンスが回ってくると思います。そこできちんと得点をとれるかどうか。相手はチャンピオンなので、そういう展開に持っていけたら、やっぱり焦りも出てくると思います」(河野監督)。無欲の挑戦者は、どこまで食い下がれるか?

 敗れた一条の前田監督は「GKの退場でいちばんかわいそうなのが、控えのGKを入れられるためにピッチを去らなければいけないフィールドプレーヤーなんですよね。今日も中尾という選手を下げざるを得なかったんですけれども、彼がかわいそうで堪らなかった」と語った。1回戦で対戦相手のGKが2回ハンドをとられて失点をした時も「あれが勝負の厳しさだけれど、かわいそうだった。僕が直接声をかけてあげられるなら『元気出せよ、また頑張れ』と言ってあげたい」と言っていた人情家でもある。

「GKが2回もハンドの反則を取られたり、1点を追うところでプレーと関係のないところで、レッドカードをもらったり。そういうことはJレベルでは、考えられないことでしょう。でもそれも高校サッカーなんです。選手を3年間で育てて、さあこれからという時に、手放さなければならない。いつも『もう1年あれば』と思いますけれどね」


(奈良市立一条高校) (徳島県立徳島商業高校)
GK: 己浪学(48分/退場) GK: 井花祐基
DF: 下谷有祐(57分/梅本拡司)、松山周平、松本純弥、稲垣竜哉 DF: 八幡充、中村将太(79分/原田久也)、播磨達也、薩摩将輝
MF: 本井良亮(71分/宮木敏)、尾山敏基(67分/榎本翔太)、工藤直樹、中尾真也(50分/岡野一也) MF: 川村達郎、塩谷司、浦川祐基、齋藤瞬
FW: 南恭平、徳村真ノ介 FW: 斎賀淳(79分/長嶺宏紀)、中川大輔(79分/打樋耕平)
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