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 第84回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
駒沢陸上競技場の3回戦は、中国対決となった。
広島観音、2日連続のPK戦で中国対決も制す。
第84回全国高校サッカー選手権 3回戦 岡山県作陽高校vs.広島県立広島観音高校

2006年1月3日(火)12:10キックオフ 駒沢陸上競技場 観衆:3,179人 天候:晴
試合結果/岡山県作陽高校1−1(PK4−5)広島県立広島観音高校(前0−0、後1−1)
得点経過/[広島観音]古川(45分)、[作陽]西脇(77分)


取材・文/西森彰

「ウチが一番強いと思いますよ。ノーマークの中では、ですが」

 岡山県作陽高校の野村雅之監督は、地元紙の記者に手応えを訊かれて、そう答えていたという。地元・岡山国体では、少年男子のカテゴリーで、主力メンバーを送り出していた作陽。東京都代表の成立学園高校をロスタイムに生まれた逆転ゴールで破ると、2回戦では山形県立山形中央高校にも逆転で5対1の大勝。この3回戦まで歩を進めてきた。

 広島県立広島観音高校は、昨年、徹底してつなぐサッカーで高校サッカー界に新風を吹き込んだチーム。今年は、2回戦から登場。いきなり初戦の相手は、優勝候補の石川県代表・星稜高校だったが、これをPK戦で退けた。自主性がこのチームの特徴。戦略・戦術も選手たちのミーティングで決定し、それを畑喜美夫監督らスタッフに報告する。この日も選手たちが話し合って決定した先発メンバーが、ピッチに散った。



 強風の中、前半に風上を取った広島観音がペースを握った。7分、右コーナーキックのチャンスに混戦からのこぼれ球が作陽の左ポストを直撃。このリバウンドを古川恭治が叩くと、これもゴールバーに当たって跳ね返る。その後も広島観音が四分六分で押し気味にゲームは進んだが、両チームとも2日続きのスケジュールが応えたか、内容的には今ひとつ。散発的なミドルシュートもなかなか枠を捉えられない。前半は両チームとも無得点。

 ハーフタイムに広島観音は、前線に高さのある山本哲也、そしてスピードのある鍋原大崇を投入。「温存していたわけではありません(笑)。ふたりとも先発で行ける選手なんですよ。子供たちに『アタマからはどう?』と訊いてみたんですが、やっぱり途中からということだったので」と畑監督。4−4−2気味の布陣を、前線に鍋原、山本、古川と並べた攻撃的な4−3−3に変更する。

 これに対して作陽も、椿本拓也を投入。スピードに乗ったドリブル、そしてロングスローが得意なスーパーサブは、1回戦の成立学園高校戦では、決勝点につながるプレーを見せている。風下を40分間辛抱した作陽も、攻撃を選択した。どちらのチームも勝負に出た。



3トップにした広島観音のシステム変更が当たる。
 作陽に流れが行くかと思われた後半、先制点は広島観音に転がり込んだ。45分、左サイドから鍋原が作陽DFを翻弄し、ドリブルで一気に持ちこむ。シュートは作陽GK・黒田瞬に一度は防がれたが、サイドハーフから、ウイングの位置までポジションを上げていた古川恭治が、ファーサイドで詰めた。作陽の野村監督は「途中交代で入った選手がスピードのあることは知っていました。最初のプレーの時に、そのあたりを考えて対応するように、しっかりと注意を促しておくべきだった」と失点を悔いた。

 勢いに乗る広島観音は、5分後に先制点と逆パターンで古川のセンタリングから、鍋原のヘディングシュート。さらに55分にも鍋原のドリブル突破からチャンスを作る。2日続きのゲームでただでさえ苦しいところに、鍋原というスピードスターは凶器とも言えた。しかし、この時間帯を1点で凌いだ作陽も、蓮岡裕紀のスルーパスに点であわせた西脇陽のシュートで反撃を開始。その後は、広島観音のペースダウンもあって、ハーフコートゲームに持ちこむ。

 広島観音は、作陽の攻勢でベタ引きになった。「確率的に、前線のスペースをしっかりと消したほうが良いと判断したんでしょう。私もその選択は間違っていなかったと思います」と畑監督。椿本のドリブルを二重三重の構えで抑え、中距離からのシュートはGK・川岡耕平がセーブする。76分、後方からのフィードを、そのままダイレクトボレーで枠に飛ばした西脇のシュートが川岡に防がれたところで、作陽の命運は尽きたかに思われた。しかし、このプレーで生まれた左からのコーナーキックに、再び西脇がニアサイドで頭をあわせた。3試合連続でリードを許した作陽は、3試合連続で11番のあげた同点ゴールに救われた。



 追いついた作陽はそのまま逆転を、追いつかれた広島観音もそこから勝ち越しを狙って、ほとんどノーガードの打ち合いになった。しかし、広島観音・古川のシュートがポストに蹴られるなど、どちらも決勝点をあげられず、勝負はPK戦に持ち越された。

 これまで、公式戦、練習試合で何度も戦っていた両チームだが、作陽は広島観音に勝ったことがない。当然のように、広島観音を研究し尽くし、その対策は、各選手がPKで蹴るコースにまで及んでいた。前日にPK戦を行っていたこともあり、広島観音の先鋒・田中康晴はいつもと違うコースに蹴ってみた。作陽GK・黒田の裏をかいた。第2キッカーの小熊和人は、敢えていつもどおりのコースに蹴った。そして、これをストップされた。

「2人目まで蹴ったところで、相手のGKは2本とも、いつもどおりのコースに跳んできた。あれで子供たちも確信したようです。3人目からは違うコースに蹴っていって、それで相手のGKが読みをずらせた。結果的には、あの2本目の失敗が止められたのがあったから、勝てたような部分もあります」(畑監督)

 半ば覚悟の上で背負った1本のビハインドを、直後にチャラにしてもらった時点で、広島観音は圧倒的優位に立っていた。そして、前半、広島観音のゴールを何度も阻んだゴールバーは、最後の最後で作陽6人目・蓮岡の蹴ったボールを弾き返した。



PK戦の最後は、いつも明暗がくっきり。
 またもや広島観音の牙城を崩せなかった作陽の野村監督は「これだけやって勝てないというのは、まだ何か足りないものがあるんでしょう」。今年のチームは、数多くの得点パターンを持ち、またビハインドを跳ね返すだけの強いハートを持っていた。上に進めるのはただ1チームという勝負の非常さ。それでも、ここで消えるのは本当に惜しい。

「今日も接戦のゲームになるというのは分かっていました。あのまま逃げ切れれば、子供たちのゲームプランどおり、最高のゲームだったんですけれどね。作陽さんも強くて、次に向けて良い課題が見つかったんじゃないでしょうか。それでも最後まで粘り強く戦ってくれたこと。PKの中でも自信を持ってやってくれたこと。凄く成長したんじゃないでしょうか」

 昨年は最終ラインからでも絶対にボールを殺さず、前線までパスをつなぐサッカーを徹底していた広島観音。だが、1年後のチームは、理想と現実の妥協点を見出していた。「昨日の試合も無理につなごうとしたところを攫われてピンチを作られていた。子供たちも、切るところとつなぐところの見極めをしっかりしようと」(畑監督)。リスクを避けて、不利な状況ではきっちりとゲームを切った。もちろん、それは全国制覇を見据えてのリニューアルだ。

 今年は、準々決勝で岩手県代表・岩手県立遠野高校の前に国立への道を絶たれることになったが、昨年の教訓を今年の選手たちが生かしたように、今年の選手たちが果たせなかった夢は、また来年以降、後輩たちがしっかりと継承していくことだろう。


(岡山県作陽高校) (広島県立広島観音高校)
GK: 黒田瞬 GK: 川岡耕平
DF: 宮澤龍二、奈良林寛紀、藤野洋平、坂口宙 DF: 山野裕斗、坪井慎吾、代健司、左山晋平
MF: 小掠康平、宮本大希、蓮岡裕紀、山本陽介(H.T/椿本拓也) MF: 古川恭治、安藤辰徳、田中康晴、梅本洋也(H.T/山本竜也)
FW: 西脇陽、山本翔一 FW: 左山駿介(H.T/鍋原大崇)、小熊和人
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