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 第84回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
力を尽くした両チーム。勝利の女神は遠野に微笑む
第84回全国高校サッカー選手権大会 3回戦 立正大淞南高等学校vs.岩手県立遠野高等学校

2005年1月3日(火)14:10キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:2000人 天候:曇
試合結果/立正大淞南高等学校1−2岩手県立遠野高等学校(前0−0、後1−2)
得点経過/[遠野]小島(56分)、[立正大淞南]金園(79分)、[遠野]佐々木(79分)


取材・文/中倉一志

 71分に千賀大樹(立正大淞南)に2枚目のイエローカードが提示された。試合は終盤。立正大淞南は遠野に1点のビハインド。しかもゲームをコントロールしていたのは遠野。この時点で勝負が決まったと思った者も多かったはずだ。しかし、立正大淞南イレブンはあきらめていなかった。77分、谷川一真に代えて奥本雄司を前線に投入。最後の勝負に出る。そしてゴール前の混戦から金園が右足を一閃。密集の中を抜けたボールがゴールに吸い込まれた。手元のストップウォッチは40分45秒を指していた。

「PK戦」という言葉が頭に浮かぶ。しかし、試合はこれで終わらなかった。「ロスタイムになっても点を取りに行こうと(佐藤)邦祥と話していた」(佐々木勝洋)。そして立正大淞南の同点ゴールから1分後、遠野にCKのチャンスがやってくる。キッカーは小島暢明。「最後はやってくれると思っていた」。左足から放たれたボールがゴール前へ。飛び込んだ佐々木の頭がボールを捉える。GK竹田雅之は手に当てるだけで精一杯だった。



 この日の遠野は全く違う姿を見せた。「今日の相手は引いて守っているのでボールはもてると思っていた」(松田光弘監督・遠野)。その言葉どおり、中盤でボールをキープすると、小島暢明を中心にパスをつないで前に出る。菊池が楔のボールを受け、その周りを橋場貴之が衛星のように動き回り、鈴木秀啓がスペースを見つけては飛び込んでいく。そして両サイドからも積極的に攻撃を仕掛けた。守備のチームというイメージがあったが、この日に限っては攻撃的に試合を進めていく。

 対する立正大淞南は、やや下がった位置で遠野の攻撃を受け止める。しかし、その守備ブロックは堅い。守備が始まるのは前線のプレスから。そのブレスに連動して全員がポジションを動かしながら守備ブロックを移動させていく。風下ということもあって押し込まれる場面も多いが、最後のところでは体を張って遠野のシュートを跳ね返した。「相手のシュートブロックが粘り強くて苦しみました」(松田光弘監督・遠野)。その粘り腰が目を引く。

 攻めていながら得点に結びつかない展開は、1、2回戦で遠野自身が演じてきたサッカー。攻めきれないチームが崩れていくのを知っているだけに、焦りが生じても不思議ではない展開だった。一方、立正大淞南にとってもまた難しい展開だった。「随分やられた。GKと良元を中心にして体を張って防いで、後は一発のカウンターを待つしかないという状況。狙い通りといえば、狙い通りだが・・・」(南健司監督・立正大淞南)。攻め切れるのか、それとも守りきれるのか。どちらもギリギリの戦いは0−0のまま前半を終えた。



「点を取りに行かないと、このままではやられる。相手はカウンターを狙いだが、その準備をしていれば点は取られない。しかし、自分たちが圧力をかけて点を取りに行かないとやられる」。松田監督の檄を受けて遠野は後半のピッチに飛び出していく。立正大淞南も変わらぬ堅固な守備で遠野に立ち向かう。そんな中、ペースを握ったのは遠野。攻めきれない展開ながら、焦らずに前に出ることでプレッシャーをかけ続けたことが流れを引き寄せた。

 そして待望の先制点が生まれたのは56分。橋場からオーバーラップしてきた長田真へ。その長田からのクロスに小島が頭で合わせた。「トンピシャのボールが来た。後は決めるだけだった」(小島)。待望のゴールを遠野が手に入れた。この後は遠野がゲームをコントロール。ゲーム終盤には冒頭の激しい攻防があったが、それをも制して、5年ぶりのベスト8の座を手に入れた。

「PK勝負と思っていましたが、CKの時に僕の前で触られてしまって、入れられてしまったのが悔いが残ります。でも相手の方が1枚も2枚も上手だったんで実力不足でした」試合後、ロッカールームの外へ出てきてくれた平野甲斐(立正大淞南)は気丈に答えた。悔しくないはずはない。取材陣の質問に丁寧に答える間に、時折、目に光るものが見えた。しかし、自分たちの力を出し切ったことに間違いはない。一時は同点となるロスタイムのゴールは、3年間ともにサッカーをしてきた仲間との間の大きな財産として残るはずだ。



 ノーマークながら、とうとうベスト8まで勝ち上がってきた遠野。身上は、粘り強い守備と、少ないチャンスを見逃さない勝負強さだが、勝ち続けることでチームが成長してきたようだ。ラウンドを進めるごとに選手たちの間に自信のようなものが芽生えつつあることが手に取るように分かる。「また粘り強く謙虚に行きたいです。まずは次に勝ちたいですね」。対戦相手は同じ高校生。実力的には大きな差はない。結局は、自分たちのサッカーを貫き通したチームにサッカーの神様が微笑む。

 遠野の次なる目標は、まだ踏んだことのない国立のピッチに立つこと。1日の休息をはさんでの準々決勝は広島観音が相手になる。「自分たちのサッカーを見直して準々決勝に臨みたいと思っています。課題としては、テクニックがあるチームではないので、攻撃に入ったときに、どうやってバリエーションを増やしていくかとか、いかにリスタートを取って効率的に攻めるかというところだと思います。次も初戦のつもりで、1戦、1戦うだけですね」(松田監督)。さて、次はどんな戦いを見せてくれるのだろうか。






(立正大淞南高等学校) (岩手県立遠野高等学校)
GK: 竹田雅之 GK: 高橋佳豊
DF: 森圭史 岡本彰泰 良元章浩 本田晃大 DF: 長田真 佐々木勝洋 佐藤那祥 伊藤輝将
MF: 千賀大樹 上原翼(52分/西出憲人) 金園英学 谷川一真(77/奥本雄司) MF: 薄井朋也(65分/菅原崇弘) 小島暢明 橋場貴之(79分/砂子澤公) 千葉竜司
FW: 松本昴樹 平野甲斐 FW: 鈴木秀啓(49分/高橋大樹) 菊池亮
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