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 第84回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
準々決勝、注目の一戦。多くの報道陣に囲まれて選手入場
鹿児島実業、強豪滝川第二に何もさせず。余裕のベスト4
第84回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝 鹿児島実業高等学校vs.滝川第二

2005年1月5日(木)12:10キックオフ さいたま市駒場スタジアム 観衆:3100人 天候:曇
試合結果/鹿児島実業高等学校1−0滝川第二(前1−0、後0−0)
得点経過/[鹿児島実業]豊満(1分)


取材・文/中倉一志

「あの1点が効きましたね、1分かな。あの1点がなかったら、同点になっていたら、うちがやられていた」(松澤隆司総監督・鹿児島実業)。スコアは1−0。一方的に攻め立てた前半とは違って後半は押し込まれる場面もあった。確かに、試合は拮抗していたと言えるかもしれない。しかし、80分間を通して感じたのは鹿児島実業の相手に何もさせないプレスとスピード、そしてフィジカルの強さだった。これで鹿児島実業は県予選から続く無失点試合を9に伸ばし、予想通りに準決勝へと駒を進めた。

「いつも、いい立ち上がりが出来ていたので、今日も立ち上がりは上手くいくんじゃないかなと思っていたのが心の隙だったのかもしれない。まともにぶつかるんじゃなくて、もうちょっとやり方があったかもしれない」とは黒田和生監督(滝川第二)。そして「(後半についても)もう少しサイドを使うように指示が出来ればよかったかなと思う」と、話す言葉には後悔の念が滲む。それも、自分たちのサッカーをさせてもらえなかったから。この試合に限れば完敗だった。



バックスタンドにはVUの人文字が描き出される
 決勝ゴールとなった先制点が生まれたのは開始直後の1分。誰も予想もしなかった時間だった。右サイドでボールを受けた永岩貞亮が瞬時にシフトチェンジ。トップスピードに乗ってサイドを突破する。右足から繰り出される、低く、速いクロスボール。そして、中央に飛び込んで行く迫田亮介の動きに引っ張られた滝川第二守備陣の裏のスペースに豊満貴之が走りこむ。次の瞬間、豊満が右足を一閃、ゴールネットが大きく揺れた。これで鹿児島実業が一気にペースを掴んだ。

 風上に立っていたという利点もあったが、40分を通して目立っていたのは鹿児島実業の出足の鋭さだった。早目に前線にロングボールを蹴りこむと、後方から押し上げてルーズボールを支配。そこから左右に展開して、力強くグイグイと前へ進んでいく。滝川第二がボールを拾っても、あっという間に囲い込んで全く自由を与えない。さすがの滝川第二も防戦一方。ほとんどボールに触ることが出来ず、試合はハーフコートゲームの様相を呈している。

 そして、今大会注目FWの森島康仁にも何もさせなかった。マークに付くのは本城宏紀。ハイボールをしっかりと競り合って制空権を渡さない。そしてこぼれたボールは、西岡謙太と赤井田侑志が連携して確実に自分たちのボールにした。追加点を奪えずに、前半は1−0のまま折り返すことになったが、際立ったのは鹿児島実業のプレスと圧倒的な攻撃力ばかり。得点差以上に両チームの力の差が感じられた前半だった。



ゴールを狙う内田(10)のFK。惜しくもクロスバーに阻まれる
 しかし、滝川第二もこのままでは終われない。「3点、4点があってもおかしくない展開。1−0はラッキー。後半は風上になるんで、開き直ってシンプルにやろう」。黒田監督はそう言って選手たちをピッチに送り出す。加えて「より調子が良いと思われる選手を起用した」として稲本悠人、山口尭央に代えて、橘章斗、山本拓矢を後半開始から投入、反撃体制を整える。そして風上の利を活かして、いよいよ滝川第二の猛反撃が始まった。

 前半とは別のチームのように、一方的に鹿児島実業を追い込む滝川第二。46分には橘章斗が森島からのパスを受けてシュート。続く47分には内田昴輔が直接FKからゴールを狙う。しかし、滝川第二の勝利への思いを乗せたシュートは、いずれもクロスバーを叩いてゴールはならなかった。勝負の世界に「たられば」は禁句だが、この時間帯に同点ゴールが生まれていたら、試合の結果は、また別のものになっていただろう。

 そんな滝川第二の猛攻も50分あたりまで。ここからは落ち着いた守備を見せる鹿児島実業がゲームをコントロールしていく。徹底して森島にロングボールを集める滝川第二に対し、前半同様、最終ラインの3人が連携して自由を与えない。局面では数的有利を崩さず、奪ったボールからカウンターを確実に仕掛けた。押されているように見えても、ゲームの支配は鹿児島実業。それを可能としたのは、変わらぬボールに対する集散の速さだった。



森島(白9)を囲い込む鹿実DF陣。最後まで自由を与えなかった
 サッカーというのは何が起こるが分からないスポーツ。まして高校年代であれば、ほんのわずかなことでゲームの流れが変わる。今年の大会でも、そういったシーンが何度も見られた。実際、後半の立ち上がりに見せた滝川第二の猛攻は試合の行方を変える可能性もあった。しかし、そうはさせなかった鹿児島実業。プレー内容はもちろん、精神的にも強く鍛えられているのが分かる。ここまで見る限り、その力は頭ひとつ上。攻撃力はもちろん、相手に何もさせない強い守備が力の源だ。

 昨年、PK戦の末に単独優勝を果した際、「完全な単独ではない。勝負は引き分けだと思っている。再度、真の単独を目指さなければならない。また目標が出来た」と語っていた松澤総監督。「全国では11人では勝てない。14、15人揃っていなければ、カードやケガに対応ができない」とも。その14、15人をそろえて臨んだ今年の大会。「核になる選手がいない」(同総監督)とはいうものの、優勝を狙うの材料は揃っているように見える。

「(準決勝で)勝てば2連覇が見えるので、これが最後という気持ちで頑張ります」(豊満・鹿児島実業)。「無失点優勝が目標」(西岡謙太・同)。選手たちは確実に2連覇を見据えている。





(鹿児島実業高等学校) (滝川第二)
GK: 溝ノ上一志 GK: 清水圭介
DF: 本城宏紀 西岡謙太 赤井田侑志 DF: 藤井大介 大久保悟 蛭田達也 塩田怜史
MF: 永岩貞亮 三代将平 赤尾公 豊満貴之(51分/玉利侑也) 諏訪園良平 MF: 金崎夢生 大塚尚毅(63分/植村公亮) 内田昴輔 稲本悠人(HT/橘章斗)
FW: 迫田亮介 栫大嗣 FW: 森島康仁 山口尭央(HT/山本拓矢)
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