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 第84回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
「新しい息吹」。選手主体の広島観音を破り、遠野が東北勢初の準決勝に進む
第84回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝 岩手県立遠野高校vs.広島県立広島観音高校

2006年1月5日(木) 14:10キックオフ さいたま市駒場スタジアム 観衆:4.000人 天候:晴
試合結果/遠野高校3ー2広島観音(前1−1、後2ー1)
試合経過/[広島観音]代(24分)、[遠野]鈴木(35分)、菊池(61分)、橋場(66分)、[広島観音]鍋原(79分)


取材・文/砂畑 恵

 1、2回戦は那覇西、東福岡といった優勝候補に引いて中央を固め、カウンターから度肝を抜くシュートで勝ち上がってきた遠野。3回戦では実力伯仲の淞南に対し、守りのチームというスタイルを脱ぎ捨て、攻撃的な相手を上回るアタックで白熱したゲームを展開した。つまり対戦相手とチームの力関係を加味して違う闘い方が出来るチームなのだろう。

 そういうことでは広島観音との勝負が試合前からとても楽しみだった。広島観音は2年連続2度目の出場と全国大会の経験値は低い。だがサンフレッチ広島のジュニアユース出身者が多く、強固な守備をベースにしっかりとパスを繋いでくるチーム。両チームとも中盤を制しようとする激しい展開が予想された。



 試合開始と同時に両チームは中盤をコンパクトにしてがっちりと四つに組んだ。広島観音の特徴は左サイドバックの左山は攻撃に絡むタイプで、後ろを守るのは残る3人。セーフティーなプレーを優先し、山野に象徴されるように人に強いディフェンスが売り。攻撃に目を移せばボランチがゲームを操り、田中や小熊がサイドからドリブルでゴール前に切り込んで行く。それに対して風下の遠野は今日はオーソドックスな4−4−2でプレーし、小島が左右のスペースでボールを受け、千葉が起点となる攻撃を仕掛けた。双方とも足下でパスを繋げることもあって風の影響はあまり感じなかったが、それでも風上の広島観音が徐々にペースを握りつつ、お互い譲る気配はないままに瞬く間の20分が過ぎた。

 決定的チャンスを先に迎えたのは広島観音。24分、CKでキッカー左山は高く蹴り上げた。ボールは風で微妙に揺れながら、GK高橋も飛び込む混戦の中へ。零れたボールを処理した遠野DFのクリアーが後ろ向きとなっていた代の足に当たってボールがラインを越える。何ともラッキーな先制点で広島観音がゲームを動かした。

 この得点で広島観音のムードはグッと盛り上がった。小熊山本のコンビネーションで遠野を翻弄する場面も見られ、遠野は坪井を中心に耐える時間となった。しかし高校サッカーの恐くて面白いところは些細な切っ掛けで流れが変わること。34分、橋場がドリブル突破から一方の攻めの形を作ると、急に遠野のリズムが良くなるのだから不思議だ。そして35分、遠野にゴール正面やや右からFKが与えられる。広島観音は3枚の壁を作ろうとして相手に対する注意が緩んだ。その一瞬を逃さず小島が壁の後ろにループボールを落とす。斜め右からさっとその背後に走った鈴木が同点弾を叩き込んだ。

 この点に関し、遠野・松田光弘監督が「あれは小島と鈴木の阿吽の呼吸で入ったんだと思います」と、2人の状況判断の賜物と誉めれば、広島観音・松田博光監督は「0−0、もしくは1−0で折り返そうというゲームプラン」だっただけに、集中力があれば防げた失点を「精神的なところで、ちょっと重かった」とチームに微妙に影響したと振り返る。



 後半になると広島観音はワイドに開いたトップ下を使ってサイドから攻めたいことろだったが、どうしても得点を意識し、ドリブル突破からシュートと個人で仕掛ける単調な攻めとなる。それは遠野も同じでお互いが助かった部分はあった。そんな中でようやく遠野から味方を上手く使った攻撃が繰り出された。右に開いた橋場に小島からパスが渡る。小島はそのままゴール前に入ってニアで相手DFを潰した。その間を抜けるように橋場から中へと送られるボール。菊池が飛び込んでゴールゲット。61分、遠野が逆転に成功した。更に5分後、パスを受けた橋場はトラップ1発で相手DFの前に回り込むと右足を振り抜いてシュート。卓越した個人技で遠野は3点目を奪った。

 これで後がなくなった広島観音は78分、左山のCKが直接にゴールになるかと思えたが、惜しくもゴールカバーに入った遠野DFに掻き出される。刻々とタイムアップが迫るのを感じながら、諦めずに攻める広島観音の選手達。ロスタイム、ゴール前の混戦の中で鍋原が押し込んでどうにか1点を返すが反撃及ばず、遠野が3−2で逃げ切った。

 東北勢初の準決勝に進んだ遠野。その歓びたるは一入だろう。だが次の試合は小島をはじめレギュラーに出場停止が出でベストメンバーを組めない。しかも相手は優勝候補筆頭の鹿児島実業。今度はどういう方法でこの難局を乗り越えるだろうか?

 負けてしまった広島観音について、「最後まで大きな指示を与えることなく、子供達が自分達の作ったプランの中で敗れました」という松田博光監督の言葉に非常に驚いた。しかも選手は点差別に闘うプランを立てていたと話す。日本代表でもなかなかこなせない「自由」を広島観音は満喫していた。今後、広島観音が向かう先を注目していきたい。


(遠野高校) (広島観音高校)
GK: 高橋佳豊 GK: 川岡耕平
DF: 高橋陽介 佐々木勝洋 佐藤邦祥 伊藤輝将 DF: 代健司 坪井慎吾 左山晋平 山野裕斗
MF: 薄井朋也(77分/松尾健) 小島暢明 橋場貴之 千葉竜司 MF: 田中康晴 安藤辰徳 古川恭治(74分/天根駿) 田代寛明(HT/山本哲也) 
FW: 鈴木秀啓(51分/菅原崇弘) 菊池亮 FW: 小熊和人 山本竜也(HT/鍋原大崇)
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