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 第84回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
憧れの舞台へ向かう、多々良学園と野洲のイレブン。
革命児・野洲、頂点まであとひとつ。
第84回全国高校サッカー選手権準決勝 滋賀県立野洲高校vs.多々良学園高校

2006年1月7日(土)14:15キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:19,082人 天候:晴
試合結果/滋賀県立野洲高校1−0多々良学園高校(前0−0、後1−0)
得点経過/[野洲]瀧川(45分)


取材・文/西森彰

 山口県代表の多々良学園高校は、何度も報道されているとおり、経営が破綻し、民事再生法の適用段階にある。「次の経営者がこれまでのようにクラブ活動を重視するかどうかは分かりません。私としては『最後』という気持ちでこの大会を戦ってまいりました」(白井三津雄監督・多々良学園)。選手たちの気持ちも、想いはひとつだろう。「『多々良学園』をコクリツに連れて行く」。西日本最高の施設環境でプレーしてきた選手たちは、その恩返しを胸に大会に臨んだ。

 そして、岡山国体を制した千葉県の代表・流通経済大学柏高校を二回戦で撃破すると、インターハイのチャンピオン・青森山田高校戦では神懸りの逆転勝ち。準々決勝で鹿島学園高校を破ってたどり着いた国立霞ヶ丘陸上競技場。この準決勝で勝てば、次は前年度王者の鹿児島実業高校が待っている。「正直、各チャンピオンを破っての優勝というのがちらついたところもあります」(白井監督)。

華麗なパスワークとテクニックで相手を崩す野洲高校(白)
 その前に立ちはだかったのは、滋賀県立野洲高校である。3年前の初出場時は、準々決勝で優勝した市立船橋高校に善戦しながら、ロスタイムに決勝点を奪われて惜敗。2回目の出場となる今大会は一回戦から、修徳高校、四日市中央工業高校、高松商業高校と次々に常連校を葬り去った。そして、準々決勝では大阪朝鮮高校にPK戦で勝って、準決勝の舞台に辿り着いている。「高校サッカーを変える」と強気な発言で注目を集める山本佳司監督は「今年の野洲高校に残された1分1秒を無駄にするな」と声をかけて、選手たちを送り出した。



 まずは、野洲が主導権を握る。3−5−2を敷く野洲は、右の楠神順平、左の乾貴士がサイドを制圧し、ここをえぐって平石竜真、青木孝太にセンタリングを上げる。最初の15分間は一方的な野洲ペース。多々良学園も15分、ワンツーを決めたハウバート・ダンのシュートで反撃の狼煙をあげると、16分には「どうしても先制点が欲しくて先発で起用した」(白井監督)石田聖雄がDFに競り勝ってシュート。これが右ポストを直撃し、リバウンドを狙ったダンのキックは空振り。惜しい先制機を逸した。

 やや距離のある場面でも積極的にシュートを打って、リズムを作る多々良学園。野洲も楠神のミドルシュートなどで応戦。26分、多々良学園が平川亮輔に代わって山田竜司が出ると、33分、野洲も平石を諦めて瀧川陽。早い選手交代は、どちらも先手を取ることの重要性を感じてのものだろう。しかし、両チームともチャンスを作りながら、最後の場面でシュートをミス。ロスタイムの乾のシュートもバーを直撃し、前半は無得点で終了した。

スタンドから声援を送る野洲応援団
 後半に入っても、ハナからリングの中央で打ち合う両チーム。多々良学園はダンのシュートが枠を逸れ、相手ゴール前での混戦も、あと僅かで押し込むことができない。野洲も、ループパスを受けた乾がシュートをGKにぶつけ、ゴールを割れない。互いに喉元へ刃を突きつけながら、どちらも止めを刺すことができない、前半同様の展開が5分間続いた。そして45分、この試合で唯一のゴールが決まった。右サイドを突破してきた楠神が、股抜きを決めて対面するDFを交わし、浮き球のセンタリング。途中交代で入っていた瀧川は、頭をあわせるだけで良かった。

 1点を奪われた多々良学園もダンと平間直道を中心に反撃する。ここで白井監督の選手交代は、DFからDF、FWからFWと同一ポジション。しかもチーム一の長身・石田をベンチに下げた。バランスを崩して前線に長身の選手を集め、ここへの放り込みで生まれる混戦から同点を狙うという、ありがちな泥臭い戦法は選択しなかった。

 リードした野洲も、多々良学園の攻撃を消そうとしない。守りに入ることなく、その後も打撃戦に付き合う。時間が残り少なくなった相手陣内のセットプレーでも、カウンターを狙う多々良学園が4人のアタッカーをハーフウェーに残しても、DFの数は同数の4人だけ。全く、試合を殺そうという意図は見当たらない。80分間、打ち合いが続いたゲームは、ダンのシュートを待って試合終了のホイッスルを聴いた。



最後まで堂々と戦った多々良。支えてくれた人たちへの恩返しの大会は
終わった
「今日の相手は高校サッカー界で、しっかりとゴロのパスをつないでくる多々良学園。その点で今日のゲームは、相手に恵まれたと思いました。ゲームを見てもらって、『野洲のサッカーは面白いな。決勝戦を見に行こうかな』と思ってくれる人が大勢いたら、今日のゲームは成功だと思います」

 野洲高校の山本監督は、試合終了後の記者会見で、そう語った。この日、両チームが作った決定機は、手元のメモに残っているだけで13回。お互いにゴールへ向かう姿勢を重視し、ボールをつないでゲームを展開した。高校サッカーだけでなく、ノックダウン方式の大会では中々お目にかかれない。その結果、国立霞ヶ丘陸上競技場に訪れたサッカーファンは、素晴らしいエンターテインメントを享受することになった。

 ただ、このポリシーは、勝負にかかった際の淡白さとなる懸念もある。技術だけでなく、精神力も必要になってくるこの年代でその折り合いはつけられるのだろうか。サッカーのエンターテインメントとしての魅力、そしてその先にある世界を追求しながら、野洲は決勝戦に臨む。対戦相手は日本の高校サッカーを象徴する、ハートで戦う鹿児島実業。1月9日(月)のゲームでひとつの答えが示されることだろう。





(滋賀県立野洲高校) (多々良学園高校)
GK: 下西要 GK: 柳井一茂
DF: 荒堀謙次、内野貴志、田中雄大 DF: 田村隆生、観音寺矢、國光佑介、平山秀人(64分/田村正和)
MF: 中川真吾、金本竜市、楠神順平、乾貴士、平原研 MF: 平間直道、菅田恭介、楢崎佑馬、平川亮輔(26分/山田竜司)
FW: 平石竜真(33分/瀧川陽)、青木孝太 FW: ハウバート・ダン、石田聖雄(67分/小畠諒)
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