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 第84回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
立ち上がりから遠野に襲い掛かる鹿児島実業
鹿児島実業、難敵・遠野を退けて貫禄の決勝戦進出
第84回全国高校サッカー選手権大会 準決勝 鹿児島実業高等学校vs.岩手県立遠野高等学校

2006年1月7日(土) 12:10キックオフ 国立競技場 観衆:17250人 天候:晴
試合結果/鹿児島実業高等学校3−0岩手県立遠野高等学校(前1−0、後2ー0)
試合経過/[鹿児島実業]迫田(39分、50分)、永岩(67分)


取材・文/中倉一志

 3年連続で国立のピッチに登場する赤いユニフォーム。鹿児島実業は2連覇に向けて、PK戦によらない初の単独優勝を目指して、今年も順調に勝ち進んできた。「優勝するには14名から15名が必要」というのは松澤隆司総監督の言葉だが、今年は14、15名を揃えて迎えた全国の舞台。その視線は「優勝」の二文字をしっかりと捉えている。厳しい練習で身につけた、他を圧倒するパワーとスピード、そして精神的な逞しさが武器。今日もそのサッカーで遠野に対峙する。

 対する遠野は堅守速攻のチーム。1回戦の那覇西を皮切りに、強豪校との連戦をしぶとく勝ち進み、初の準決勝進出を果した。しかし、選手たちは満足はしていない。目指すは高校サッカーの頂点。今日も自慢の堅守で鹿児島実業に挑む。小島暢明、佐々木勝洋、千葉竜司の主力3選手を累積警告で欠く戦いは厳しいと言わざるを得ないが、それは全員の力をあわせてカバーする。「自分たちのサッカーをしていれば勝利が付いてくる」(菊池亮)。初の大舞台にもひるむ様子はない。



もののけも、遠野高校を後押しする。
 この日の遠野は、従来の布陣である4−4−2から3−6−1に変更。「真ん中の3人で相手の2トップを抑えること。比較的クロスを多用してくるチームなので、縦を切って中へ追い込んで、そこでボールを奪おうというプラン。カウンター狙いで勝負」(松田光弘監督)。両WBが低い位置に構える実質的な5バックで鹿児島実業の攻撃に備え、ワンチャンスを菊池の決定力にかける。

 しかし、さすがに主力3人が抜けた影響は大きい。「遠野高校はキャプテンをはじめ、3人が出られずに軸がなかったために、チーム全体のバランス、集中力がまとまりきれなかったのかなと。そういう助けもありました」(松澤監督)。そして、立ち上がりから鹿児島実業は猛攻を繰り出した。永岩、豊満が両サイドを切り裂き、中央では迫田がターゲットを務めて、栫がチャンスの匂いを嗅ぎつけてゴール前に飛び込む。持ち前パワーとスピードで遠野を圧倒、いくつもの決定機を作り上げていく。

 それでも遠野は、全員が体を張り、GK高橋がファインセーブを見せて、ギリギリのところでゴールを守る。そんな遠野の前に鹿児島実業に微妙な変化が表れる。シュートが次第にコースを外れるようになり、やがてシュートを打てなくなった。鹿児島実業にとっては嫌な流れだ。しかしロスタイム。鹿児島実業がついにゴールをこじ開けた。赤尾のシュートが空いてDFに当たって前線に残っていた迫田の足元に。微妙な位置だったが副審のフラッグは上がらない。そして、そのまま最終ラインを突破した迫田の唸る右足がゴールを捉えた。



健闘した遠野高校を、拍手で迎えるバックスタンド。
「攻める気持ちだけは忘れたくなかったのでカウンター狙いで勝負はしたかった。0−0でいってうまくカウンターが決まれば1−0でいきたい。PKは選手たちが自信を持っていますので、最終的にはPK戦でもというプランはありました」。試合後、松田監督はゲームプランを明かしたが、堅守速攻というチームカラーに加え、主力3選手の出場停止、対戦相手が圧倒的な攻撃力を誇る鹿児島実業ということを考えれば、勝つ道は限られていた。そういう意味では、このロスタイムに生まれた鹿児島実業のゴールで事実上の勝負は決した。

 それでも諦めずにゴールを目指す遠野に対し、鹿児島実業は引き気味に構えてゲームをコントロール。そして着実に得点を重ねていく。鹿児島実業の2点目は50分。遠野のクリアがペナルティエリア内でルーズになったところを迫田が頭で押し込む。そして3点目が生まれたのは67分。赤尾、豊満とつないでゴール前へ。こぼれたボールを右サイドからつめてきた永岩が押し込んだ。

 結局、試合は3−0で鹿児島実業の貫録勝ち。1回戦から並みいる強豪を倒し続けてきた遠野の高校選手権は準決勝で幕を閉じた。しかし、遠野は今大会で見せた自分たちのサッカーを最後まで貫き通した。先制点を奪われたことで一気に流れが鹿児島実業に傾いたとはいえ、それまでの流れは、どんなに窮地に追い込まれてもゴールを許さなかった遠野のもの。持てる力は出し切った。スタンドに足を運んだ高校サッカーファンは、そんな遠野に、鹿児島実業に劣らない拍手を送っていた。



スタンドに浮かび上がる「V」。2連覇まで後ひとつ
「1人、1人の強い気持ちが芽生えたことですね。それがひとつにまとまった。それと集中力が80分間途切れることなく、足が止まらなかったということ。自信になったと思います」。「今大会での収穫は」と報道陣から問われて、松田監督はそう答えた。その言葉通り、遠野の高校選手権は戦いを続けながら成長し続けた大会だったと言える。敗戦には悔しさが残るが、チームとして初のベスト4進出という結果は胸をはれるものだ。そして、今大会で得た喜びと悔しさがチームを大きくする糧になる。来年はグレードアップした遠野に会いたいものだ。

 さて、2連覇に王手をかけた鹿児島実業。様々なプレッシャーを受けながらも、危なげなく勝ち上がってきたのは、日頃の厳しいトレーニングがあったからのこそ。ここまでの勝ち上がりを見る限り、その力はひとつ上を行っているようにも見える。しかし、松澤総監督の表情は、いつもと変わらない。「勝ちたいのは山々ですけれどね。ただ分からないと思います。それがサッカーの面白さですから。うちも、対戦相手も最後の試合ですので、自分たちのサッカーをどれだけ出し切るかということが結果につながっていくのではないでしょうか」。自分たちのサッカーを貫き通したチームにサッカーの神様は微笑むことになる。







(鹿児島実業高等学校) (岩手県立遠野高等学校)
GK: 溝ノ上一志 GK: 高橋佳豊
DF: 本城宏紀 西岡謙太 赤井田侑志(33分/猿渡裕二) DF: 長田真 佐藤邦祥 伊藤輝将
MF: 永岩貞亮 三代将平(69分/田之畑利生) 赤尾公 豊満貴之 諏訪園良平 MF: 松尾健(21分/高橋大樹) 櫻井竜詩(砂子澤公) 薄井朋也 高橋陽介 橋場貴之 鈴木秀啓(菅原崇弘)
FW: 迫田亮介(62分/平田政志郎) 栫大嗣 FW: 菊池亮
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