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  私の中の日本代表 <前へ次へindexへ>
2002world.com特別企画「私の中の日本代表」
大味な試合も勝ち点3をゲット。日本、フランスに向けて好スタート。

プレイバック1998フランスW杯アジア最終予選 Bグループ第1戦 日本代表vs.ウズベキスタン代表

1997年9月7日(日)19:06キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆/54,328人
試合結果/日本代表6−3ウズベキスタン代表(前4−0、後2−3)
得点経過/[日本]三浦知(4分、23分)、中田(40分)、城(44分)、[ウズベキスタン]シャツィフ(56分)、[日本]三浦知(64分)、[ウズベキスタン]フョードルフ(69分)、シャツィフ(77分)、[日本]三浦知(80分)


文/中倉一志

 国立霞ヶ丘競技場。日本代表のホームグランドとして知られるこのスタジアムでは、過去、さまざまなドラマが繰り広げられてきた。メキシコ五輪出場権をかけて戦った韓国戦、木村和司の伝説のFKが炸裂したメキシコW杯予選、そして日本に革命を起こしたオフトジャパンが戦ったアメリカW杯予選、そのどれもが、まるで昨日のことのように鮮明に思い出される。

 しかし、これらの記憶は、メキシコ五輪最終予選を除いては、残念ながら悲劇として日本サッカー界の歴史に刻まれている。挑んでも、挑んでも、届かなかった夢、W杯。そして今日、日本サッカー界に新たな歴史を刻む戦いに、加茂日本が挑戦を開始する。

 午前10:00。国立競技場の各ゲートの前には、徹夜組を含み、既にいつもの倍以上のサポーターが集まっている。しかも、続々とやってくるサポーターたちは途切れることがない。国立競技場の周りを囲む道路の両側の歩道は、瞬く間に青いシャツを身につけたサポーターで溢れ、青山門から続く列は、お昼をすぎた頃には信濃町駅付近まで伸びている。

 スタジアムの周りを歩いてみる。代々木門に集まっているのは、日本代表オフィシャルサポーターのウルトラスの面々だ。一段と青いこの列では、今夜の応援のため、持ち寄った新聞や雑誌を切って紙ふぶきの用意をしている。千駄ヶ谷門も状況に変わりない。並びきれなくなった列は千駄ヶ谷駅方面に向かって伸びている。みんな午後7:00のキックオフを待ちきれずに、国立競技場に集まってきているのだ。

 午後4:00開門。ゴール裏の自由席はどんどん埋まっていく。開門を待って列を作っていたサポーターたちが入場し終えた頃には、自由席はほぼ満席。既に座るところはない。オーロラビジョンにスタンドの風景が映し出される。あちこちに様々なメッセージボードを持っているサポーターたちがいる。浦和レッズの名物サポーターとして有名なおばさんは(いつも最前列で扇子を振っている、あの方です)、必勝と書かれた金色の特大扇子を掲げて、今日もゴール裏最前列に陣取っている。



 午後5:50、突然ウルトラスが「都並コール」を開始する。双眼鏡を覗いてみると、青いシャツを着た都並がグランドに姿を現わしている。サポーターの持つビッグフラッグを受け取ると、グランドで大きく振り回している。その姿を見て、更に大きな声援が飛んでいる。誰もが今日の勝利を望んでいる。

 キックオフの時間が近づくにつれ、自分の気持ちが高揚してくるのが分かる。それは、周りのサポーターも同様のようで、普段のAマッチとは明らかに違う雰囲気がスタジアムを包み込んでいく。これが本番の雰囲気なのか。スタンドには、試合を観戦するという雰囲気はまるでない。今日は戦いに来ているのだ。立っている場所こそ違え、ピッチに立つ選手と一緒に戦うためにやって来たのだ。興奮のあまり鳥肌が立ってくるのが分かる。

 午後7:00、選手が入場してくる。地の底から沸き上がるような声援が起こる。先頭は井原、最後に入ってくるのはカズだ。そして、国歌斉唱。スタンドの全員が立ち上がる。つのだひろが歌う「君が代」にあわせて全員が大きな声で国歌を斉唱する。過去、何度となく代表の試合を見たが、全員が歌うなんて初めてのことだ。

「君が代」の歌声が心に染みる。これほどまでに自分が日本人であることを意識したのは初めてのことだ。国を代表して戦うとはこういうことなのか。興奮で身震いし、そしてなぜか目頭が熱くなってくる。「日本のために、選手と一緒に今日は戦うのだ」そんな気持ちが、自然に心の中に湧き上がってくる。イレブンがピッチの上に散っていく。いよいよ、加茂日本の最後の戦いが始まる。



 日本イレブンは凄まじいほどの気迫をみなぎらせている。ただ立っているだけでも、その気迫が感じられ、すべてのサッカー関係者の思いが乗り移っているかのようだ。昨年のアジア杯以降、精神力の弱さが指摘されていたのが、まるで嘘のようだ。気迫で勝る日本イレブン。その気迫にウズベキスタンは明らかに押されている。そして、ウズベキスタンが、たまらず井原を倒したところでホイッスル。PKだ。キッカーはカズ。スタジアムに緊張が走る。

 祈るような気持ちで見つめるサポーター。そんな中、カズが渾身の力を込めて蹴ったボールがウズベキスタンのゴールネットを揺らした。まだ前半の4分、日本が先制だ。沸き上がるスタジアム。みんなこの瞬間を待っていたのだ。

 この1点で前に出てくるようになったウズベキスタンは、日本を上回る個人技と、ボールタッチの少ないパス回しで攻撃を展開、対する日本は高い位置でボールを奪い、両サイドを生かしたカウンター気味の攻撃で反撃する。ワンボランチの山口の出来が、あまり良くないようだが、ここを全員守備でカバー。ウズベキスタンに決定的なチャンスを与えない。

 そして、ウズベキスタンの運動量に陰りが見えてきた23分、名波、相馬と早いパスをつないで、最後はカズがゴールを決めた。この後は、完全に日本のペース。日本のお家芸であるゾーンプレスからの早いサイド攻撃が面白いように決まり、再三チャンスを作り出す。40分に中田が見事なミドルシュートを決め、更にロスタイムには城がゴールを奪い4−0。予想を上回る出来で試合を決めた。

 スタジアム中に楽勝ムードが広がる中で始まった後半。誰もが大量得点を期待したが、前半とは一転して日本の様子がおかしい。動きが全く止まってしまい中盤の守備が崩壊、ウズベキスタンにやられっぱなしになってしまう。そして、とうとう56分に失点を喫した。嫌な展開だ。しかし、今日は抜群のキレを見せるカズがこのピンチを救う。64分にはハットトリックを達成するゴールを奪い再度引き離す。その後、中盤の守備が修正出来ない日本は、更に2点を失うが、80分に、またまたカズが自身4点目となるゴールを決めて、ウズベキスタンを突き放した。



 久しぶりに強い日本が帰ってきた。確かに、後半になって極端に運動量が落ち、そのため3失点を喫するという大きな課題を残したが、その反面、サイド攻撃が面白いように決まり、6点を奪うという成果もみえた試合であった。しかし、今日は課題よりも成果を評価したい。日本はブラジルではないのだ。どんな戦いをしようが必ず課題というものはある。ここまで来たら、物事はポジティブに考えるべきだろう。最終予選で最も大事なことは、まずは目の前の一戦を勝利すること。内容が悪ければ次の戦いに向かって修正すればよい。

 また、勝利が3、引分けは1という勝点制度においては、多少の失点は覚悟の上で、それを上回る得点力をもっているチームのほうが有利なのだ。そういう意味では、6点を奪った攻撃は、3失点を補ってあまりある成果と言えるだろう。それにしても今日のカズはキレていた。彼にとって最後となるであろうW杯挑戦にかける意気込みが感じられた。

 まずは大事な緒戦を勝利で終えた加茂日本。まだ7試合残っているとはいえ、確実にフランスへ向けて第一歩を踏み出した。あの「ドーハの悲劇」から4年。当時の代表選手だけでなく、サッカーに関わってきたすべての人々が待ち望んでいるW杯出場。それぞれの人が、それぞれの思いで臨む最終予選。今、すべての人の夢を乗せて、加茂日本は出発した。がんばれ、日本!!


※このレポートは、筆者がアマチュア時代に「online magazine 2002japan サポーター観戦記」に掲載されたものを加筆・修正したものです。
(日本代表) (ウズベキスタン代表)
GK: 川口能活 GK: ブガロ
DF: 秋田豊、井原正巳、小村徳男 DF: ダフレトフ、フョードルフ、ザハロフ(46分/シャイマルダノフ)、モモトフ
MF: 名良橋晃(68分/中西永輔)、山口素弘、相馬直樹、中田英寿、名波浩 MF: ビニコフ(64分/バザロフ)、マリファリエフ、レベデフ、ハサノフ(46分/シャリポフ)
FW: 城彰二(58分/西沢明訓→80分/本田泰人)、三浦知義 FW: シュクイリン、シャツィフ
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