topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
  私の中の日本代表 <前へ次へindexへ>
2002world.com特別企画「私の中の日本代表」
酷暑のアブダビで狙いどおりの勝ち点1
プレイバック1998フランスW杯アジア最終予選Bグループ 第2戦 UAE代表vs.日本代表

1997年9月19日(金)17:40キックオフ ザイードスタジアム(アブダビ) 観衆/40,000人
試合結果/UAE代表0−0日本代表


文/中倉一志

 フランスへ向けて好調なスタートを切った加茂日本の次なる相手はUAE。加茂日本が初めて経験する本格的なアウェイでの戦いだ。UAEは昨年のアジア杯で準優勝に輝いた中東の強豪。アジア杯終了後、更なる戦力アップを図るためクロアチアのイビッチ監督を解雇し、ブラジル人のサンドリ監督を招聘。最終ラインからロングボールを蹴り込む戦術から、中盤でつなぐサッカーへの脱皮を図っている。最終予選では日本・韓国とともにBグループの首位争いをするとみられているチームだ。

 しかし、先日衛星放送(NHK)で放送されていたカザフスタンとの対戦を見た限りでは、率直に言って日本が恐れるような相手ではないようだ。確かに、ロングボール一辺倒の戦術からは脱皮を図っていることが窺い知れるが、細かいところが雑で、前線へのパスやラストパスにミスが多い。また、中東の国らしく、チャンスと見ればミドルレンジ、ロングレンジからシュートを放ってくるのだが、その精度はお世辞にも高いとは言い難い。

 また戦術的な完成度におても、まだまだ低いと言いわざるを得ず、実力的には日本が上回っているといえるだろう。問題は、ザイードスタジアムを埋め尽くすであろうサポーターの存在と、日本とは比べ物にならないほどの暑さだ。特に40度を超すと言われる暑さは日本にとって最大の敵。いずれにせよ、ペース配分と選手交代がポイントになるに違いない。



 テレビのスイッチをいれると、ザイードスタジアムのピッチの上の日本イレブンの姿が映し出されている。各メディアで報道されていたように日本の調整は順調にいっているようで、みんな余裕のある表情だ。スタンドに目をやると、バックスタンド右側に日本サポーターたちの姿が映し出されている。日本から駆けつけた「ウルトラニッポン」のメンバーと現地の日本人会の人たちだ。彼らで固められた日本サポーターの数は約1000人。数の上ではUAEサポーターの足元にも及ばないが、きっと日本イレブンの力になってくれることだろう。

 試合開始が近づくにつれ、緊張感が高まってくる。日本が負けることはない、引分け以上の成績で十分だ。そう自分に言い聞かせても、いつも以上の緊張感が襲う。どうもテレビ観戦は、スタジアムでの観戦以上に緊張するようだ。ボールのないところの動きが見えないため、それが不安を掻き立てるのかもしれない。声を出して応援することが出来ず、固唾を飲んで画面を注視しなくてはならないからかもしれない。

 しかし、こうした緊張感を味わうことが出来るのはサポーターの特権。選手同様、この何とも言えないプレッシャーを楽しみながら、遠いアブダビで戦う加茂日本に応援を送ることにしよう。テレビの前で応援しているわれわれの気持ちは、きっとザイードスタジアムまで届くはずだ。



 日本の先発メンバーは第1戦と同じ。ただし、フォーメーションは、カズを2列目に下げた3−6−1。守りを固めて、少ないチャンスを物にしようという作戦のようだ。まず主導権を握ったのはUAE。日本のDFの裏のスペースにボールを配給し、日本の左サイドを中心に攻め込んでくる。しかし、このピンチを井原を中心とした集中力あるDFと川口の活躍で、何とかしのいだ日本は、15分に中田とカズで最初の決定機を作ると、一転してペースを握る。さあ、日本の反撃だ。

 プレスの位置をやや下げ気味にしてしっかりと守りを固める日本は、少ないチャンスを確実に攻撃に結び付けていく。熱さのせいでいつものような早い攻撃はなかなか仕掛けられないが、まずは狙い通りに試合は進んでいく。だがUAEも堅い守りで、日本に決定機を許さない。じりじりした時間帯が続く。どうやら、試合は我慢比べの様相を呈している。

 前半の25分を経過した頃から、どうも日本の動きがおかしくなる。次第に足が止まり、運動量が目にみえて落ちてきたのだ。徐々にUAEに押し込まれはじめる。頑張れ日本。いつも通りやれば負ける相手ではないのだ。この願いが通じたのか、UAEの攻撃を何とかしのいだ日本は、再び反撃を開始。UAEのGKのファインセーブに防がれたものの、38分には、右サイドを完全に崩して中田が決定的なシュートを放ちUAEゴールを襲う。

 これを機に再び試合は拮抗した展開になり、試合は無得点のまま後半を迎えることになった。体力面での不安が顔を覗かせた日本であったが、前半は思惑通りの展開。一進一退の攻防ではあるが、試合は日本がコントロールしている。引分け以上の成績は間違いない。しかし、問題はスタミナだ。日本の後半の動きは大丈夫だろうか。一抹の不安が頭の中をよぎる。



 しかし、その不安は杞憂に終わった。ハーフタイムを終えてピッチに出てきた日本は、再び元気なプレーを再開。開始直後にCKのチャンスを掴む。蹴りだされたボールは、きれいな弧を描いてゴール前へ。すかさず小村が飛び込む。完全にフリーになっている。よし、先制点だ。そう思った瞬間、ボールはわずかに小村の頭をそれてゴールラインを割ってしまった。だが、ペースは完全に日本だ。

 その後も試合をコントロールし、日本は何度もチャンスを作りだす。後半勝負と公言していたサンドリ監督は、60分に切り札バヒッド・サードを投入し反撃体制に入るが、加茂監督もすかさず本田を投入。バヒッド・サードのマンマークにつけて反撃を食い止める。この辺りの駆け引きもなかなか見ごたえがある。

 そして30分。中田の蹴ったFKがゴール前に上がる。これをフリーで井原がヘッド。ボールの軌道は確実にゴールを捉えている。今度こそゴールだ。その時、ゴール前につめていた小村が思わず足を出す。しかし、小村はオフサイドポジションだ。「さわるな!!」思わずテレビの前で叫んだが、その叫びは届かない。判定はやはりオフサイド。ゴールは認められなかった。もったいない。しかし、流れの中のプレーだ。小村を攻めることは出来ない。

 この後、UAEはモハメド・アリを投入し最後の反撃に移る。さすがの日本も運動量が完全に落ち、カズが前線で孤立するようになってしまう。それに対してアリはフリーでプレーし、UAEが反撃に移ってくる。ここまで来たら、後は確実に引き分けるだけ。動きが鈍ったとはいえ、DFの集中力は最後まで途切れることなく、日本はアウェイでの緒戦を確実に引き分け、貴重な勝ち点を獲得した。



 じりじりとした、我慢比べのような戦いであったが、日本は狙い通りのプレーが出来たのではないだろうか。最初の15分を除けば試合は日本がコントロールしていたし、不安視されていた体力面の問題も、注意深いペース配分で何とか乗り越えていた。さすがに最後は動けなくなっていたが、ホームのUAEの選手の運動量も落ちていたことを考えれば、その位はやむを得ないことだろう。

 そして、何より安定した守備を見せたDF陣の活躍が最大の収穫だ。ともあれ今日の一戦は、大満足とは言えないまでも十分に成果をあげたと言える。後はホームでの対戦で確実に勝利を収めればよいのだ。勝ち点1とはいえ、また一歩フランスに近づいた加茂日本。彼らの戦い振りは、一次予選までとは打って変わって、自信に溢れて見える。最後の戦いの場を迎えて、精神的にも肉体的にも、一回り成長しているようだ。

 それに、ひととおり各国の試合を観戦した結果、どうやら日本がわずかではあるが他の4カ国をリードしているような印象を受ける。普段通りに戦っていけば、必ずフランス切符は手に入るはずだ。フランスまで後6試合。がんばれ日本。


※このレポートは、筆者がアマチュア時代に「online magazine 2002japan サポーター観戦記」に掲載されたものを加筆・修正したものです。
(UAE代表) (日本代表)
GK: ムフシン・ムサバハー GK: 川口能活
DF: ハッサン・サハイル、モハメド・オバイド、イスマイル・ラシド DF: 秋田豊、井原正巳、小村徳男
MF: アリ・ハッサン、アーメド・イブラヒム、ムンテル・アリ(60分/バヒート・サード)、ハッサン・サイード、アデル・モハメド MF: 名良橋晃(39分/中西永輔)、山口素弘、名波浩、相馬直樹、中田英寿(77分/森島寛晃)
FW: ズハイル・バヒート(75分/モハメド・アリ)、ジャシム・アルドキ(ハミス・サード) FW: 城彰二(69分/本田泰人)、三浦知義
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送