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  私の中の日本代表 <前へ次へindexへ>
2002world.com特別企画「私の中の日本代表」
韓国に痛恨の逆転負け!しかし、戦いはこれから。
プレイバック1998フランスW杯アジア最終予選Bグループ 第3戦 日本代表vs.韓国代表

1997年9月28日(日) 国立霞ヶ丘競技場 観衆/56,704人
試合結果/日本代表1−2韓国代表(前0−0、後1−2)
得点経過/[日本]山口(67分)、[韓国]徐正源(84分)、李敏成(87分)


文/中倉一志

 韓国ゴール前でボールを持った高正云に山口が猛烈なプレスをかけボールを奪う。山口は、そのままペナルティエリアへ。しかしシュートが打てない。わずかなボールコントロールミスでボールが足元に入ってしまったのだ。だめか。次の瞬間、ボールはフワリと浮き上がってゴールへ向かって飛んでいく。あわてて戻るGK。息を呑んで見つめる50,000人の日本サポーター。日本中のサポーターの思いを乗せて、ボールはゆっくりと、しかし確実にゴール吸い込まれていく。ゴール!!加茂日本の先制点だ。狂喜乱舞する日本サポーター。意味にならない言葉を思いきり叫びながら喜びを表している。

 日本ベンチも全員が飛び出して抱き合って喜んでいる。韓国の固いDFをなかなか崩せなかった日本が遂に先制点を奪ったのだ。その後も更に攻め立てる日本。試合のリズムは完全に日本のものだ。今こそ日本の強さを見せるのだ。日本こそがアジアのNo.1であることを示すのだ。この時、スタジアムに集まった50,000人の日本サポーター、いや日本中のサッカーファンは日本の勝利を信じて疑わなかったに違いない。しかし、サッカーの神様は、またも日本に試練の場を与えたのだった。まさかの逆転負け。後7分。日本は、またも韓国の厚い壁の前に敗れ去ってしまった。



 今までとは、すべてが違うはずだった。4年前のJリーグ開幕が選手たちに意識革命をもたらした。続々とやってくる大物外国籍選手たちと対峙することで、世界のサッカーを直接体験することが出来た。FIFAランキングも着実に上昇していった。そして、わずか4年の間に、日本はアジアの強豪として認知されていった。世界に比べれば未熟であるとはいえ、技術・戦術ともにアジアのトップであることは周知の事実だ。サポーターの気持ちにも変化が見えた。過去の韓国戦は応援で後押ししようという気持ちが強かったが、今度ばかりは、日本の力を見せつけよう、そんな気持ちが強かったに違いない。

 韓国も違っていた。車範根監督は強気の発言と裏腹に、必要以上に日本を意識していた。5月の日韓戦以降、日本代表の試合には必ず姿を見せた車範根。非公開練習や記者会見の中止等、日本を警戒していることがありありと感じられた。韓国のマスコミも今まで以上に日本の情報に敏感になっていた。その姿からは、韓国もまた日本の実力を認めていたことが窺えた。韓国は、今までにない厳しい戦いになることを予想し、危機感さえ感じていた。長い日韓戦の歴史の中で、韓国が戦う前から「負ける可能性もある」ことを意識した初めて試合だったのかもしれない。

 それは韓国の戦い方にも現われていた。韓国にとってアウェイの地であるとは言っても、それは、あまりにもデフェンシブな戦い方だった。全員が自陣にひき、マイボールはDFラインでゆっくり回して、なかなか前へ出てこない。そして日本が韓国のゾーンに入り込んでくると、激しいマンマークで攻撃を寸断する。しかし、ボールを奪っても攻撃を仕掛けない。再びゆっくりとボールを回して日本の様子を窺い、時折、カウンター気味の攻撃を仕掛けてくる。まるで、アジア杯で中東諸国が日本に対してとった戦い方のようだ。

 当然、日本は圧倒的にボールをキープする。しかし、韓国の激しいマンマークで攻撃を寸断され、がっちりと守りを固められてはいい形で攻撃をすることが出来ない。ポイントと見られていた日本の右サイドも、目の前にあいた大きなスペースを中西が使うことが出来ず、日本は次第に左サイドへ押し込められていく。嫌な展開だ。結局、ボールをキープしながらも攻撃の形を作れない日本は、得点を奪えず、勝負は後半へ。してやったりの車範根監督。苦虫をかみつぶしたような加茂監督。前半は、韓国の思惑通りの展開であった。



 後半に入ると、日本は精彩を欠く中西に代えて名良橋を投入。怪我をおしての出場であったが、名良橋の攻撃参加は日本のサッカーに変化を与え、次第に日本がペースを掴みはじめた。初代表のロペスが前線で攻撃のアクセントになり、パスをつないで両サイドを広く使う日本の攻撃パターンが機能しはじめたのだ。高まる期待感。そして65分、日本に待望の先制点が生まれた。

 更に追加点を狙って攻撃を仕掛ける日本。2点目もいける。そんな自信が選手たちから伝わってくる。対する韓国はうつむきかげんで足が止まっている。今まで幾度となく見せた怒涛の反撃を見せる気配もない。日本が韓国に対して技術・戦術のみならず、精神的にも上回った瞬間だ。日本サポーターは、この瞬間を何年も待ち続けていた。しかしこの後、日本は取り返しのつかないミスを犯した。

 問題は後半の28分に起こった。残りは15分少々。スタジアムに駆けつけた誰もが2点目を期待していた。流れからいっても、その可能性は十分にあると思われた。しかし、ベンチのとった采配は、前線で攻撃のアクセントを作っていた呂比須に代わって秋田を投入し、1点を守り切るというものだった。日本が攻め、韓国が動揺している時間帯であったにもかかわらず、自ら攻撃を放棄するという愚挙は、日本イレブンに逃げの気持ちを与え、韓国イレブンには再び活力を与えることになったのだ。

 日本のプレッシャーがなくなった韓国は、体力とスピードにまかせて怒涛の攻撃を開始する。ゴール前に釘付けになる日本。1点を守り切るどころの騒ぎではない。このままでは逆転される。サポーターも最後の力を振り絞って、ありったけの声援を送る。しかし、一度失った、しかも自ら放棄したリズムは決して戻ってくることはなかった。残り7分間で2失点を喫し、日本はみすみす勝利を逃したのだった。



 日本に守り切れるだけの集中力があったら、あるいはマークのずれを修正出来ていれば、この采配も結果には影響を与えなかったかもしれない。しかし、自分たちのリズムを自ら放棄し、韓国に反撃のチャンスを与えてしまった原因は、紛れもなく守備を固めようとしたベンチの采配にある。采配ミスは明らかだ。「精神力の差が試合を決める」と語っていた両監督であったが、1点をリードした瞬間、日本ベンチは逃げることを選択した。強い精神力でぶつかることの重要性を認識しながら、加茂日本は逃げることを選択したのだ。もう一歩で、韓国を叩き潰せるところにきていながら・・・。

 しかし、これもW杯の怖さなのだ。「ドーハの経験が生きていない」と指摘する声もあるが、生きるか死ぬかの戦いの中で、平常心を保ち冷静に対応できるほど、日本は修羅場を踏んでいない。その経験の無さからくる欠点を指摘したとしても、それは空しい議論にしかならない。

 日本はブラジルではないのだ。選手も監督も、そしてスタッフも、みんな欠点を持っている。大切なことは、彼らが日本の代表として選ばれた以上、彼らの長所も欠点も、すべて受け入れて見守ることだ。そして、彼らを信じることだ。単なるサポーターにすぎない我々は、ピッチに立って一緒に戦うことは出来ない。それならば、いつ、どんな時でも精一杯彼らを応援しよう。我々に出来ることは、それしかない。

 まだ5試合もある。終わったわけではない。もう待つのはやめよう。我々の力で、サッカーの神様を振り向かせて見せよう。チャンスはまだある。がんばれ、日本!!


※このレポートは、筆者がアマチュア時代に「online magazine 2002japan サポーター観戦記」に掲載されたものを加筆・修正したものです。
(日本代表) (韓国代表)
GK: 川口能活 GK: キム・ビョンジ
DF: 中西英輔(46分/名良橋晃)、井原正巳、小村徳男、相馬直樹 DF: チェ・ヨンイル、ホン・ミョンボ、イ・ミンソン
MF: 本田泰人(87分/西沢明訓)、山口素弘、中田英寿、名波浩 MF: イ・ギヒョン、ユ・サンチョル、チャン・ヒョンソク(58分/チェ・ソンヨン)、ハ・ソッチュ、イ・サンユン(65分/ソ・ジョンウォン)、コ・ジョンウォン(72分/キム・デイ)
FW: 呂比須ワグナー(73分/秋田豊)、三浦知義 FW: チェ・ヨンス
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