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  私の中の日本代表 <前へ次へindexへ>
2002world.com特別企画「私の中の日本代表」
戦えない日本代表。またもや終了間際で勝利を逃す。
プレイバック1998フランスW杯アジア最終予選Bグループ 第4戦 カザフスタンvs.日本代表

1997年10月4日(土) アルマトイ・セントラルスタジアム 観衆/10,000人
試合結果/カザフスタン1−1日本代表(前0−1、後1−0)
得点経過/[日本]秋田(22分)、[カザフスタン]ズバレフ(89分)


文/中倉一志

 朝から身体が疲れている。無理もない。何しろこの一週間は私にとって散々の一週間だったのだ。日本代表は韓国に逆転負けを喫し、水曜日に観戦した浦和vs.川崎の一戦は「金返せ」と言いたくなるほどの見るに値しない試合だった。おまけに応援していた鹿島は、清水に敗れて年間完全制覇の夢を断たれた。

 日本代表や、各国の試合はもちろん、Jリーグ、サテライト、更には天皇杯、JFL、高校、ユース、大学等々、およそサッカーという名前のつくものならば片っ端から観戦している私であるが、これほどまでに自分の思惑が外れたことは過去に一度もない。どうやら、自分の思い通りにならないことが続くと人間は疲れるように出来ているらしい。

 しかし、この疲れも今日までのこと。今日のJリーグ最終戦では、鹿島がホーム最終戦を勝利で飾ってくれるだろうし、何といっても注目の加茂日本はカザフスタンに大勝し、最終予選後半に向けて勢いをつけてくれるはずだ。今晩は上手い酒が飲める。そう信じて、いつものように7:55発「鹿島神宮行き」のバスに乗り込んだ。少なくとも、この時、この疲れが更に倍増することになろうとは夢にも思っていなかった。



 鹿島は最終戦を勝利で飾ることは出来なかった。私をめぐる悪い流れはまだ続いているらしい。しかし、そんなことは日本サッカー界にとってはたいした問題ではない。最大の関心事はカザフスタンvs.日本戦。韓国戦のショックを吹き飛ばすような痛快な試合をしてくれるはずだ。鹿島イレブンの挨拶もそこそこに、常宿のホテルに直行する。ホテルのロビーでBS放送を見るためだ。オーナーの奥さんと近所の人たちと一緒にテレビのチャンネルをひねる。今日はカザフスタンに快勝する強い日本が見られるはずだ。だが、テレビのブラウン管を通して流れてくる映像は、ショッキングなものだった。

 日本のフォーメーションは3−5−2。残り5試合に全勝してBグループ1位の座を目指す日本は、サイド攻撃を軸に攻撃的にいくはずだった。しかし、DFラインは極端に下がり、しかも、両ウィングバックの相馬と名良橋がDFラインに吸収されがちで、実質的には5−3−2のディフェンシブな布陣になっている。そのため、中盤で相手ボールに対してプレスがかけられず、カザフスタンに自由にボールを放り込まれる始末だ。

 カザフスタンの攻撃は、ハーフウェイラインの手前から、長身のズバレフにロングボールをあわせるだけなのだが、こんな単調な攻撃に対してオフサイド一つ取れない。秋田がハードマークでズバレフを押え込んではいるものの、なんとも危なっかしいディフェンスだ。

 DFラインが下がりすぎているため、前線と最終ラインが間延びしてしまった日本は、攻撃面においても、お家芸の組織プレーを展開することが出来ない。広い中盤を3人でカバーしているため、選手同士の距離が遠いことが原因だ。おまけに、名波や中田がボールキープしても、両ウィングバックの押し上げが無いためサイドへ展開出来ず攻撃にスピードが生まれない。フリーになりながらも、パスの受け手を探してボールをキープする場面がやたらと目立っている。

 今日は大量得点を狙って攻撃的にいくはずだった。しかし、得点を狙いにいく気配は感じられず、ただひたすら失点を喫するのを恐れているような感じだ。なんでこんな消極的な試合になるのだろう。22分には、CKから秋田が頭であわせて先制点を奪ったが流れは変わらない。何がそんなに恐いのだろう。どうした日本。



 後半に入っても日本は同じ事の繰り返しだ。いや前半よりも更に下がっているかもしれない。中盤でいいようにカザフスタンにキープされ、守備にかける時間が多くなってくる。ロングボールの攻撃に加え、両サイドをドリブルで突破してくるようになったカザフスタンだが、これを止めにいっては次々にかわされていく。ペースは完全に相手の物だ。怖がっているばかりで、積極的に攻撃に出ることをしようとしなければ、押し込まれるのは当たり前。予選前から指摘されていた精神面の弱さが、ここへ来て目立っている。

 それでもチャンスはあった。日本が何もやらなくても相手は格下のチーム。ひょんなことからチャンスが度々日本にやってくる。しかし、FW陣が放つシュートは、どこか自信無げで、ことごとくゴールを外れていく。やはり、ファイトしないチームに勝利の女神は微笑まないということだろう。どうしても追加点を奪えない日本は、残り5分となったところで、やむなく守備固めに入る。本田を投入したのだ。

 なんとかボールをキープして逃げ切ろうとする加茂日本。時計はロスタイム。この時、カズが突然攻撃を仕掛けた。脳裏に4年前の悪夢がよみがえる。案の定、ボールを奪われた日本は、カザフスタンの反撃に遭う。ゴール前でうろたえる日本。人数は揃っている。しかしマークがバラバラだ。そして、ズバレフが放ったシュートは川口の手をかすめ、無情にも日本のゴールへ転がり込んだ。まさかの引分け。そして、試合開始から4時間半後、加茂監督は更迭された。



 引き分けるべくして引き分けた。あるいは負けなくてよかったというべきか。それほどひどい内容のゲームだった。ブラウン管の中で戦っていた日本は、世界の強豪を次々と破り、FIFAランキング20位以内を保っていた、あの強い日本とは別のチームだった。勝利を目指すよりも、負けることを恐れている。そんな臆病なチームがブラウン管の中にいた。

 この結果を受けて、各メディアは加茂批判・連盟首脳陣批判を繰り返している。しかし、いまは犯人探しをしている時期ではない。現状の力を最大限に発揮してフランス行きの切符を手に入れることが最優先だ。「ドーハの悲劇の教訓が生かされていない」「意志の統一が出来ていない」等々の声が選手の間から聞こえてくるが、そんなことは、言葉や態度でいくらでも伝えることは出来るはず。全員が当事者意識を持って一丸となって取り組めば、フランス行きは決して夢ではない。

 まだ半分が終わったばかり。4連勝すれば2位は確定するし、韓国の結果によっては1位の可能性だってあるのだ。今からでも十分間に合う。もう一度、自分たちの目的を確認しあって、一つになって夢に向かって進んで欲しい。自力でW杯に出場出来るチャンスは、今を逃せば8年後までやって来ないのだ。



 ネット上でも様々な議論が交わされている。韓国戦に続く残念な結果に対し、さすがに悲観的な意見や、元気のない意見が増えたように思う。しかし、あきらめるのは早すぎないか。まだ4試合もある。可能性は大いに残されているのだ。過ぎ去ってしまったことを悲観ばかりしていても、何も解決はしない。出来ないことを高望みしても、それは「絵に描いた餅」でしかない。

 今出来ることを最大限に発揮すること、それが我々に残された道なのだ。批判や課題の分析は結果が出てからでも遅くない。今は目の前の問題を一つずつ解決していくこと、すなわち次の一戦に勝利することが最優先の課題なのだ。

 そして、選手でも代表スタッフでもない我々は、ピッチの上に立って彼らと共に戦うことは出来ない。出来ることといえば、彼らの背中に向かって精一杯応援をすることだけだ。ならば、彼らを信じて、力の限り応援を送ろう。現地で応援する人も、テレビの前で応援する人も、彼らの勝利を信じて最後まで応援しよう。その願いは必ず届くはず。あの青空のむこうには、必ずフランスが待っている。がんばれ日本!!がんばれサポーター!!


※このレポートは、筆者がアマチュア時代に「online magazine 2002japan サポーター観戦記」に掲載されたものを加筆・修正したものです。
(カザフスタン代表) (日本代表)
GK: ボスコボイニコフ GK: 川口能活
DF: ポポフ(62分/エフテエフ)、オシポフ、スパリシェフ、サドゥフ、ファミルツェフ DF: 秋田豊、井原正巳、小村徳男
MF: バルティエフ、コトフ(71分/スベシニコフ)、ティモフェエフ MF: 名良橋晃、山口素弘、相馬直樹、中田英寿、名波浩(本田泰人)
FW: リトビネンコ(58分/ロギノフ)、ズバレフ FW: 三浦知義、呂比須ワグナー
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