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  私の中の日本代表 <前へ次へindexへ>
2002world.com特別企画「私の中の日本代表」
辿り着いた第三代表決定戦。フランスまで後ひとつ。
プレイバック1998フランスW杯アジア最終予選Bグループ 第8戦 日本代表vs.カザフスタン代表

1997年11月8日(土)19:06キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆/56,032人
試合結果/日本代表5−1カザフスタン代表(前3−0、後2−1)
得点経過/[日本]秋田(12分)、中田(16分)、中山(44分)、井原(67分)、[カザフスタン]エフテエフ(73分)、[日本]高木(79分)


文/中倉一志

 2カ月にわたって繰り広げられてきたW杯アジア最終予選も、日本にとって、いよいよ今日が最終戦。岡田ジャパンは、ここ千駄ヶ谷の国立霞ヶ丘競技場に、第三代表決定戦への出場権を賭けて、カザフスタンを迎え撃つ。今日の試合に勝利すれば、明日のUAEvs.韓国戦の結果にかかわらず、Bグループ2位が確定する。一時は自力2位の道が閉ざされ断崖絶壁に立たされた日本だが、アウェイの韓国戦でようやく自分たちのサッカーを取り戻し、遂にここまでやってきた。やっと掴んだ自力2位のチャンス。何としてもすっきりと勝利し、第三代表決定戦に向けて勢いをつけなければならない大事な試合だ。

 一次予選から今日までを振り返ってみると、風は日本にとって終止追い風だった。チームとしての調子を落とし、どん底の状態にあった一次予選オマーンラウンドでは、唯一の難敵と思われたオマーンが、戦う前から勝利を放棄し、U-20のメンバーを中心としたチームで臨んできた。最終予選の日程も、初戦と最終戦をホームで戦えるというスケジュールに恵まれた。第3節で韓国にまさかの逆転負けを喫した後、自分たちのサッカーを見失い、勝てる試合を逃し続けていた時も、UAEが勝ち点を伸ばせず、2位以内の可能性は、わずかとはいえ決して消えることはなかった。そんな日本にとって、今日が最後の、そして最大のチャンス。よみがえった「強い日本」は、この一戦にすべてを賭けて臨んでいる。



 すべてを賭けているのはサポーターも同じだ。ソウルでの韓国戦で12番目の選手としての本領を発揮した真のサポーターたちは、今日も国立競技場周辺に長い列を作っている。お馴染みになった徹夜組みをはじめ、始発電車が動き出すのを合図に、続々と駆けつけて来る。あちこちで韓国戦以来の再開の挨拶をかわし、今日の試合の重要性について話し合っている。韓国戦で自信を取り戻した代表チーム同様、彼らの表情には迷いはない。おごりも気負いもなく、自分たちの持てるすべてを発揮して代表をサポートしよう、彼らの姿からは、そんな気持ちが伝わって来る。

 東京での韓国戦の後、サッカー協会をはじめ、代表チームも、メディアも、サポーターも、様々な出来事に翻弄された。この2カ月間は、それぞれの人間にとって長くつらい日々だった。しかし、そんな中にあって、代表を信じ続け、W杯の夢を追い続けたサポーターたちは、信じること、夢を諦めないことの本当の大切さを知ったに違いない。国立競技場の上を青く染める空と同様に、晴れ晴れと一点の曇りもない表情は、この2カ月間で、彼らが本当のサポーターに成長したことを物語っていた。

 午後7:00、56,000人を超える大観衆に埋め尽くされた国立競技場に日本イレブンが入場して来る。今日も日本は4−4−2の布陣。出場停止のカズ、呂比須の代わって2トップを勤めるのは、城と中山。最終ラインを固めるのは、井原、秋田、名良橋、相馬の4人。中盤を形成するのは、中田、名波、北沢、山口。そしてゴールマウスは不動のGK川口能活が守る。彼らの表情からは緊張の色は窺えない。普通に戦えばW杯にいける。無言のうちにそう語っているかのようだ。韓国戦で自信を取り戻した力強い男達の姿がそこにはあった。いつものように国立競技場に響き渡る「君が代」の大合唱。そして、最終戦の開始を告げるホイッスルが鳴り響いた。



 いまや完全に自信を取り戻し、悲願のW杯出場の夢に向けて一直線に向かおうとしている日本と、既にW杯出場の道が閉ざされ、半分観光気分のカザフスタンとでは、モチベーションの違いは明らかだった。コンパクトなラインを形成し、中盤で激しいプレスをかける日本は開始直後から決定的なチャンスを次から次へと作り出し、カザフスタンゴールを襲う。3分、4分、5分、6分、7分、そして10分と完全にゴールと思われるシーンが続いていく。気合の入りすぎからか、これらのチャンスを決めきれない日本であるが、選手もサポーターも慌てない。その都度、気持ちを入れ直し次のチャンスを狙う。

 そして12分。左サイドの崩しからFKを得た日本は、中田の蹴り込んだボールに秋田が飛び込んで先制点を奪う。更に16分には、名波・相馬のコンビで左サイドを突破し、最後は相馬のセンタリングを、中田がダイレクトボレーで蹴り込んで追加点を奪った。そして、44分には久しぶりに代表復帰した中山が、彼らしいダイナミックな飛び込みで3点目を奪って早々と勝負を決めた。自分たちのペースで試合を進める日本は、72分に直接FKを決められて完封勝利こそ逃したものの、後半も着実に追加点を奪い、結局5−1の大差でカザフスタンを一蹴した。



 国立競技場で戦っていた日本は、韓国戦と同じく強い日本だった。コンパクトに形成されたラインと、中盤のプレスは、カザフスタンのロングボールを完全に封じ込め、日本から同点ゴールを奪ったズバレフに全く仕事をさせなかった。ボールを奪ってからの両サイドを使った速い攻めは、カザフスタン守備陣を翻弄した。最終予選で精彩を欠いていた名波・相馬の左サイドのコンビも完全復活し、今日も日本の攻撃の要として十分すぎるほど機能していた。そして、相手DFの裏側に飛び出す中山の鋭い動きは、見るものに迫力を感じさせた。

 課題がなかったわけではない。試合開始直後の度重なる決定的なチャンスを決めきれずゴールを逃し続けたり、セーフティリードしているにもかかわらず、不注意なパスミスや、不用意に攻めたボールをカットされてカウンター攻撃を食らう場面もあった。しかし、その都度、集中力のあるDFで相手の攻撃を防ぎ、決定的なチャンスをつくらせなかった。また、2得点を奪った後、リズムが崩れかけた時間があったが、落ち着いてボールをキープし、自分たちのリズムを取り戻すという余裕も感じられた。

 特に試合を決定付けた3点目は、ゆっくりとボールを回し、相手の守備に穴があいた所をすかさず突いて得たチャンスからゴールを奪ったもので、長く苦しい戦いの中で成長した日本の姿が窺い知れた。



 遂に第三代表決定戦への出場権を得た日本。しかし、日本イレブンの表情には満面の笑みはなかった。彼らは、次の戦いが一番高いハードルであることを知っている。韓国戦の勝利も、自力で2位の座を獲得した今日の試合も、次の戦いを勝利しなければ、何にもならないことを知っている。大切なのはフランス行きの切符を掴み取ることだ。目の前の勝利に一喜一憂せず、最後の勝負をしっかりと見据えている。笑うのは、第三代表決定戦が終わってからで良い。そんな彼らの表情は逞しく、そして、自信に満ちていた。

 次の相手は、サウジかイラン。決して簡単な相手ではない。しかし、いまや自分たちのサッカーを取り戻し、勝ってW杯出場を獲得すること以外に、何の雑念も抱かない日本にとっては、どちらが来ても同じこと。彼らはジョホールバルで必ずやフランス行きを決めてくれるに違いない。その時、和司の伝説のFKも、ドーハの悲劇も、本当の意味で過去のものとなる。そしてその時、日本の歴史が変わるのだ。

 フランスまで、あと1勝。サッカーに関わる人たちすべての夢であるW杯出場。それが実現する瞬間が、まもなくやって来る。最後の時は来た。がんばれ日本。


※このレポートは、筆者がアマチュア時代に「online magazine 2002japan サポーター観戦記」に掲載されたものを加筆・修正したものです。
(日本代表) (カザフスタン代表)
GK: 川口能活 GK: ボスコボイニコフ
DF: 名良橋晃(64分/中西永輔)、秋田豊 井原正巳、相馬直樹 DF: ポポフ(62分/エフテエフ)、オシポフ、スパリシェフ、サドゥフ、ファミルツェフ
MF: 山口素弘、中田英寿、名波浩 北沢豪(83分/森島寛晃) MF: バルティエフ、コトフ(71分/スベシニコフ)、ティモフェエフ
FW: 中山雅史(64分/高木琢也)、城彰二 FW: リトビネンコ(58分/ロギノフ)、ズバレフ
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