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 黄金週間のリスタート 04/05/17 (月) <前へ次へindexへ>
球技場のゲームは、内野のエリアが土の状態だった。
黄金週間のリスタート(3)


取材・文/西森彰

 SAITAMAフェスティバは2日目の5試合を見学し、第6試合の大原学園JaSRAと日本体育大学のゲームに心を残しつつ、関西に移動した。翌5月4日(火)、5日(水)の2日間は三重県上野市で行なわれた、忍びの里レディーストーナメント取材のためだ。

 東のSAITAMAフェスティバルと同じく、この忍びの里レディーストーナメントも西日本を中心に12のクラブが参戦し、上野市長杯を競う。3グループ4チームに分けられた東の大会とは違い、こちらは3チームずつ4グループに分けられた。そして各グループごとにTASAKIペルーレFC、伊賀FCくノ一、スペランツァF.C.高槻、宝塚バニーズレディースSCと、今シーズンL1で戦う4クラブが振り分けられている。どのクラブも3日間でグループリーグ、順位決定トーナメントの4試合ずつ、そしてL1クラブとの対戦が消化できる貴重な場である。

 L・リーグの各チームは、多くの選手を起用してチーム力の底上げを図り、胸を借りるその他のクラブや学校は、L・リーグに全力で立ち向かって己の力を量る。私が見られなかった初日は、昨年の高校女子サッカー選手権準優勝の常盤木学園がスペランツァFC高槻と2対3、福岡女学院FCアンクラスが伊賀FCくノ一と1対2の好ゲームを繰り広げた。



 大会2日目の朝は小雨混じりの蒸し暑い天気の中、午前10時から、グループリーグの最終戦が4会場同時に行なわれた。どれにしようかしばらく悩んだ末に、L1の高槻とL2の岡山湯郷BelleというL・リーグ所属クラブ同士のゲームを選んだ。

 伊賀上野陸上競技場の横に併設された野球場のスタンドをグルリと回っていると、今泉守正・U-19日本女子代表監督が雨の中で観戦していた。SAITAMAフェスティバルで上田栄治・日本女子代表監督に西下の有無を尋ねると「向こう(忍びの里レディーストーナメント)には行きません。今泉さんに任せて、私はこっちを見ます」。このふたりの情報交換・役割分担は本当に連携が取れている。

 今泉監督は、アテネ五輪予選期間、広島会場で北朝鮮女子代表の直前スカウティングを行なった。そして、事前に手に入れていた北朝鮮についての情報と照らし合わせ、さらに詳細な情報を付け加えて、東京の日本女子代表スタッフに連絡した。あの歴史的な勝利をもたらした陰の立役者である。「完璧な情報入手でしたね」と話しかけると「いや、それをきっちりと活かしきられた上田監督の采配が見事だっただけです」と謙虚な答えが返ってきた。高槻、岡山湯郷の若手は、U-19のアジア女子選手権連覇を睨む今泉監督にアピールしたいところだ。



 両チームともに常盤木学園を退けているが、得失点差で劣る高槻はこのゲームに勝たなければ、大会優勝を争う1位トーナメントに参加できない。内野グラウンドの土のエリアが手前の一角を占めている野球場で、序盤、イニシアチブを握っていたのは岡山湯郷。勝利が絶対条件の高槻は防戦一方で、なかなか活路を見出せない。

 しかし、岡山湯郷は押し気味にゲームを進めながらも、ゴールが遠い。宮間あやのシュートがゴールバーを直撃するなど、運にも見放された。一方の高槻は、DFの裏への放り込みが多かったのだが、これを攻撃陣が確実にキープして、得点を重ねる。ゲーム終了時の3対0というスコア程、試合内容に差は無いのだが、高槻が決定力の差を見せつけた形だった。

 雨の中、応援を続けたファンに挨拶する高槻の選手たちの中に、1週間前の国立霞ヶ丘陸上競技場から戦いの場所を移した下小鶴綾の姿もあった。

「うーん…。こうなって、こうなって、こうなって、ああなった感じですね」

 下小鶴は出迎えた知人に両手でコロコロと転がっていく自分を身振りで表しながら、スピード出世のニュアンスを伝えた。高槻が4バックを基本に戦うチームだったこと。上田監督が、高槻を離れていた時期もその存在を気にしてくれていたこと。追い風が吹いたことは確かだ。しかし、わらしべを持って合宿に参加しただけでは、代表のレギュラーまで上り詰められる訳がない。彼女は自らの力を十分に発揮することで、幸運の女神の前髪をしっかりと握ったのだ。



大阪女子体大・鈴木綾のシュートは、惜しくもニアポストを直撃した。
林田美由紀(12番・向こう側)はルネサンスにL・リーグ初勝利を
もたらすか?
 第2試合は陸上競技場の方へ移り、ルネサンス熊本の選手をを中心とする熊本国体選抜と、大阪女子体育大学のゲームを観戦した。熊本国体選抜の山形秀晴監督は、今年の全日本女子選手権ではルネサンス熊本を率い、アルビレックス新潟レディースに1回戦負けを喫した。今大会のグループリーグでも新潟と同居したが、直接対決で引分け、得失点差で上回り、2位トーナメントに進出した。日本平の借りをいくらか返した形だ。

 対する大阪女子体大も三重選抜と引分け、得失点差、総得点でも並んだが、抽選に勝って2位トーナメント進出。背番号が大きい選手が多いが、これは西日本学生選抜にレギュラーが引き抜かれているのだろう。注目したのは全日本女子選手権で当サイトのスタッフ・貞永の目を惹いた日ノ本学園の卒業生たちだ。「応援する生徒も、プレーする選手も一所懸命で一体感があった」というのが貞永の日ノ本評。大阪女子体大の白井杏奈がFWで、鈴木綾がボランチで先発していた。

 試合は大阪女子体大ペース。18分、左CKから、ニアサイドに空いたスペースにスルスルと上がった鈴木がボールを受けて、シュートを左ポストに直撃させる。また、前線では白井が、そのスピードと動き出しのタイミングで再三に渡って得点チャンスを作る。だが、先制したのは熊本選抜。FKのリバウンドを新加入の林田美由紀が叩き込んだ。その後、一度は大阪女子体大に逆転されたものの、再逆転に成功。3対2で振り切った。

「どっぷりサッカーに嵌る子は、強いチームに行きたがる。ちょっとサッカーが好きな子は学校や勤め先が多いので福岡などに行ってしまう。熊本はサッカーをやる上では地理的なハンデがあります。FWなんかは補強したいポジションですけれど、なかなか難しいですね」。全日本女子選手権の時にそう語っていた山形監督だったが、この林田の加入はヒットだろう。2対2のタイスコアからの決勝点も、林田が選手交代でマークがずれた大阪女子体大の隙を突いて決めてのもの。念願のL・リーグ初勝利は今期、達成されそうだ。

 敗れた大阪女子体大は惜しいゲームだった。元のチームメイト・朝日麗華(TASAKIペルーレFC)がスタンドから見守る中、日ノ本出身のふたりも持ち味は出した。同点のPKはDFラインの裏に抜け出しかけた白井がファールを受けてのもの。そして2点目は右CKから鈴木の高さを生かしたヘディングシュートだった。武器は異なっても、ポジショニングとサッカーセンスの良さは共通していた。遠からずレギュラー争いに加わってくるだろう。









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