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 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
 人数をかけてゴールを死守するブッチギリ(緑)
分厚いLの壁。それでも楽しんだブッチギリ
第25回全日本女子サッカー選手権大会 1回戦 ブッチギリvs.A・Sエルフェン狭山FC

2004年1月11日(日)11:00キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:200人 天候:晴
試合結果/ブッチギリ 0−8 A・Sエルフェン狭山FC(前0−4、後0−4)
得点経過/[狭山]関根(5分)、佐藤(21分)、三好(27分)、國井(38分)、関根(47分)、國井(64分)、佐藤(73分)、碓井(76分)


取材・文/中倉一志

「いつも『楽しく』がモットー。今日は、いっぱい点を取られたんですけれど楽しめました」。選手兼任監督の谷口は、かいた汗をぬぐおうともせず、満面の笑みを浮かべて答えてくれた。「名前にインパクトがあったほうが覚えてもらいやすいと思って」。ブッチギリというユニークなネーミングからも、サッカーを思い切り楽しもうという気持ちが伝わってくる。初めて臨んだ全国大会の舞台。狭山の前に手も足も出なかったが、80分間精一杯戦った充実感に溢れていた。



 競り合う市川(狭山・青)と中田(ブッチギリ・緑)
 さて、試合は立ち上がりから地力の差を見せ付ける形で狭山が主導権を握って試合を進めて行く。今年、3回目の出場となる狭山だが、過去、全日本選手権では勝ち星がない。「今日はなにしろ勝ちたい」(佐藤仁威監督・狭山)。そんな気持ちをぶつけるように、キックオフと同時に勢い良く前に出る。そして3分、さらに続く4分と佐藤舞が巧みな個人技を駆使してペナルティエリア内へ。必死に守るブッチギリの前にゴールはならなかったが、開始早々からビッグチャンスを作る。

 4−3−2−1のシステムでスタートした狭山だったが、開始後まもなく4−3−3の布陣に切り替わる。互いの実力差を感じ取ったのだろう。前に人数をかけて攻撃重視のゲームプランを選択した。國井を中心にして、右に三好、左に関根が張り、トップ下に位置する佐藤舞が、自由奔放に動き回ってチャンスを広げる。ボランチの市川は中盤の底での仕事を相方の岡上に任せて高い位置に出て行っては、厚みのある攻撃を支えていた。

 そんな狭山に対して、ブッチギリはDF登録の宮内、川中、鈴木の3人に、中平、村上の両MFを加えた5バックでこれを防ぐ。しかし、トップ下を自由に動き回る佐藤舞が捕まえられない。佐藤舞は、あるときはトップ下でボールを捌き、あるときはスペースへ飛び込んでボールを受ける。そして、隙を見つけてはディフェンスラインの裏側へ飛び出してゴールを狙う。更に、その佐藤舞が切り裂いたディフェンスラインの穴を、國井、三好、関根が狙う。試合は完全にハーフコートゲームになった。



狭山の攻撃の起点・佐藤舞。この日もその実力をいかんなく発揮した。
 狭山の先制ゴールは5分。岡上からのパスを受けた三好がドリブルでゴール前へ。最後は中央でフリーで待つ関根にラストパス。関根が難なく右足インサイドであわせてゴールネットを揺らした。ここからは狭山のゴールショー。21分に佐藤舞がヘディングシュート決めて追加点を奪うと、27分に三好がDFともつれるようにしてヘディングシュートを決めれば、38分には佐藤舞からのラストパスを受けた國井が決めて4点目。前半だけで勝負を決めた。

 攻撃の手を緩めない狭山は、後半開始直後の47分にも5点目をゲット。試合は一方的なペースになって行く。ブッチギリイレブンが集中を欠いたとしてもやむを得ない展開だ。しかし、ブッチギリのボールを追いかける姿勢は変わらなかった。押し込まれ、個人技で圧倒されても、ボールに喰らいつき、ピンチにはGKを中心に身体を張ってシュートを防ぐ。そんなブッチギリの姿勢は試合の流れに変化をもたらす。5点目を喫した47分以降、中盤で対等にボールを奪い合う時間帯が生まれたのだ。

 しかし残念ながら、狭山との間にある地力の差はいかんともしがたかった。64分、右に流れた國井が三好からのパスを受けて6点目を挙げると、再び狭山のゴールラッシュが始まる。73分には佐藤舞が、76分には交代出場の碓井がゴールを決める。ブッチギリの反撃はロスタイム。谷口が左サイドを駆け上がりGKと1対1に。しかし、ありったけの思いを乗せて放った初シュートはGK西原に阻まれた。そして試合終了のホイッスルが鳴った。



GKの動きを見極めて落ち着いてゴールに流し込む佐藤舞。3回戦の
YKK戦は彼女の出来が鍵を握っている。
「強いですね。球際も速いし、動き出しも速い」。谷口はL・リーグのチームと対戦して印象を語る。しかし、悔しさよりも全力を尽くして戦ったという思いが強いのだろう。その表情には満足げな笑みが浮かぶ。松山大学と済美高校の卒業生で作ったチーム。社会人になってもサッカーがやりたいとの思いで4年前に発足した。しかし、社会人が仕事をしながらサッカーを続けるのは簡単なことではない。まして、環境が整っていない女子サッカーだ。そんな中、仲間と一緒にボールを追い続け、積み重ねてきたものを思い切り全国の舞台にぶつけた。

 全体練習は週に1回。それでも全員が揃うことは少ない。「2年前くらいまでは、試合のときでも7人、8人しか集まらなかった。登録人数はいても社会人なんで。今回は11人揃ったので出てきました。11人揃うだけでもましですよ」。さらりと言ってのけたのは、好きなサッカーが続けられる喜びが強いからだろう。「楽しんで、交流を深めながら頑張っていきたい」。谷口選手兼任監督は、そう言って仲間の待つロッカールームへと引き上げていった。

 さて、初勝利を挙げた狭山。「子供達がやってくれた。勝ってよかったです」。佐藤監督は素直に喜びを表した。前の5人が出たり入ったりして組み立てた攻撃には、「横とか後ろとかを使った攻撃が多かった。バラエティに富んだ攻撃が出来たことは良くやったと思う」と満足げだった。続く2回戦の相手は同じL・リーグ所属のYKK東北女子サッカー部フラッパーズ。まだ勝利が挙げられていない相手だ。「取り敢えず、明日はYKKさんに胸を借りて頑張りたい」。全日本選手権初勝利を挙げた勢いに乗って、対YKK初勝利を目指す。


(ブッチギリ) (A・Sエルフェン狭山FC)
GK: 中村真利子 GK: 早田志麻(65分/西原美菜)
DF: 宮内美智子 川中佳奈 鈴木麻記 DF: 川田恵美 森香央里 前田秀美 佐藤典子
MF: 中田真実 杉浦明日香 中岡由美子 中平忍 村上明子(74分/和田知佳) MF: 岡上麻里 市川千昌 関根めぐみ 三好麗 佐藤舞
FW: 谷口栄子 益本真季 FW: 國井綾子
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