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 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
隣県同士の初出場対決。白星は神奈川大学へ。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 1回戦 Honda FC vs.神奈川大学女子サッカー部

2004年1月11日(日)11:00キックオフ 日本平スタジアム 観衆:233人 天候:晴
試合結果/Honda FC1−6神奈川大学女子サッカー部(前半0−2、後半1−4)
得点経過/[神奈川大学]鈴木(0分)、百武(22分)、[Honda]村井(47分)、[神奈川大学]矢野(56分)、稲葉(72分)、薮崎(77分、79分)


取材・文/西森彰

 今年で第25回を迎える全日本女子サッカー選手権大会は「女子サッカーの天皇杯」だ。各地域の予選を勝ち抜いてきた10チーム、L・リーグ13チームが、カップ戦の最高峰を競い合う。1月11日(土)、12日(日)の両日に渡り、日本平スタジアムで行われる1・2回戦4試合の最初のカードは、Honda FCと神奈川大学女子サッカー部の対戦である。

 Hondaと言えば、男子ではJFLの雄として知られ、J2参入を目指す各クラブの門番役として名勝負を繰り広げてきた。そして女子チームも創立11年目で、とうとうこの全日本女子に初出場を果たした。静岡県予選4試合、そして東海地区予選2試合の合計6試合で1点も許していない。静岡県予選2回戦の静岡産業大学戦をスコアレスドローのPK戦、その後の準決勝、決勝は最小得点を奪って1−0で逃げ切っている。この成績を見る限りは競った勝負に強い印象がある。静岡県西部に位置するHondaにとって、ここ日本平は決してホームとは言えないが、それでも同県勢の誼か、清水エスパルスのグッズを使っての応援が見られる。

 一方、隣県から出場権を得た神奈川大学も、今回が全日本女子初出場となる。昨年の第17回関東大学女子リーグでは4勝3敗の4位。上位に位置した日本体育大学、東京女子体育大学、早稲田大学には直接対決で全て敗れているが、創部後僅か3年でこの舞台まで上がってきた1、2年生が主体のチーム。浅いキャリアを考えれば、すばらしい躍進振りとも言える。地区大会では浦和本太レディースFCや横須賀シーガルスなど、全日本女子出場経験のあるチームを破っての関東第2代表獲得。こちらは県予選、関東予選の7試合で32得点、7失点と出入りが激しい。

 正反対なチームカラーを持つ、フレッシュな対決である。



 キックオフをとった神奈川大学がそのまま先手をとった。右サイドから鈴木麻友が、中央の矢野喬子とのワン・ツーで抜け出し、センタリングを上げる。上空を舞っていた風がこのボールをあおり、予選無失点の立役者・安西久美子のキャッチミスを誘い、ゴールに転がり込む。予選から続いていたHondaの連続無失点はここで途切れた。コイントスに勝ったHondaが風下のコートを選んだために、労せずして風上のキックオフを取れた神奈川大学。ラッキーな先制点を奪い15分までは一方的に押し続ける。

 これに対しHondaは、静岡県のチームらしい巧みな戦略でチャンスを掴む。キックオフの時点では村井裕美と並んでトップを張っていた藤田裕美子が、神奈川大学の篠原志穂子と百武江梨を引っ張りながら後退する。「経験が薄いもので『この選手が私のマークだ』と思うとそのままついていってしまう。そういう(経験が)足りないところもあります」(神奈川大学・鎌田俊司監督)。そこを狙われたのだ。

 4バックの2枚が藤田の動きに釣られて前に出て生まれたスペースを、サイドハーフでスタートした蔦木加代子が入れ替わって使う。16分、左サイドでボールを奪うと、ここから右へピッチを斜めに大きなパスでサイドチェンジ。蔦木が完全に篠原、百武の裏をとって独走。フリーでシュートを放つが、これがバーの上を越えてしまう。Hondaは絶好の同点機を逸した。命拾いした神奈川大学はすぐに右のディフェンダーに杉田香を投入し、住江真祐子を左に回して綻びを塞ぐ。


 神奈川大学は21分、右サイドからのコーナーキックから2点目を奪う。稲葉彩衣里が蹴ったボールを百武江梨が頭であわせて叩き込んだのだ。その前にも2本、コーナーキックから百武の頭を狙っていた神奈川大学。ゾーンで守っているHondaディフェンス陣も「要マーク」という意識はあったが、いったん外に逃げて、そこから入り込む動きは一枚上だった。「百武はユニバーシアード代表にも選ばれているように、能力がある選手。ヘディングも上手ですから」とは鎌田監督の評価。

 2点のリードを奪った神奈川大学に対し、Hondaも後半に入るとゴールへの執念を見せながら、前に出て行く。43分、左右からの連続コーナーキックから佐藤シェンネンの攻撃参加で揺さぶる。そして47分、カウンターから左サイドの沖里美が送ったボールを、村井がディフェンダーとの併走に勝って自分のものとする。村井はスピードに乗ったまま、前に出て自分のシュートタイミングで右足を振り切った。これで1点差、Hondaも粘る。

 しかし、今度は日本代表のレギュラーがHondaを突き放す。神奈川大学ではボランチを務める矢野が、ゴール前の混戦で生まれたリバウンドをボレーシュートで突き刺したのだ。これで大勢は決した。Hondaの加藤万明監督は、蔦木から植田朱美と前線の選手を交代。さらに小梢奈穂美を最終ラインに入れて、佐藤のポジションを最前線に上げる。しかし、前がかりになったところを神奈川大学に突かれて、終盤に3失点。6−1の最終スコアで神奈川大学が勝利を飾った。



 明暗を分けた初出場の両チームだが、6−1というスコア、24対6というシュート数ほどの差は無い。ともに固くなって当然の立ち上がりの時間帯に起きたことが全てだった。風の悪戯で失点を喫したHondaは選手たちが萎縮してしまい、逆に神奈川大学は「打てば何かが起きるかもしれない」と積極性が出た。

「このチームは、良い時はボールを回せるんですけれど、回しすぎてシュートが出ない時があるんです。インカレの時なんかはそうでした。だから、この大会では『シュートを打つべき時は打たなきゃいけない。入るかどうかは別なんだ』と言っておいたんです」(神奈川大学・鎌田監督)。その指示が徹底されたのは、あのラッキーな先制点も大きい。

「次は何しろチャンピオンチームが相手。口で言ってもわからないことを選手たちに教えてやってもらいたい。良い意味でL・リーグの力を見せ付けてもらいたい。そういう経験が選手たちの力になるのですから」と、鎌田監督は田崎ペルーレFCとの対戦できることを喜んだ。

 そう、何事も経験だ。今日できなかったことは、次回につなげれば良い。この日の敗戦で得たほろ苦い経験を武器に携えて、Honda FCの新シーズンが始まる。


(Honda FC) (神奈川大学女子サッカー部)
GK: 安西久美子 GK: 渋江美紗子
DF: 岡部友香、渡辺千春、佐藤シェンネン DF: 横山起永、住江真祐子、百武江梨、篠原志穂子(34分/杉田香)
MF: 滝智子、増田清乃、蔦木加代子(58分/植田朱美)、沖里美、松下公美 MF: 稲葉彩衣里、矢野喬子、鈴木麻友、福田沙矢香
FW: 藤田裕美子(68分/小梢奈穂美)、村井裕美 FW: 薮崎愛、小林菜摘(53分/堀田えり子)
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