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 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
ヴェールを脱いだ新潟、熊本に名刺代わりの1勝。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 1回戦 アルビレックス新潟レディースvs.ルネサンス熊本FC

2004年1月11日(日)13:00キックオフ 日本平スタジアム 観衆:183人 天候:晴
試合結果/アルビレックス新潟レディース2−1ルネサンス熊本FC(前半2−1、後半0−0)
得点経過/[熊本]高橋(17分)、[新潟]藤巻(19分)、田辺(28分)


取材・文/西森彰

 北信越リーグ8戦全勝。全日本女子北信越ブロック3戦全勝。11試合で奪ったゴールは102(打ち間違いではない。ヒャクニである)、失点は3。「どうやったら、そんなに点がとれるんですかね?」とL・リーグ随一の得点力を誇る田崎ペルーレFCの仲井昇監督も首をかしげるほどの数字である。来年からL2へ参戦するアルビレックス新潟レディースのプロフィールは、ルネサンス熊本サイドにも、もちろん心理的影響を与えた。



「とにかく未知数な相手だったので。『アルビレックス』という名前と、地域大会のデータを見て選手が緊張してしまった部分は、やっぱりあったと思います」。試合を終えた後でルネサンス熊本の山形秀晴監督が悔しそうに振り返った。「Jリーグで新進気鋭のクラブがやっているチームだ。きっと強いんだ」。そのプレッシャーからか、立ち上がりのプレスが甘く、新潟に押し込まれる。落ち着いて考えれば、Jリーグの選手とL・リーグの選手たちは性別すら異なり、彼女たちはジェフユナイテッド市原レディースとは互角に近い勝負ができていたのに。

 自分たちで敵を大きく見てしまった熊本に対して、新潟は普段どおりに自分たちのサッカーを貫いた。ボールを奪うとどんどん前線のプレーヤーに当てて、1対1の場面を作る。さらに多少、距離が遠くても、相手の寄せが遅ければシュートを打つ。「シュートの意識が高い? そうですね。うちはボールのキープ力が高いほうじゃないんで。サッカーをやっているんだから、ゴールへ向かって攻めていこうと。そういうコンセプトでやっていますので」(新潟・牛浜真監督)。

 試合開始1分でシュートを放った田辺友恵は北信越リーグで26得点を誇るストライカー。新潟は最前線に張るこの16番にボールを預けて、攻撃を仕掛けた。相手陣内に攻めていって、コースが開いたらシュートで終わる。きっちりとそのサイクルを繰り返す新潟の選手たち。白い半袖のユニフォームは、日本平のピッチを伸び伸びと走り回る。

 それでも先制点は熊本が奪った。歌野あきなの中央やや右から前線へのフィードに、高橋桃子が反応する。やや前目に出ていたGK本木可奈の位置取りを確認してシュートを放つ高橋。決して強いシュートではなかったが、コロコロと転がったボールは新潟ゴールの左隅へと吸い込まれていった。しかし、このゴールでも熊本の選手たちからは固さがとれず、新潟の選手に焦りは生まれなかった。

 2分後、田辺の放ったシュートがバーに当たり、この跳ね返りを藤巻藍子がシュート。一度はこれを弾いた熊本のGK野添七美だったが、再度詰めた藤巻が粘り勝って同点に追いついた。新潟とは対照的に浮き足立った熊本。29分に再び田中桜のロングシュートがバーに当たったところを田辺に詰められて、あっという間に1点のリードは、逆にビハインドになってしまった。



 この試合展開に、翌日の対戦相手の偵察?にきていたスペランツァ高槻のファン数名は太鼓を叩いて、苦戦を続ける熊本を応援し始めた。3年も一緒に対戦していたチームだし、肩入れしたい気持ちはあって当然だ。あるいは単純に、任務を遂行しつづける新潟を対戦相手として不気味に感じたのかもしれない。その声援が熊本の選手たちのハートに灯をともしたのか、徐々にゲームは互角の展開になっていった。

 ハーフタイムで息を入れた熊本は、後半直後の新潟の攻撃を凌ぎきると反撃を開始した。2000年のL・リーグ加盟後4年間で1勝もしていない熊本だが、田崎ペルーレFCや伊賀FCくノ一等の強豪を相手に4年間戦ってきたことでもある。これくらいで足が止まることはない。50分、歌野に代わって入った北川ちはるのクロスで生まれた混戦から荒木真実、寺澤希、有富明菜が連続シュート。さらに高橋のミドルシュートなどで新潟のゴールを脅かす。

 逆に新潟は、これまでが楽勝続きだったこともあり、こんなに競った試合を戦った経験がない。選手たちは、この展開にフラストレーションを蓄積させていった。67分には1枚イエローカードを貰っていた野村千枝子が、主審に促されてもなかなかスローインを投げず、遅延行為で退場。40分ハーフの試合ということを考えれば、この処分は仕方ないが、野村だけではなく、近くで靴紐を結んでいた選手にも責任はある。

 数的優位に立った熊本は、新潟に何度かカウンターを浴びながらもゴールに迫った。しかし、島田佳由子からのロングボールを、寺澤が新潟ゴールに叩き込んだがオフサイドの判定でノーゴール。最後まで「あと1点」が奪えず、涙を飲んだ。

 敗れた熊本にとって不運だったのは「前後半40分ハーフ」という1・2回戦限定ルールだろう。10人の新潟は、いつもならゲームが決まっている時間帯で、足を止めずに戦う熊本の攻勢にふらついていた。通常のL・リーグ同様45分の時間が与えられていたら、守りきれたかどうか。恐らく、複数の高校生チームが参加していることを考慮した特別ルールだろうが、キャリアで勝る熊本のアドバンテージを小さくするものであった。



 さて、10人で逃げ切った新潟の牛浜監督に「L2参戦に向けて、ある程度の手応えを掴めたのではないですか?」と尋ねたところ、「まだまだ1試合やっただけでは分かりません。たまたま勝つことができましたけれど、これから厳しいリーグ戦の戦いが待っていると思います。もっともっとレベルを高くしていかないといけないと思いました」という答えが返ってきた。

 目標を「世界一」と語る牛浜監督にとって、まだまだ足りない部分が目につくのだろう。試合後、報道陣の選手への質問を断って、先にクーリングダウンを指示したように、ことサッカーに対する意識は高い。2002年の4月にチームが始動して、まだ2年足らず。戦力アップを含めて課題も多いが、牛浜監督は最終到達点を睨みながら、チームを引っ張っるはずだ。

 敗れた熊本のシーズン目標は、とにかく念願のL・リーグ初白星だろう。2部制度導入によって全く歯が立たないチームはL1に入り、手を伸ばせば届きそうな相手との3回戦総当りに変わった。当然ながら、チャンスはより大きくなる。この日の対戦相手・新潟についても「まだ今なら、L2の中で戦える相手」(熊本・山形監督)と認識している。

「今日は、本来フォワードをやっている選手を、ディフェンダーにまわして試してみたり、次のシーズンを考えた戦いもしました。今日はまだぎごちない部分がありましたが、今後、練習を積んでいけば、もう少し確立できる部分があると思います」と今後の展望を語った山形監督。そして「やっぱり、ゴールを奪えないと勝てませんね」と苦笑した。前線の補強をも視野に入れて、熊本の2004シーズンが始まった。


(アルビレックス新潟レディース) (ルネサンス熊本FC)
GK: 本木可奈 GK: 野添七美
DF: バネッサ、田中桜、屋富祖綾乃、岡林亜希代 DF: 倉本直子、島田佳由子、奥村紗代、佐藤恵利子
MF: 川村優理、野村千枝子(67分/退場)、藤巻藍子、渡辺樹里 MF: 安部友美、荒木真実(51分/松元ゆみ子)、歌野あきな(20分/北川ちはる)、寺澤希
FW: 田辺友恵、近藤千恵 FW: 高橋桃子、有富明菜
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