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 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
ゴール前のピンチを防ぐ森とGK早田(狭山・白)
L同士の対決はYKKが順当勝ち。準々決勝に駒を進める。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 2回戦 YKK AP東北女子サッカー部フラッパーズvs.A・Sエルフェン狭山FC

2004年1月12日(祝)11:00キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:180人 天候:晴
試合結果/YKK4−0狭山(前2−0、後2−0)
得点経過/[YKK]大部(9分)、五十嵐(27分)、佐藤(67分)、本間(71分)


取材・文/中倉一志

 全日本女子サッカーのパンフレットには登録選手の生年月日、身長・体重に加え、前登録チーム名が記されている。さすがに全国大会へ駒を進めてくるだけあって、前登録チームにはサッカーでは有名な大学や高校の名前が並ぶ。また、プロ契約選手がいない女子サッカー界にあっては、生活基盤とプレーする土地は切っても切れないもの。その影響からか有力チーム間での移籍も多いようで、前登録チームにライバルチームの名前が並ぶことも珍しくない。

 ところが狭山のページを眺めてみると、ほとんどの選手の前登録チームが記されていない。これは狭山の選手たちがこのクラブで育ったことを意味している。有名どころがずらっと並ぶYKKとの違いは明らかだ。東日本リーグでの対戦成績はYKKの2勝。最終順位もYKKの5位に対して狭山は10位。実力の違いは否定できない。しかし、「うちは気持ちでやるチーム」。そう語る佐藤仁威監督はベンチの前で円陣を組むと、「勝つぞ!」と声をかけて選手をピッチに送り出した。



ドリブルを仕掛ける鹿毛(YKK・青)
 立ち上がり早々の3分、狭山はYKKに決定的なチャンスを作られたものの、試合の入り方としてはまずまずの出足を見せる。実力上位チームに対してラインを下げずに高い位置からボールを追い、臆することなく積極的に前へ出る。しかし、YKKも決して慌てない。前へ出てくる狭山の選手を落ち着いて受け止めると、相手のミスに乗じて一気に加速してゴールを目指す。「気迫で負けないようにスタートから集中してやろう」(斉藤誠監督)。その指示通り、こちらも積極的な姿勢を崩さない。

 互角の立ち上がりを見せた試合の先制点は9分、YKKに生まれた。きっかけはペナルティエリア内でのミスだった。クリアミスをした狭山の選手が慌ててボールをキープしようとしてペナルティエリア内に詰めてきたYKKの選手を倒す。ファールを告げるホイッスル。そして審判の右手がペナルティスポットを指す。判定はPK。これを大部が難なく決めた。「ペナルティボックス内では積極的にいけと、必ずPKの可能性があるよと伝えていた。先制点を取ったのが大きかった」(斉藤監督)。そして、この1点で流れは一気にYKKに傾いた。

 YKKは基本に忠実に試合を進めていく。相手のパスミスや、中止半端なパスをカットするとサイドへ展開。そしてクロスボールをゴール前の選手に合わせる。高い位置から積極的に縦に出てくる高橋唯、槇寛美の両WBの前に狭山のMFは後ろに引っ張られ、ほとんど6人でゴール前を固めざるを得なくなっている。そして27分、ルーズボールに対して緩慢な動きを見せる狭山の隙を突いて五十嵐が右足を一閃。YKKは2点のリードを奪って前半を終えた。



本間の豪快なヘディングシュート。勝負を決める3点目を奪う
「向こうのプレッシャーが強いんで、時間がたつにつれて、ああいう状況になってしまった。ハーフタイムでは気持ちを持っていけと伝えた」(佐藤監督)。狭山イレブンは、そんな監督の言葉に応えた。全員で下がってしまった前半の布陣を修正。試合開始直後のように前からボールを追い始めた。試合の流れは依然としてYKK。ボールのキープ率もYKKがまさっていた。しかし、押し込まれそうになる度に前に出て、YKKに一方的には攻めさせない。そして、相手陣内でのプレー時間も徐々にだが増えていく。

「流れは来てるよ!」はるばる狭山から応援に駆けつけたサポーターの声がスタジアムに響く。しかし、狭山はあまりにもミスが多すぎた。いい形でボールを保持しても、次のパスが中途半端。YKKはこれを狙い撃ちにした。何度となく狭山のパスをカットしてはサイドへ。まるでリプレイでも見ているかのような展開が続く。そして67分、右CKのチャンスに佐藤が頭で合わせて3点目をゲット。狭山にとっては絶望的な失点だった。

 この得点で明らかに狭山の集中が切れた。しかし、攻撃の手を緩めないYKKは続く71分、右サイドの深い位置から槇が折り返したクロスに本間が合わせて駄目押しの4点目。本間にとっては交代出場後のファーストプレーだった。試合はこのまま4−0で終了。後半はがんばりを見せた狭山だったが、両チームの放ったシュートはYKKの14本に対して、狭山の3本。狭山のエース佐藤舞は何もできないままに80分間を終えた。残念ながら両チームの相手にある差は大きく、YKKがベスト8に駒を進めることになった。



後半は気持ちでぶつかった狭山だったがYKKの壁は厚かった。
「サイドを崩してというふうに指示したが、中の詰めの部分にまだ課題がある。1週間で修正できる部分は直していきたい」とは斉藤監督。4点という大量得点を奪ったものの、内容的には満足いくものではなかったのだろう。そして続けた。「(さいたまは)激しく動いてくるんで、前半は失点しないということ。後半に勝負をかけていくという戦いになる」。準々決勝で対戦する「さいたまレイナス」との今シーズンの対戦成績は2分2敗と、まだ勝ちがない。YKKは最後の大舞台で雪辱を狙う。

 さて、敗れた狭山の今シーズンは終わり、つかの間の休憩を挟んで来シーズンへの準備が始まる。来シーズンの戦いの場はL2。フィジカルと個人技術の強化を図ってL1昇格を目指す。練習日は週に4日、しかもそのうち2日は体育館での練習と、狭山の環境は決して恵まれてはいない。しかし、だからこそ頑張りたいと佐藤監督は言う。「少ない練習時間の中で、生活の中にどうサッカーを位置づけていくか。うちの場合は、それが課題」。そういって佐藤監督は博多の森を後にした。








(YKK AP東北女子サッカー部フラッパーズ) (A・Sエルフェン狭山FC)
GK: 内田由布子 GK: 早田志麻
DF: 大部由美 宇野涼子 梅原美砂子 鹿毛亜希子 DF: 川田恵美 森香央里 前田秀美 佐藤典子
MF: 北郷祐子 染矢晴海 高橋唯(74分/棚橋美智子) 槇寛美 MF: 岡上麻里 市川千昌 関根めぐみ 三好麗 佐藤舞
FW: 五十嵐章恵(70分/永田りつ子) 佐藤春詠(70分/本間真喜子) FW: 國井綾子
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