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 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
 青が高槻で白が新潟? いえ、長袖が高槻で半袖が新潟です。
未知との遭遇をすり抜けて。高槻、新潟を退け、準々決勝へ進出。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 2回戦 アルビレックス新潟レディースvs.スペランツァF.C.高槻

2004年1月12日(月・祝)13:00キックオフ 日本平スタジアム 観衆:96人 天候:曇
試合結果/アルビレックス新潟レディース0−2スペランツァF.C.高槻(前半0−0、後半0−2)
得点経過/[高槻]高倉(54分)、庭田(69分)


取材・文/西森彰

「あ、載ってる」

 声がしたテーブルを見ると、偶然、同じホテルに泊まっていたスペランツァF.C.高槻の選手たちだった。朝食をとった後、スポーツ新聞を開いて、全日本女子サッカー選手権の記事を見つけたらしい。彼女たちL・リーグの選手たちの活躍は、なかなか新聞や一般紙で報道されることがない。私が読んでいた別の新聞でも前日の1回戦は、スコアだけが本当に申し訳程度に取り上げられていた。だが、きっとそんな扱いを受けているスポーツのほうが多いのだろう。

 女子サッカーが日の目を見ない理由のひとつは、このようにマスメディアの取り扱いが小さいこともある。L・リーグの全クラブの中で、昨年、チーム名が一般社会に最も露出したのは、どこだろう。全日本女子とL・リーグのダブルクラウンを成し遂げ、ワールドカップでハットトリックを成し遂げた大谷未央ら多くの代表選手を擁する田崎ペルーレFCではなく、この高槻かもしれない。



 下部組織のラガッツァFC高槻スペランツァが、モーニング娘。のメンバーたちが作ったチームとフットサルで対戦して7−0と圧勝。スポーツ新聞や雑誌等が彼女たちを「L・リーグ所属のスペランツァ高槻」として紹介したからだ(当然のことながら「芸能欄」に組み込まれていたが)。

 L・リーグを目指す少女のユースチーム・ラガッツァFC高槻スペランツァと、OB・サッカー未経験者・初心者が中心のグループで構成されるラガッツァ'99USED FC高槻スペランツァのふたつの関連組織を持つスペランツァF.C.高槻。モーニング娘。らと対戦したのはUSEDのほうで、このチームも11月22日〜24日までこの静岡市で開催されたレディース・フットボール(川淵キャプテンが打ち出した女子サッカー振興策のひとつで、サッカー版の「ママさんバレー」)の全国大会でも優勝したチームである。元東京ヴェルディ1969に所属し、現在はJFAアンバサダーとして活躍する北澤豪監督が指揮をとり、運動神経に秀でたタレントたちが時間を割いて練習しても、0−7という結果になったのはやむを得まい。

 では、この下部組織が大阪ドームの大観衆の前でプレーしている頃、正真正銘、本物のスペランツァF.C.高槻は何をしていたか。加古川運動公園陸上競技場で、決して多くないファンを前にして、伊賀FCくノ一とリーグ戦を戦っていたのだ。試合結果は0−4の大敗で、上位リーグの最終順位でも最下位の6位と低迷した。Aチームの威厳を保つためには、この全日本女子で上位に進出するのが手っ取り早い。



 その初戦の相手は、前日の1回戦でルネサンス熊本FCを逆転で破ったアルビレックス新潟レディースである。「アルビレックスはやっぱり未知のチームだったんで、気を遣った部分はありましたね」とは高槻の佐々木博和監督。北信越地区のリーグ戦、トーナメントで11戦全勝という看板が、熊本同様、受けて立つL・リーグ勢の警戒心を煽っていた。

 高槻は3−5−2、新潟は前日同様の4−4−2。「とにかく、先に失点をしないように。ある程度セーフティーに、まずは落ち着いて前半を戦おう」と選手を送り出した佐々木監督。試合開始から高槻はゲームを支配し、ボールを左右へ丁寧に動かしながら、ビルドアップしていく。

 攻撃面では両サイド深くから送られるマイナスボールの折り返しを狙う高槻の選手たち。基本に忠実なサイドアタックを続けながら、トップ下に入った高倉麻子がアクセントをつける。そして守備では、昨年のユニバーシアード準優勝の原動力となった下小鶴綾を中心に、3バックがきっちりとカウンターに対応して新潟にチャンスを与えない。

 新潟もディフェンスリーダーの田中桜が大きな声を出しながら、ブラジル人選手バネッサ他、ディフェンスラインの選手を統率。小さい体で粘り強い守備を見せる屋富祖綾乃とのコンビで、なかなかフリーな選手を作らない。23分、32分と高倉が放った2つのシュート。そして松田望のポストプレーから久山暖香がゴールを狙った35分のシーン。いくつかチャンスを作った高槻だが、両チーム無得点のままハーフタイムへ。



 1発勝負のノックアウト方式で0−0の折り返しは非常に怖い。しかし、高槻サイドに必要以上の焦りはなかったという。「延長戦もありますし『失点さえしなければ良い』と思っていました。選手たちには『なかなか(ゴールが)入らないけれど決して焦らないように』と指示しました」(高槻・佐々木監督)。しかし、そこで一瞬、隙が生まれた。

 53分、ボールを奪うと左サイドバックの岡林亜希代が、高槻の最終ライン裏にボールを送り込む。高槻はオフサイドトラップが上手くいかず、新潟に2対1のチャンスをプレゼントしてしまう。この試合で新潟に訪れた最大のチャンスだったが、前線の選手が大事にしようとしすぎ、懸命に戻った高槻ディフェンダーのクリアにあう。ゲームプラン通りに試合を組み立てていた新潟は、長蛇を逸した。

 ピンチの後にチャンスが来るのは勝負事では必然。直後の54分、庭田亜樹子からのパスを受けた相澤舞が、深い位置まで持ち込んでセンタリング。頭でこれを流し込んだのは高倉。3度目のチャンスはしっかりとモノにした。ボランチの位置から、左サイドに流れる動きを見せた相澤、そして高倉の入り込むスペースを作った久山と小野村亜矢の2トップの働きも見逃せない。

 待望の1点を手に入れた高槻は前半よりも頻繁にポジションチェンジを行ないながら、相手陣内でボールを動かして、新潟のガソリン切れを待つ。ここまで相手ボールを追って前後左右に走らされていたうえに、前日の熊本戦に続く連闘を強いられた新潟は苦しくなった。そして、69分、高倉からのパスを受けた庭田が抜け出しシュート。一度は本木のセーブにあったが、リバウンドを押し込み加点。高槻がゲームを決めた。



 前日と同じように、選手たちに試合後のクーリングダウンをさせる新潟の牛浜真監督に「昨日の疲れが残っていたようですが、それがなければあるいは?」と問いかけた。「いや、それは関係なかったと思いますよ」と牛浜監督。「ゲームプラン通りの展開でしたし、もう少しスコアレスの時間が長引けば…」と食い下がったが「さあ、どうですかね?」と素っ気無い答えしか返ってこない。それでも熊本戦、そしてこの日の高槻戦で手にした収穫は大きかったはず。来年、L2で旋風を起こせるだろうか。

 新興チームの挑戦を、慌てずに退けた高槻は、ベスト8で田崎に挑戦する。「あちらは企業チームですし、チャンピオン。個々の力が高い選手がたくさんいます。(『大谷選手の出場が微妙ですが?』との新聞記者の問いかけに)いや、一人くらい抜けても力が落ちるチームじゃありませんよ」。高槻の佐々木監督は次の対戦相手に敬意を払う。しかし、高槻も若手が経験を積みながら力をつけて、成長曲線を描き続けているチームだ。

「『高槻のラモス』ですね。今日も勝負どころでは、必ず、彼女が姿を出していました」と私。「そうですね。ウチも彼女の負担をもう少し減らせるようになれば、まだ良くなると思うんです」と佐々木監督。ふたりの視線の先には23番をつけた高倉麻子の姿があった。L・リーグの顔とも言える彼女が、若い選手たちのテクニックと闘志をフルに引き出せれば…。

「高槻は怖いですよ」と言っていた田崎の仲井昇監督の顔が浮かんだ。


(アルビレックス新潟レディース) (スペランツァFC高槻)
GK: 本木可奈 GK: 轟奈都子
DF: バネッサ、田中桜、屋富祖綾乃、岡林亜希代 DF: 鳥越恵、下小鶴綾、小林恵
MF: 谷澤麻子、川村優理、渡辺樹里、藤巻藍子 MF: 松田望、庭田亜樹子、相澤舞衣、中野あずさ(37分/高見恵子)、高倉麻子
FW: 田辺友恵、近藤千恵 FW: 久山暖香、小野村亜矢
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