topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
 後半へ。そして、その先にある大会連覇へ。
連覇に向かって視界良し。田崎、高槻の抵抗もクリア。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 準々決勝 田崎ペルーレFCvs.スペランツァF.C.高槻

2004年1月18日(日)11:00キックオフ さいたま市駒場スタジアム 観衆:267人 天候:晴
試合結果/田崎ペルーレFC3−0スペランツァF.C.高槻(前半2−0、後半1−0)
得点経過/[田崎]鈴木(4分)、川上(29分)、柳田(64分)


取材・文/西森彰

「高槻は嫌な相手ですよ。ウチは全日本で当たるとすぐ『点取れない病』になっちゃうんだから」

 全日本女子サッカー選手権の2回戦会場で、私が田崎ペルーレFCの仲井昇監督に「スペランツァF.C.高槻とアルビレックス新潟レディースのどちらが嫌ですか?」と尋ねた時の答えだ。未知な新潟も怖いが、一発勝負でいろいろやってきた時の高槻はそれ以上にうるさい。仕上がり途上を承知でリーディングスコアラーの大谷未央を先発させたのは、その危機感の表れだっただろう。

 その「嫌な相手」は2回戦と前の選手の配置を変えてきた。新潟戦で2トップを務めた小野村亜矢、久山暖香の2人が左右のサイドハーフに回り、逆に右サイドハーフだった松田望が吉野波と前線に張る。「はい、変えましたね。まあ、相手はチャンピオンチームですから」(高槻・佐々木博和監督)。今年4戦して全敗している相手に、何とか一矢を報いたい。佐々木監督はまず、チャンピオンの良さを消すことを考えた。



 スピードのある田崎の右サイドハーフ土橋優貴に小野村をぶつけて、左の柳田美幸には久山が対応する。「(田崎の)特徴は、それなりに抑えられたかなと思います」と佐々木監督が振り返ったように、田崎のサイドアタックは回数、そして危険度とも、通常に比べて減じられた。さらに、横パスを攫って攻撃という狙いを、前のふたりとトップ下の高倉麻子が幾度となく試み、チャンスを作ったシーンもあった。

 佐々木監督のゲームプランを選手たちはしっかりと消化していた。相手が並のチームだったら、優位に立つことができたはずだ。高槻にとって不幸だったのは、この日の相手が並ではなかったことである。

 田崎は第一選択肢の両サイドを抑えられても、さらに真ん中があった。両サイドに蓋をする相手の狙いを見抜くと、2枚のボランチが積極的に攻撃参加する。4分の先制点は新甫まどかのパスを受けた鈴木智子のシュート。一瞬できたディフェンダーとの間を見逃さず、思い切り良く打ったこと。それが両チームの選手をブラインドにして、轟奈都子の反応を遅らせた。「はように点が取れたんで、その点はラッキーでした」と仲井監督が言うように、この得点が遅れたら、高槻の罠にはまり込んでいたかもしれない。

 さらにもう1枚のボランチが追加点を奪う。29分、クッとポジションを前に上げてボールを受けた川上直子が、ドリブルでペナルティボックス手前まで持ち込み、GKの位置を確認してループシュート。右足から放たれたボールは綺麗な放物線を描きながら、モノの見事にゴール左隅に吸い込まれていった。「完全に崩されたゴールじゃないだけに、それが悔しいです」(高槻・佐々木監督)。高槻にとってもダメージの大きな2得点だった。



 2点を奪った田崎は「下がちょっと悪かったので、大事に行きました」(田崎・仲井監督)と、ややスローダウン。しかし、高槻の食い下がりも褒められて良いのではないだろうか。後半途中では本調子にない大谷を下げて、甲斐潤子を最終ラインに投入し、活発化してきた高槻・久山の攻撃参加に対応させるため、左サイドバックで先発した佐野弘子を押し上げて対応させる。

 昨シーズンはディフェンダーでのスタートが多かった佐野。しかし仲井監督は「まだ消極性が残っているけれど、能力の高い選手だから、あのポジション(左サイドハーフ)で使いたい」と大きな期待を寄せ、神奈川大学戦でも中盤で先発させている。64分の3点目は山本絵美からのパスを左サイドで受けた佐野のセンタリングを、鈴木がスルーして、最後に柳田が流し込んだもの。緊迫した2点差の状況でのアシストは、大差でのそれとは、本人が得る自信の大きさが違う。

「誰を出してもそれなりに、形が作れるようになってきた。それがここ2試合の収穫ですね」と手にした勝利の重さを量っているような仲井監督。自分たちの力を精一杯ぶつけた神奈川大学、そして逆に力を封じ込めるための努力を惜しまなかった高槻。どちらもそれぞれ、現状の力は発揮したはずだ。そんな相手を5−0、3−0と横綱相撲でぶん投げる田崎に隙はない。連覇まであとふたつだ。



 高槻も、現在の力は出し切った。
 試合終了後、クーリングダウンする選手たちの手を握って感謝の意を示した高槻の佐々木監督は「まあ、試合は負けたけれども『一歩、前進できたかな』と、ある程度内容には満足しています。選手はよくやってくれたと思いますね。その点については悔いがありません」と笑顔を見せた。そして、今後の課題として、次のように答えてくれた。

「体力、判断、全てを上げていかないといけませんね。特にラストにつながるパスの部分がもうひとつ足りないのかな、と。アーリークロスやセンタリングで、パスの出し手にどういう表現をするのか。逆に出し手がどういう表現をするのか。そこが一番大きいです。(『若い選手が多いですが?』との質問に)うーん、そこをどう捉えるかですね。年下だからと甘えるのではなく、グラウンドに出るのは年齢関係ないんだから、もっともっと前向きにやってほしいです」

 口をついて出た厳しい言葉の数々は、大きな期待の裏返しだろう。来シーズンはL1残留を確保しながら、上を目指す戦いとなるだろうが、そこで地力をつけてタイトル奪取のベースキャンプを作り上げてもらいたい。






(田崎ペルーレFC) (スペランツァFC高槻)
GK: 大西めぐみ GK: 轟奈都子
DF: 磯ア浩美、白鳥綾、佐野弘子 DF: 小林恵、下小鶴綾、高見恵子
MF: 土橋優貴(74分/中岡麻衣子)、川上直子、新甫まどか、柳田美幸 、山本絵美 MF: 久山暖香、庭田亜樹子、相澤舞衣、小野村亜矢(85分/中野あずさ)、高倉麻子
FW: 鈴木智子、大谷未央(58分/甲斐潤子) FW: 松田望、吉野波
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送