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 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
立ち上がりから激しくぶつかり合う両チーム。
大原学園健闘も力及ばず。日テレがベスト4へ。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 準々決勝 日テレ・ベレーザvs.大原学園JaSRA女子サッカークラブ

2004年1月18日(日)11:00キックオフ 広島県営広島スタジアム 観衆:500人 天候:晴
試合結果/日テレ3−1大原学園(前3−0、後0−1)
得点経過/[日テレ]山口(20分)、近賀(29分)、山口(32分)、[大原]津波古(55分)


取材・文/中倉一志

 天候の悪化と冷え込みが心配された18日の日曜日。しかし、広島スタジアムは朝からまぶしい日差しが降り注ぐ。気温は18度、風もそれほどなく芝生の状態も良好。全日本女子サッカー選手権の準々決勝の舞台は最高のコンディションになった。9:30にスタジアムに着くと、日テレ・サポーターが入場口に大きな断幕を広げて開門を待っていた。今年、リーグ戦のタイトルを逃した日テレにとってはなんとしても手に入れたい全日本選手権のタイトル。選手とともに戦う準備は整っている。

 その日テレと準決勝進出をかけて戦うのは大原学園。2003年シーズンからL・リーグで戦う新鋭だ。チームコンセプトは、高い位置でボールを奪ってシンブルにゴールを目指すというもの。東日本リーグでは3勝2分7敗と振るわず下位リーグにまわったが、下位リーグ、L1参入決定戦を無敗で乗り切って来シーズンのL1参入を決めた。「1年間を通して選手たちがよくやった」(種田佳織監督)。その集大成を準々決勝で日テレにぶつける。スタンド最前列では長野からやって来たサポーターが太鼓とメガホンで後押しする。



激しくプレッシャーを欠ける大原学園
「前半である程度点が欲しかったのと、前半で勝負をつけたいなと。そのくらいの力の差は見せないといけないと思うんで」(宮村正志監督・日テレ)

 日テレは立ち上がりから積極的な姿勢を見せてゴールを目指す。右からは近賀が縦に突破を図り、左サイドの小林、トップ下の大野が頻繁にポジションチェンジをしながらボールを回す。そして圧倒的な存在感を見せたのがボランチの酒井。抜群のポジショニングでチームのバランスを取ってボールを配給。ピンチの芽を未然に摘んだかと思えば、隙を見つけてドリブルで前へ突っかける。さらに、激しくポジションチェンジをするMF陣のフォローについては分厚い攻撃を支えている。

「相手は上位チーム。格上だというのは分かっていたんで、自分たちの力を出すために思い切って前から行こうと」(種田監督)

 大原学園も負けてはいなかった。ボールは圧倒的といっていいほど日テレに支配されたが、高い位置から激しいプレスで日テレに襲い掛かった。ボールも人も動く日テレのサッカーに惑わされることなく、前へ、前へとボールに喰らいついていく。日テレのディフェンスラインの裏をつくボールに対する守備には不安定さを見せるものの、ボールを出される前に中盤で捕まえようという意図がはっきりと分かる。中盤での激しい潰し合いが続く。

 しかし、やはり日テレ。大原学園の前に出る動きを真っ向から受け止めて、そしてボールを回しながらペースを奪った。先制点は20分、ゴール正面で永里が頭で落としたボールに走りこんできた山口が右足を振り抜いた。これで試合は完全に日テレペースに。激しく当たりにくる大原学園をものともせずに前にでる。29分、右サイドでフリーになっていた近賀がドリブルで中央へ切り込んでゴールネットを揺らすと、続く32分には、山口がヘディングシュートを決めて、あっという間に3点のリードを奪った。



長野からやってきたサポーター。選手たちはその声援に支えられて
日テレに真っ向勝負を挑んだ。
 激しく前に出る相手を力づくでねじ伏せた日テレ。その強さが際立った前半だった。ところが55分、津波古がゴール前で得たFKを直接決めて大原学園が1点を返すと流れが変わる。「急にリズムが悪くなった。むこうも点を取りに捨て身に来ていたし、1点取られたところで自分たちのリズムでできなくて足が止まった」(宮村監督)。日テレからリズミカルなパス回しが消え、大原学園が日テレ陣内でプレーする時間が増え始めた。

 ただ大原学園には、そんな日テレを攻め込む力がなかった。「向こうのミスもあった。しかし、それでも得点にまでつなげられないということが課題」(種田監督)。結局、リズムを崩した日テレと、攻めきれない大原学園の試合は膠着状態に陥ったまま試合終了のホイッスルを聞くことになった。スコア的には3−1の快勝にも、「前半は、ある程度狙い通りにいけてたけれど、後半は失速した」と、宮村監督は渋い表情のままだった。

 日テレの強さと弱さ、そして大原学園の健闘が光った試合だった。しかし、互いの実力に大きな開きがあったのも事実。「まだまだ格の違いというか、完敗だった。スコアは3−1だったけれど、もっと大きな差があった」と種田監督も脱帽する。特に大きな差はボールを奪ってからの展開力。日テレは必ずといっていいほどゴール前まで攻め込んだが、大原学園は奪った後に展開できずに日テレに奪い返された。「展開だとか、切り替えの速さ。次にどこへ展開するのかという判断が遅い」。日テレとの違いをそう分析する種田監督。それが来シーズンの最優先課題になる。



「攻守の要」酒井と、「攻撃のキープレーヤー」小林。この中盤の展開
力を、どう生かすかがポイント。
 さて、女王奪回の階段をひとつ登った日テレ。「リーグ戦も勝てなかったし、去年も負けているんで、この試合は絶対優勝すると言う気持ちでやっています」と宮村監督の目には優勝以外の文字は見えていない。しかし、「とにかく打倒田崎ですね」と問いかけると、「決勝の前にもうひとつある」と慎重な答えが返ってきた。準決勝の相手の伊賀FCとの今シーズンの対戦成績は1勝1敗。次は今までのようにはいかない。まずは目の前の敵を確実に倒すこと。それが優勝への必要条件だ。

 そんな日テレが目標をかなえるための最大の課題は、やはり決定力だろう。リーグ戦で優勝を逃したのは、中盤を支配しながらもチャンスを決めきれずに取りこぼしをしたことによるところが大きい。「最後のところが決めきれない部分を修正できなければ、優勝はなかなか難しい」。宮村監督も優勝への絶対条件として決定力の向上を口にする。

 抜群の存在感で攻守の起点になる酒井と、2列目の3人が頻繁にポジションチェンジを繰り返して組み立てる攻撃は多彩そのもの。中盤の構成力は間違いなくL・リーグのトップをいくものだ。それをどうやって決定力につなげるか。「それを生かすために何をしなくちゃいけないのか、それを常に出すためには何が足りないのかというところが、まだまだ欠けている部分。いい状況であれば、いくらでもチャンスが作れる。そのいい状況を自分たちで作っていくというのが課題」(宮村監督)。1週間でチームをどこまで持ってくるのか。準決勝に注目したい。


(日テレ・ベレーザ) (大原学園JaSRA女子サッカークラブ)
GK: 小野寺志保 GK: 島田素英
DF: 戸崎有紀 須藤安紀子 四方菜穂 豊田奈夕葉 DF: 福山かおり 山木里恵 井上雅子 塩原理恵
MF: 酒井與恵 大野忍 小林弥生 近賀ゆかり MF: 大塚裕紀 松本美保 懸樋朋子(HT/小川恵) 杉山育代
FW: 山口麻美(72分/荒川恵理子) 永里優季(HT/伊藤香菜子) FW: 津波古友美子 中野絵美(72分/高坂はるな)
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