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 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
先制点を奪ってガッツポーズを見せる高畑(3)と宮間(9)
貫いた自分たちのサッカー。伊賀FCが岡山湯郷を一蹴。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 準々決勝 岡山湯郷Bellevs.伊賀フットボールクラブくノ一

2004年1月18日(日)13:00キックオフ 広島県営広島スタジアム 観衆:550人 天候:曇
試合結果/岡山湯郷Belle1−5伊賀フットボールクラブくノ一(前1−1、後0−4)
得点経過/[岡山湯郷]高畑(7分)、[伊賀]山岸(23分)、原(54分、56分)、宮崎(79分)、井坂(85分)


取材・文/中倉一志

 2年ぶり4回目の優勝を狙う伊賀FCにとっては思いもよらない展開だったろう。地力の違いを見せ付ける伊賀FCは立ち上がりから一方的に攻め込んだ。布陣は右サイドのMFである山岸を高い位置に張らせる4−3−3。センターの原がターゲット役を務め、その相棒である井坂、さらには左サイドのMF堤が俊足を生かして、岡山湯郷のディフェンスラインの裏へ飛びだす。岡山湯郷は防戦一方。伊賀FCが前半のうちに大量点を挙げると誰もが予想していた。

 しかし7分、先制点を奪ったのは岡山湯郷だった。右からのCKのシーン、ボールがペナルティエリア内にこぼれて混戦となった中、高畑がボールをゴールマウスに押し込んだのだ。一瞬の出来事だった。その後も試合の流れは地力にまさる伊賀FCが一方的に握った。放ったシュートは岡山湯郷の1本に対して10本。だがゴールが遠かった。23分には、山岸の左足から放たれた豪快なゴールで同点に追いついたものの、粘る岡山湯郷の前に追加点は奪えず、1−1のまま前半を折り返したのだ。



 激しく攻め込む伊賀FCと、人数をかけて守る岡山湯郷
「やはり、最初に取られたということで、どうしても焦りというものが出た」(江川重光監督・伊賀FC)。井坂、堤のスピードに岡山湯郷は中々付いていけない。試合はほとんどの時間帯を岡山湯郷ゴール前で費やされた。しかし、焦りからか、伊賀FCのリズムは単調で変化がなく、ただ闇雲に前に出るだけといった印象のほうが強い。「どうやって失点を少なくして、少ないチャンスを生かすかということにフォーカスを絞ってやっていました」(本田美登里監督・岡山湯郷)という岡山湯郷が、サイドからクロスボールを上げさせなかったのも、伊賀FCが攻めあぐねた原因でもあった。

 もちろん、粘り強く守った岡山湯郷の頑張りも見逃せない。先制点を奪った後はCFの中田を前線に残しただけで全員がゴール前まで引いて身体を張ってシュートを跳ね返す。そして一瞬の隙を突いて宮間が攻撃を仕掛ける。懐の深いドリブル、一瞬のうちにチャンスを作り出すキラーパス。そして広い視野。岡山湯郷は宮間が作り出すであろうワンチャンスを信じて耐えた。36分、その宮間がハーフウェイライン近くからドリブルを仕掛けてCKを奪う。不恰好だが、気迫のあるプレーを展開する岡山湯郷の狙い通りの展開で試合は進んでいく。

 だがハーフタイムを境に試合の流れは大きく変わった。「まず後半に修正したのは焦るなということ。自分たちのサッカーをやり続ければ問題はないと。そのためにはワイドを大きく使った展開をするんだと。あわてずじっくり、徹底して45分間やりなさいと」(江川監督)。その指示を確認するかのように、ロッカールームから出てきた宮本は、仁科、山岸と真剣に話し合いながらピッチの上へと向かっていく。



 修正点を確認しあう、(右から)宮本、仁科、山岸
 後半、伊賀FCがピッチの上で披露したサッカーは前半とはまったく異なるものだった。まず、縦に速いだけの単調なリズムが消え、緩急をつけたパスがピッチ一杯につながるようになる。そして、徹底してサイドへボールを集めてクロスボールをゴール前に集めだした。「あれがうちのやり方」(江川監督)。もともと実力では岡山湯郷を大きく上回る伊賀FC。その伊賀FCが自分たちのサッカーを徹底しはじめては岡山湯郷に付け入る隙はない。左右に振られ、岡山湯郷の守備網が崩れ始める。

 伊賀FCの逆転ゴールは54分、堤から左サイドをオーバーラップしてきた仁科へボールがわたる。このボールを仁科はワンタッチでゴール前へ。最後は中央で待っていた原が右足で合わせた。「クロスを上げられた時点で得点されるというのはイメージしていていました。クロスをあげさせない守備をしたかったんですけれど、ちょっと集中が切れたような気がします」(本田監督)。最も警戒していた形からの失点。勝負は、この1点で決まった。

 ここからは伊賀FCのゴールショー。56分には鮮やかに4本のパスをつないで、最後は原がヘディングシュートでゴールネットを揺らす。79分には左サイドからのクロスボールがゴール前にこぼれたところを宮崎が押し込む。そして止めは85分。岡山湯郷のCKの場面から鮮やかなカウンター攻撃を仕掛け、最後は井坂がGKとの1対1のシーンを落ち着いて決めた。「(自分たちのサッカーを)続けてもらえれば、こうなるだろうと思っていました」。後半だけで4得点という大量得点にも、江川監督は当然といった表情でロッカールームに引き上げた。



岡山湯郷のビッグフラッグ。美作町民とともにクラブを育てる。
「個人の持っている技術のレベルが違うことは確か。それと大きな試合の経験がない。また、L・リーグ自体を年間通して戦う経験は今年が1年目だった。そういう意味での試合運び、試合感というのが大きな差」(本田監督)。しかし、この日の先発の平均年齢が20.1歳。しかも10代の選手が4人をスタメンに名前を並べた岡山湯郷は、まだまだこれからのチーム。来シーズンはL2で戦うことが決まっているが、そこでの経験はチームを大きく変えるはずだ。物足りなかったというシーズンの借りはL1昇格という形で返す。

 さて、終わってみれば順調に準決勝に進出した伊賀FC。次なる相手は強敵日テレ。今シーズンはホームで完勝し、アウェイでは完敗。準決勝は今シーズンの決着をつける大一番になる。激しいゲームになることは間違いないだろう。「ポイントは先制点。最初に点が取れるかどうか、それまでディフェンダーがきちっと我慢できるかどうか、それと、うちのサッカーをやり続けることができるかどうか」。準決勝のポイントを江川監督は、そう口にした。注目の大一番は1月24日14:00に西が丘サッカー場でキックオフされる。






(岡山湯郷Belle) (伊賀フットボールクラブくノ一)
GK: 福元美穂 GK: 小林舞子
DF: 北岡幸子 福原理恵 松原めぐみ 藤井恵 DF: 藤村智美 馬場典子 宮崎有香 仁科賀恵
MF: 高畑愛美 赤井歩 宮間あや 中川理恵(80分/泉紀子) MF: 堤早希(60分/吉泉愛) 宮本ともみ 那須麻衣子(81分/中川愛美) 山岸靖代
FW: 中田麻衣子 鎌田友理(65分/田中静佳) FW: 井坂美都(85分/小松愛) 原歩
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