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 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
 前半4分、新甫まどかが挙げた先制ゴール。決勝に進むだけなら、
 この1点で十分だった。
追いすがるさいたまを振り払い、田崎が5回連続の決勝進出。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 準決勝 田崎ペルーレFCvs.さいたまレイナスFC

2004年1月24日(土)11:30キックオフ 国立スポーツ科学センター西が丘サッカー場 観衆:436人 天候:曇
試合結果/田崎ペルーレFC1−0さいたまレイナスFC(前半1−0、後半0−0)
得点経過/[田崎]新甫(4分)


取材・文/西森彰

 西が丘サッカー場のメインコートに隣接したサブグラウンド、田崎ペルーレFCとさいたまレイナスFCの選手たちがアップを行なっている最中の出来事だった。田崎のキャプテン・川上直子が軽い接触プレーで、苦痛に顔を歪めて「鳥かご」の輪から抜けた。「無理せんでええ」。早川典邦トレーナーが心配そうに見守る。フィジカル面で問題を抱えていたのは、試合勘を取り戻すのに苦労している大谷未央だけでなかった。

 17人全員が田崎真珠の社員。選手の質は文句ないが、量の面では他のクラブと大きな差はない。後顧の憂いなくプレーさせる環境を与えてもらっている企業チームは、反面、雇用人数という制限を設けられている。さらに、昨年は女子ワールドカップの予選、本大会と、代表のスケジュールも詰まっていた。主力選手の多くを招集されていた田崎の選手たちは、シーズン最後の大会を傷だらけで戦わざるをえない。連戦となる決勝に向けて浅い時間帯で決着をつけたい。

 これに対して「対田崎戦初勝利」を狙うさいたまは、先週の内容に乏しかったYKK AP東北女子サッカー部フラッパーズ戦から中5日、田口禎則監督がチームを立て直してきた。「田崎さんの戦いを見ていて、やってくることについては、自分なりに研究して、それへの対策を考えていたから」(田口監督)。ここまで田崎戦未勝利。翌日の決勝も見据えて戦う相手の隙に付け込むべく、この試合で100パーセントを出し切る戦いで挑む。



 試合開始から、予想されたとおり田崎が攻めて、さいたまが受ける形で進む。4分、右から真っ直ぐ伸びるボールを山本絵美が送り、手前でひとりスルーした後ろに小柄な新甫まどかが飛び込んで右足で、山郷のぞみが守るさいたまゴールを陥れる。この全日本女子サッカー選手権の1回戦から、決勝リーグ後半とは左右のキッカーを変えていた田崎。早速、その策が当たった。

 田崎は激しいプレスで前方へのボールを出させず、相手陣内でプレーを続ける。「前半、あと2つ、3つ取れそうな場面があったんですけれど、それをモノにできなかった」と田崎の仲井昇監督。徐々にコンディションが戻ってきた大谷と、今大会、攻撃陣の軸になっている鈴木智子が前線から攻守両面で大きく貢献する。そして「グングン上がってきた」(仲井監督)山本絵美が、柳田美幸、土橋優貴とポジションを代えながら、攻め立てる。

 そんな田崎の攻撃に、さいたまも懸命のディフェンスで立ち向かい、追加点を与えない。「(相手がきびしく来るのは)試合の前から分かっていることで。そこをいかに食い止めていくのかっていうのがみんなの課題でした」(田口監督)。サイド攻撃には2段構えで守備を行ない、大谷には簡単に前を向かせない。先制された立ち上がりの時間帯を除けば、ディフェンスが頑張ったさいたま。最少点差で折り返すことに成功する。



 決勝戦のことを考えれば、田崎は早めにリードを広げて選手交代を行ないたい。しかし、翌日を考えないさいたまの抵抗は後半に入っても衰えを見せないのだ。L・リーグ最終戦では、必要に迫られて大量得点を狙いにいった日テレ・ベレーザがさいたまの守備に手を焼き、逆転負けを喫している。ここで田崎が試合を決めるために、無理な前がかりを試みていたら、その二の舞を演じた可能性があった。

 しかし、チャンピオンチームはここで思考回路を変えた。最小限のノルマを果たすために、1−0で試合を凍らせたのだ。「割り切った? そうですね。とにかく相手陣内深くでボールをキープしておけば、そんなに危ない場面はないだろうと」(仲井監督)。田崎は少ない人数で前方にボールを運び、ボールを奪われても、整った守備陣形でカウンターを許さない。

 前半、中盤でプレーしていた安藤梢を前に上げて、1トップの岸一美と近いポジションでプレーさせたさいたまだが「警戒していたのは安藤ですね。彼女はスピードがあるし、本当に良いプレーヤーになった」(仲井間監督)という田崎の包囲網は分厚く、徹底的にマークされた。さいたまは2回ほど良い形で安藤にボールを届けたものの、守備にガソリンを使わされていたためにフォローが薄く、独力突破は得点に結びつかなかった。



 力を出し切ったさいたまは、2年連続で3位表彰を受ける。
 敗れたさいたまの田口監督は「女装してピッチに入りたいところでしたよ」とおどけた。「最初の失点が最後まで尾を引いたという感じでしたけれど、田崎さんと最後まで戦いができるようになったのは前進だと思います。しかし、土をつけるためにはまだまだ改善をしなきゃいけない部分がたくさんありますね」。勝って渋い表情だった先週とは全く違う笑顔で、試合を振り返った田口監督。ひと月前に日テレから初勝利を奪ったチームは、田崎からの金星を狙ってレベルアップを図る。

「先週の試合でやったんですよ。代えたかったんですけれど、1点差では難しいですね。もっと早く決めたかった…」。仲井監督は小声で川上のケガを認めた。持ち味である本来の運動量を欠いた川上はカバーリング役を淡々とこなした。皮肉なことに、これが「1−0」の確定に貢献していた。彼女がベストコンディションで攻撃参加をしていたら、もっと早く試合は決まっていたのか、それともさいたまの描く逆転のシナリオにはまっていたのか。もちろん、その答えは用意されていない。








(田崎ペルーレFC) (さいたまレイナスFC)
GK: 大西めぐみ GK: 山郷のぞみ
DF: 磯ア浩美、白鳥綾、佐野弘子 DF: 田代久美子、笠嶋由恵、西口柄早
MF: 土橋優貴、川上直子、新甫まどか、柳田美幸 、山本絵美 MF: 片桐ひろみ(76分/山本有里)、高橋彩子、赤星照美、木原梢(82分/仲希理子)、安藤梢、岩倉三恵
FW: 鈴木智子、大谷未央 FW: 岸一美
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