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 第26回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
2年連続でさいたまの胸を借りる文教大明清イレブン。
さいたま、道産子の挑戦を退け、三冠への第一歩を記す。
第26回全日本女子サッカー選手権大会2回戦 さいたまレイナスFCvs.北海道文教大学明星高校

2004年12月5日(日)11:00キックオフ 美作ラグビー・サッカー場 観衆:200人 天候:曇り
試合結果/さいたまレイナスFC6−0北海道文教大学明星高校(前半4−0、後半2−0)
得点経過/[さいたま]法師人(0分)、高橋唯(11分)、笠嶋(17分)、北本(34分、58分)、梅川(45分)


取材・文/西森彰

 12月4日(土)から開幕した第26回全国女子サッカー選手権大会。L1の8チームはそれぞれのブロックでシードされ、日曜日の2回戦から登場となる。まず、美作ラグビー・サッカー場に姿を現したL1チームが、さいたまレイナスFCだ。このL1優勝チームは11月に4日間ほど、この地で合宿を張っていた。大橋ジャパン最初の代表合宿で、練習を見ていた田口禎則監督に、そのあたりを尋ねた。

「日頃、苦労しているグラウンドの確保ができること。それと来年、湯郷さんがL1に上がってくる。遠征することにもなるから、そこまでの交通アクセス等の下見も兼ねて。逆に来年、国体を控えている岡山の関係者の方は、我々から大会運営のノウハウも聞きたいだろうし」(田口監督・さいたま)

 早速、その下準備が生きるトーナメント表になった。

 これに挑戦するのが、北海道代表の北海道文教大学明清高校だ。前日の1回戦では、北信越代表の富山レディースSCを5対1で破った。昨年もさいたまと2回戦で顔を合わせ、その時は0対7で敗れている。「少しでもその差を詰めたい」「1年間の成長を確認したい」。高崎裕治監督以下、チーム全員が挑戦意欲を抱いていたはずだ。



ひとりぼっちの山郷。前半はハーフコートゲームだった。
 気合を入れてゲームに入った文教大明清だったが、キックオフ後30秒も経たないで、さいたまにノーホイッスルゴールを決められてしまう。中央の岩倉三恵から、前線の高橋唯にスルーパスが通り、左からのセンタリングを右足で合わせたのは法師人美佳。「彼女も次の時代を担うプレーヤーのひとりなんで、厳しく言っています」(田口監督)。ゲームを通じて細かくプレーの質を問われていた若手が奪った1点は、対戦相手に大きなダメージを与えた。

 何しろまだまだ高校生チームである。試合開始早々の失点で、チャンピオンチームへの恐怖心が芽生えてしまっても仕方ない。ボールホルダーへのチェックを互いに譲り合い、2列目の走り込みにも、中盤の選手が「間に合わないように」遅れてついていく。レギュラーの当落線上に乗っているプレーヤーもいるさいたまは、そんな文教大明清に容赦なく襲い掛かる。11分に高橋唯、17分に笠嶋由恵がゴールを奪う。昨年以上の点差は間違いないと思われた。

 さらに笠嶋のゴールから1分後、今度はペナルティボックス内に侵入した安藤梢が、文教大明清のDFに引っ張って止められる。高校生チームに甘めのジャッジをしていた吉澤久恵主審だったが、Jリーグで言えば一発レッドでもおかしくないファールをとらない訳にはいかない。PKだ。自らボールをセットした安藤は、ゴールの左隅を狙った。しかし、このキックを文教大明清のGK・浅見萌がセーブした。スタンドから、この日一番の拍手が沸きあがった。

 この1プレーがチャレンジャーに勇気を与えた。この直後に、キャプテン・浮田あきなの好ディフェンスも飛び出す。ひとつふたつ自分たちのプレーが通じたことで、文教大明清の選手たちが落ち着きと自信を取り戻した。34分に北本綾子に追加点を奪われても、もう下を向く者はいなかった。



さいたまの攻撃を防ぐ浮田あきな(2番)
 戦力を確認しておきたいさいたまは、ハーフタイムに岩倉を下げて、梅川幸子を入れる。そして懸命に守る文教大明清のゴールを2度に渡ってこじ開ける。交代で入った梅川が45分に左ポストの内側に当たるシュートで5点目を奪い、6点目となる北本のゴールもアシストした。
「7人も代表に引き抜かれると来年は厳しいんじゃないですか?」と質問した私に「五輪から帰ってきた山郷や安藤が驚くぐらい、チーム内の競争力が高まってきています。代表選手が抜けても、ウチにはゲームに飢えている選手たちがたくさんいますから」と胸を張っていた田口監督。その自信の根拠を見せ付けられた感じだ。

 6点を奪われた文教大明清も、試合開始時とは全く異なる高い戦意で、さいたまに立ち向かう。前半は高崎監督の声だけが響いていたピッチで、選手同士がコミュニケーションをとっていた。「枚数足りないよ」「1人戻って」。写真撮影のために、後半は文教大明清ゴール裏から試合を見ていたが、ゴール前で体を投げ出す彼女たちのプレーは、前半と同じ選手たちとは思えなかった。

 残り5分まで、文教大明清の得点チャンスは、3本のFKを浮田が前線に放り込んでからの混戦だけだった。しかし、後半の35分、右サイドでボールを持った中野真奈美が中央へドリブルで切れ込む。呼応するかのように周りの選手がスペースを作り、シュートコースが開いた。思い切ってシュートを放つ中野。左ゴールポスト付近、これ以上無いコースにいったかに見えた。

 しかし、相手が悪かった。ブラインドからのシュートに、1テンポ反応が遅れたかに見えた山郷のぞみだったが、球筋を読みきるときっちりとこのシュートをゴールの外に弾き出した。千載一遇のチャンスは霧散した。0対6。それでも文教大明清は、昨年よりも1点分、差を詰めた。



右SBの永留かおる(23番)の攻撃参加も目立った。
「文教大明清にも良い選手がいますね。2番のキャプテンの子(浮田あきな)とか、中盤の最後にシュートを打った子(中野真奈美)とか。大学行かないで社会人でプレーをするなら、『ぜひレイナスに来てほしい』と声をかけたくなるようなプレーでしたよ(笑)。11人全体で考えると、確かにこちらが上ですが、個々の選手を見ているとL・リーグでやれても遜色無い選手じゃないかなと思いました。北海道にも良い選手がいるんだなと」(田口監督)

 北海道の記者から求められたコメントだから、多少のリップサービスはあったかもしれない。だが「先生もとても熱心な方で、ああやって選手が育ってくるというのは素晴らしいことだと思います。対戦相手や環境には恵まれていないところでね」という部分は素直に受け取って良いだろう。二冠女王に輝いたさいたまもまた、パワーアップしているのだから、ただ1失点詰めただけではない。胸を張ってほしい。

 三冠を目指すさいたまは、まずは無難なスタート。それでも国体、L・リーグに続く優勝への手応えを尋ねると、「今日のような試合をやっているとチャンスは無いなというのが率直な意見ですね」と田口監督は渋い表情を見せる。「差がある相手との対戦でも、自分たちのサッカーをしないといけないのですが、相手に合わせてしまっている。自分たちの首を絞めるプレーを、分かっていてやってしまうというのは、危機感が足りないということ。これからどんどん相手が強くなっていく中で、今日のような試合をやっていては厳しいですね」。

 競争心を煽られたこの日の選手たちは、傍から見る限り、田口監督が同じように厳しい点数を付けていた、昨年度の準々決勝YKK APフラッパーズ戦などとは比べようもないほど良かった。この採点基準の違いこそが、チーム力が上昇している証拠なのだろう。日を追うごとに成長していくさいたま。TASAKIペルーレFCに続く三冠街道は、視界が開けている。


(さいたまレイナスFC) (北海道文教大学明星高校)
GK: 山郷のぞみ GK: 浅見萌
DF: 永留かおる、田代久美子、笠嶋由恵、西口柄早 DF: 大石早希子(30分/岡村星来)、波佐谷灯子、浮田あきな、波佐谷唯
MF: 高橋彩子(62分/森本麻衣子)、法師人美佳(52分/木原梢)、岩倉三恵(H.T/梅川幸子)、安藤梢 MF: 小森有華、目黒宝、石田梨紗、中野真奈美
FW: 高橋唯、北本綾子 FW: 前田亜里沙、堀真以子
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