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 第26回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
ホーム・岡山湯郷イレブン。
岡山湯郷、リターンマッチを制し、地元開催で2連勝を飾る。
第26回全日本女子サッカー選手権大会2回戦 岡山湯郷Belle vs. 大原学園JaSRA女子サッカークラブ

2004年12月5日(日)13:00キックオフ 美作ラグビー・サッカー場 観衆:700人 天候:曇り
試合結果/岡山湯郷Belle3−1大原学園JaSRA女子サッカークラブ(前2−0、後1−1)
得点経過/[岡山湯郷]高畑(9分)、田中(18分)、中田(68分)、[大原学園]堤(75分)


取材・文/西森彰

「スコアも試合内容も、本当に別のスポーツみたいになっちゃいましたね(笑)。最後は向こうが9人になっていましたし。しかし、勝負弱かった。あれでL1で戦うのが1年遅れた。でも、今年の大原は一度も勝つ喜びを知らないまま、シーズンを終えようとしている。いきなり上に行って滅多打ちに合うよりも、L2で勝つことの楽しさ、そして勝つことの難しさを知った上でL1に挑戦できて、却って良かったかも知れません」

 昇格を決めた後に、そう語った本田美登里監督(岡山湯郷Belle)は「こうなって初めて言えることですけれども」と最後に付け加えた。2003年、西日本リーグで4位に終わった岡山湯郷Belle。下位リーグ1位の実績を引っさげて臨んだL1参入決定戦は、4者が2試合を終えて1勝1敗。最終戦で全てが決することになった。そしてこの最終戦で岡山湯郷は、大原学園JaSRA女子サッカークラブに3対4のスコアで敗れた。L1に入れなかったショックは大きかった。

 1年後、L1昇格を決めて、ホームの美作ラグビー・サッカー場に、因縁の相手を迎える。本来なら、最高のL1壮行戦だった。だが、アクシデントがそんな気持ちの余裕を奪い取った。日本代表合宿に何度も呼ばれている正GK・福元美穂がトレーニングマッチで負傷したのだ。ゴールマウスを任されたのは赤井歩。本来DFの彼女は1ヶ月足らずの期間でGKに仕立て上げられた。落とすことができない初戦は「緊張した。『1対0でも勝てれば良い』と言い聞かせて戦った」(宮間あや・岡山湯郷)。東京女子体育大学との初戦は3対1。薄氷を踏む勝利だった。



アウェー・大原学園イレブン。
フィールドプレーヤーがマウスを守る岡山湯郷に対して、大原学園はこの日の第1試合を戦った文教大明清のOG・澤田法味が先発した。DF兼GKの堤晴菜を含めると、3人のGKがメンバーに入っている。「(『一人借りたかったんじゃないですか?』)できることなら、本当にそうしたかったですよ」と苦笑した本田監督。草サッカーや練習試合なら、それができたかも知れないが、公式戦で許されるわけがない。遠くからでもゴールを狙いたい大原学園だが、岡山湯郷もそう簡単にはシュートレンジまで近づけさせない。

「キックオフ直後は向こうも気持ちが入っていましたね。やっぱり、落ちるチームと上がるチームの対戦なんで、意地があったんだと思う。ここでペースを渡してしまうと1年間L1でやってきたチームだし、まずいと思いました」(宮間)

 岡山湯郷は、最前線の田中静佳が守備に奔走し、宮間もボランチの位置まで戻って守る。相手のシュート本数を減らそうと、前線からいつになく厳しいプレスがかかった。試合開始から約10分間、カナダ人2トップをターゲットにした大原学園の攻撃を、岡山湯郷は懸命に堪えた。「あそこの時間帯を凌げましたから。昨日は1回戦だったので心配していたけれど、今日は自分も落ち着いて見ていられました」と本田監督。連戦にはプラス材料もあったようだ。

 そしてセットプレーの1チャンスをモノにする。9分に得た左からのCK。宮間が蹴ったボールはGKの頭上を越えてから急に失速して落下する。ファーサイドに詰めた高畑愛美が上手く押し込んだ。「GKの頭を越すだけじゃ、ヘディングで相手も競ってくるんで、なかなか難しい。だから、あそこで失速して落ちるボールを蹴りたいと思っていました。ずっと練習してきた形だったから嬉しい」と宮間。

 これで勢いに乗った岡山湯郷は、徐々にペースを上げていく。18分、宮間の左CKが同じような軌跡を描いた。混戦の中で田中静が競り勝って、追加点を奪った。得意のセットプレーでゴールを連取した岡山湯郷は、2対0のリードを奪って折り返した。



安田邦子は2日で160分間、右サイドで上下動した。
メインスタンドはほぼ満席となった。
 後半に入ると、L1の意地を見せたい大原学園が、選手交代で活路を開こうとする。まずはハーフタイムに、周囲との連携が噛み合っていないヒックス・ロザリン・アインスリーを下げて、山本裕美を前線に投入する。山本はブチャン・クリスティーナの周囲で衛星化しながら、後続との間に連絡線を作る。51分には、高坂はるなを右サイドハーフに入れた。このポジションで先発した濱垣香菜が、左サイドに回ってシュートを放ち始める。雨が時折降り注いだピッチ上。連戦の岡山湯郷には疲労の見える選手も出てきた。

 だが、ここで途中出場の9番・中田麻衣子が決定的な仕事をした。持ち前のスピードで大原学園ゴール前の混戦をすり抜け、見事なシュートをゴールに突き刺したのだ。前日は80分間フル出場し、この日も勤務先のホテルで早朝からフロント業務をこなしていた中田。「2戦続けてなんで、みんな疲れはあったと思うけれども『絶対に負けたくない』という気持ちもあった。だからいけたと思います」(中田)。負けん気の強いストライカーのゴールが、試合を決した。

 大原学園も交代選手の堤晴菜が、ハーフウェーラインを越えたあたりから、スーパーシュートを叩き込んだ。それまで無難に守っていたGK・赤井だが、普通のGKでも止められないような凄い弾道。打った堤を誉めるべきだろう。このゴールに、遠来の大原学園応援団が一瞬盛り上がったが、時既に遅し。岡山湯郷が昨年の借りを返し、ベスト8へ進出した。



 2回戦からの登場で体力面のアドバンテージがあった大原学園だが、大会初戦のアウェー開催によって、「昇降対決」への気持ちが空回りしてしまった。シードの不利な面がモロに出た形の悔やまれる敗戦だった。今シーズン、公式戦で1勝もできなかったことが、チームの士気に影響しないか、その点が心配だ。幸い、来期に向けて長いインターバルがある。バックアップ体制を含め、再びL1の舞台を目指すだけのチーム力はある。きっちりと立て直してほしい。

 岡山湯郷の本田監督は「これでレイナスに通用するかというと、通用はしないと思う。だから、打ち合いができたら良いなと思います。『打ちに行くぞ!』っていう感じで。あんまりやられても精神的な苦痛が大きいと思うんですけれど、宮間からのホットラインで何とか1点」と笑いながら、準々決勝への抱負を語った。GK不在のスクランブル、そして地元開催。相当なプレッシャーがあったはずだ。ノルマをクリアし、肩の荷は降ろした。次のゲームは逆にさいたまの方にプレッシャーがかかる。

「やれることをしっかりやって、上を目指してしっかりやっていきたいです。できないことはないと思うし、同じ女の子だし、自分たちのサッカーをすればいいと思います」(中田)

「レイナスですけれども、練習試合を何試合かやって、1本だけ勝ったゲームがあるんで。2対0で。だからその時の良いイメージを持って、1週間、準備をしたいと思います」(宮間)

 殴りあうだけの拳とハートは持っているようだ。


(岡山湯郷Belle) (大原学園JaSRA女子サッカークラブ)
GK: 赤井歩 GK: 澤田法味
DF: 城地泰子、藤井奈々、高畑愛美 DF: 塩原理恵(67分/堤晴菜)、山木里恵、福山かおり、井上雅子
MF: 安田邦子、北岡幸子、福原理恵、杉本あすか(63分/鎌田友里)、宮間あや MF: 濱垣香菜、杉山育代、中野絵美、津波古友美子(51分/高坂はるな)
FW: 中川理恵(54分/中田麻衣子)、田中静佳(73分/加戸由佳) FW: ヒックス・ロザリン・アインスリー(H.T/山本裕美)、ブチャン・クリスティーナ
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