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 第27回全日本女子サッカー選手権大会 <前へindexへ>
2006年最初の表彰台に立ったのは日テレ・ベレーザ
誰にも譲らぬ、女王の椅子。日テレ・ベレーザ、2005〜2006シーズン女子三冠を達成。
第27回全日本女子サッカー選手権 決勝 日テレ・ベレーザvs.TASAKIペルーレ

2006年1月1日(日)10:32キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:18,545人 天候:曇
試合結果/日テレ・ベレーザ4−1TASAKIペルーレ(前1−0、後3−1)
得点経過/[日テレ]大野(44分)、[TASAKI]鈴木(63分)、[日テレ]荒川(70分)、永里(75分、86分)

取材・文/西森彰


 昨年から、天皇杯決勝と同日開催になった全日本女子サッカー選手権決勝。今年は、多数の浦和レッズファンが押し寄せることを想定し、日テレ・ベレーザとTASAKIペルーレのファンはどちらも清水エスパルスサイドに陣取った。観客数は18,545人と、女子サッカー認知の面で大きな効果があるのは確かだが、日頃から支えてくれているコアファンへ多少の配慮があっても良かったか。数百人レベルの話でしかないし、解決策がないとは思えない。このあたりは、次回以降に期待すべき部分だ。

 さて、この決勝の舞台に上がったのは、勝ち進むべくして勝ち進んできた2チーム。今シーズンもL・リーグ、岡山国体の二冠に輝く、前回女王の日テレ・ベレーザ。なでしこスーパーカップや、リーグ戦も無敗だから、丸一年、どのチームにも負けていないことになる。これに対するは、国体、リーグ戦といずれも日テレの次席につけるTASAKI。こちらは2年ぶりのファイナル進出だ。



ゲーフラを掲げて選手の三冠達成を後押しする日テレサポーター
 元日決勝を1年前に経験している点では、日テレに分がある。「一昨年までは連続して出ていた決勝ですが、昨年は出られませんでした。これだけのお客さんの前なので、緊張している選手もいましたね」とTASAKIの仲井昇監督。

 さらに、久しぶりの対戦となる日テレの荒川恵理子、永里優季、大野忍が、スピードを生かしてプレッシャーをかけたために、序盤はボールの収まりどころを探すのに一苦労。しかし、ペースを握りかけた日テレも、すぐに伊藤香菜子が負傷退場してしまう。ボールが外に出るまでの数分間、10人で戦ったこともあってペースダウン。せっかくの好スタートを生かせなかった。両チームの矛先が鈍り、手の内を知った相手の良さを消しあう、地味な戦いになった。

「シーズン終盤ということか、対戦相手のプレッシャーか、決勝戦という舞台なのか。理由はわかりませんが、どちらも単純なミスが目立ちましたね。こちらの期待が大きかったのもあったですけれども」とは、なでしこジャパンの大橋浩司監督の感想。

 TASAKIは両サイド深くにウイングバックを走らせ、日テレの川上直子、中地舞の攻め上がりを封じる。日テレは、TASAKIの大谷未央、鈴木智子の2トップに自由を許さず、シュートを許さない。前半のシュート数は日テレが3本、TASAKIが1本、両チームあわせて僅か4本と数えるばかり。その数少ないチャンスを日テレが生かす。ロスタイム1分の表示が出ていた46分過ぎ、酒井與惠の縦パスに大野忍が走り込む。相手DFの手前で右足をあわせ、ループシュートを放つ。これが、やや中途半端なポジショニングになったTASAKIのGK・秋山智美の頭上を襲った。

「秋山にもちょっとかわいそうな部分がありました。あれ以外は全部止めてくれていましたし。ただ、あれがなければ、もう少し変わったところもあったかもしれません」(仲井監督)。思い通りにゲームを運んでいたTASAKIには、厳しい時間帯の失点だった。



1点を追うTASAKIの後半のキックオフ。一時は同点に追いついたが・・・
 1点のビハインドを背負ったTASAKIの仲井監督は、サイドからのクロスを徹底するように指示を出した。ダイナミックな展開はTASAKIのストロングポイント。大きな展開で、TASAKIは強引に流れを引き寄せる。日テレの選手は自陣に足を止められ、前に出ることができない。そして63分、FKから生まれた混戦を、鈴木がポストに激突しながら押し込んだ。「後半に入って、TASAKIのペースになって、そこで同点にされて、正直ちょっと焦った」(澤穂希・日テレ)。さすがに女王にも少なからず動揺があった。一方、追いついたTASAKIはかさにかかって攻める。完全に流れは逆転したようにも見えた。

 しかし、TASAKIのミスを捉えて勝ち越したのは日テレのほう。TASAKIゴール前の混戦からこぼれたボールを、つなごうと試みた下小鶴綾がボールコントロールを誤る。それまで抑えられていた荒川が、これを攫った。「それまで1本もシュートを打っていなかったと思います。だから、チャンスがあったら、狙おうと思っていました」。ペナルティエリアに入る手前から思い切ったシュート。荒川の右足から放たれたボールは、TASAKIのゴールネットを揺らした。

 この、荒川のゴールがゲームの均衡を崩した。75分、相手のライン裏に走った大野が、相手DFがクリアしきれなかったボールを拾って、永里に渡して3点目。86分にも大野から、永里と同じパターンで4点目。TASAKIのセットプレーにもDF陣が良く耐えて、4対1。2005〜2006シーズン三冠を達成した。



日テレサポーターに引けを取らない声援を送ったTASAKIサポーター
 敗れたTASAKIは、五分のゲームを展開しながら、一瞬の隙を突かれて、2年ぶりの戴冠はならなかった。

「後半、1点を何とか返して、他にも何本かチャンスがあったんですけれども、それを外してしまった。最後のところで精度が少し足りなかった。同点ゴールを取った後、良い時間帯になっていたんで、2失点目のところは、もう少しセーフティーに蹴っておけば良かった。そうすれば、もう少しリズムもとれたのかな。まあ、シーズンの課題が出てしまった結果ですね」(仲井監督)

 これでTASAKIは、三冠の全てで日テレの2位。ライバルとの今期5回の対戦で、1分け4敗と勝利をあげることができなかった。「今後はよりいっそう、個々の能力を高めていくことですね。向こうの方が個の部分を前面に出してきていた。今日得点した鈴木のプレーなんかを、他の選手たちにもどんどん吸収していってもらいたい」。日テレとの差を詰める上で必要な要素を訊かれた仲井監督は、そう答えた。

 日テレがTASAKIに互せるだけの走力を身につけたように、TASAKIも日テレに劣るテクニックの部分で向上を図っている。ポゼッション勝負でも、だいぶ戦えるようになってきた。さらなる上積みで、来期こそ、日テレの牙城を崩したい。



二連覇に加えて三冠達成。その強さはとどまるところを知らない
 勝った日テレは、これで2005〜2006シーズンの三冠を達成した。「良いサッカーをするための良い準備」をテーマにしていた松田監督の指導の結実と言える。「味方がボールを失ったら」「自分にボールが来たら」「相手がミスをしたら」。こういった状況をあらかじめ想定して、解答を用意して試合に臨む。そして、練習の中で、その引出しを増やしていく。前に出てきているGKの頭上を破った大野のループシュートや、相手DFがコントロールを乱した瞬間、ボールを奪ってシュートを放った荒川の2点目は、その「良い準備」の賜物ではなかっただろうか。

 もうひとつの大きな要因は、全員がチームの勝利に第一プライオリティを置いていることだ。「もともと持っている物のレベルが高い選手ばかり。当然、それを出せずにベンチに座っている選手がいるのは事実なんです」。紅白戦がそのまま代表合宿になりそうな分厚い選手層は、ひとつ間違った方向に進むと手がつけられない。しかし、選手たちは起用方法に不満を漏らすよりも、己を高めることに力を注いだ。

 それは、チームオーダーで2列目に置かれた大野と、ベンチスタートになった小林弥生の、この日の働きでも明らかだと思う。大野がリーディングスコアラーを逃したのは、ゴールから遠いポジションに移されたこともあったはずだが「2列目だと、完全に前を向いてボールをもらえることが多い。自分はドリブルが得意ですから」と、そこにポジティブな面を見出している。試合開始から僅か10分でのスクランブル出場に対応した小林は、これまでの試合でも誰かが傷んだ時点で、すぐにアップにかかっていた。各人が己の果たすべき役割を全うする。「本当に全員で勝ち取った勝利だと思います」は松田監督の実感だろう。

「今日のゲームを戦って、今年、また頭の中でやることが増えてきた感じがしていますね」と指揮官が語れば、「『早く終わってゆっくりしたいな』と思ってはいたものの、いざ終わってみると特にすることもないし(笑)、課題もあるので『サッカーしてもいいかな?』と思いますね」(川上)と選手たちも新たなシーズンの到来を待っている。チーム一丸でさらなる高みを目指す日テレ。どこまでタイトルを増やすのか、空恐ろしくなる。


松田岳夫監督(日テレ・ベレーザ)試合後のコメント
仲井昇監督(TASAKIペルーレ)試合後のコメント


(日テレ・ベレーザ) (TASAKIペルーレ)
GK: 小野寺志保 GK: 秋山智美
DF: 川上直子、岩清水梓、四方菜穂、中地舞 DF: 磯崎浩美、中岡麻衣子、下小鶴綾
MF: 酒井與惠、澤穂希、伊藤香菜子(13分/小林弥生)、大野忍 MF: 新甫まどか、柳田美幸、土橋優貴(77分/大石沙弥香)、佐野弘子(78分/甲斐潤子)、山本絵美(84分/白鳥綾)
FW: 永里優季(87分/近賀ゆかり)、荒川恵理子 FW: 大谷未央、鈴木智子
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