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 サッカーのある風景 03/06/01 (日) <前へ次へindexへ>

 スタジアムへ行こう!!


 文/中倉一志
 週末になると、朝も早くから起き出して家を飛び出す。愛用のデイバックには双眼鏡とノート、そしてストップウォッチの三種の神器。飛び乗った電車の中で対戦カードを確認しながら試合の行方を予想する。元旦から大晦日までの53週間。このスケジュールは休むことなく続く。多いときで1日3試合。週末だけでも年間100試合以上を観戦している勘定になる。仕事とはいえ、我ながら好きだなあと感心するが、何年経っても飽きる気配はない(笑)。

「J1は30試合、J2は44試合しかないじゃないか」。そう仰るなかれ。サッカーというスポーツは、およそシーズンオフとは縁がないスポーツ。Jリーグの開催期間以外では国際試合や天皇杯が行われている。各ブロックや県レベルの大会、大学、ユース、高校から幼稚園まで、そして女子サッカー、あらゆるカテゴリーの試合を含めればサッカーをやっていない週末を探すことなど不可能だ。かくして、今日もデイバックを背負ってスタジアムへ向かうことになる。



 これだけ試合を見ていれば、がっかりするような試合もあるだろうと心配される方もいらっしゃるかもしれない。ところが、そんなことがないからサッカーというスポーツは不思議なものだ。正確に言えば、Jリーグや国際試合でがっかりすることはあっても、それ以外の試合で失望することはない。試合を見る前の期待度が違うという側面もあるが、勝敗の結果を気にせずに見る分、サッカーそのものの魅力に触れることが出来るからだろう。

 技術や戦術の高さ、選手とスタンドの一体感、そして勝つか負けるかのギリギリの緊迫感。こうしたものを楽しむのなら、レベルが高ければ高いほど、そして大会の格式が高ければ高いほどいい。そんな試合のスタンドに身を置くことが出来れば、言いようのない高揚感に包まれるはずだ。フランスW杯最終予選の第1戦。私は試合前の君が代を歌いながら足が振るえ涙が流れた。そしてゴールのたびに隣の見知らぬ人と抱き合った。ギリギリの勝負を展開するからこそ味わえた感動だった。



 しかし、サッカーの魅力はそれだけではない。90分間という決して短くない時間を戦いながら、22人の選手たちがボールに触れる回数は驚くほどに少ない。平均すれば、1人当たり5分弱しかボールに触れていない計算になるが、その僅かな時間のためにピッチを走り回り、せいぜい2〜3回しか訪れないゴールの瞬間のために小さな努力を積み重ねる。しかも、決して平坦ではないグラウンドと気ままな天候、ミスジャッジ等々、さまざまな不確定要素を受け入れながら。その過程にこそサッカーの本当の魅力がある。

 それは、どんなカテゴリーの試合であっても変わらない。自分たちが試合のために積み重ねてきたもの、過去の経験で得たもの、そういったものを駆使しながらボールを運ぶ。ルールは僅かに17条。制約されるものが少ない分、チームごとのカラーが色濃く出る。攻め方にも、守り方にも、そして窮地に追い込まれたときの打開策にも。そんな試合に目が離せる時間などは少しもない。無名の大会の、無名の選手たちの試合。しかし、90分間はあっという間に過ぎていく。



 こうした試合には、チームや選手ではなく、サッカーならば何でもいいというファンが訪れ、なんともいえない雰囲気をかもし出している。とある試合でのこと。スタンドの設置されていない補助競技場の試合だったため、試合に熱中した私と友人は気がつくとピッチサイドに立っていた。ボールを保持する選手に対し、DFが巧みに身体を入れてボールを奪った。その瞬間、「上手い!」。私と友人、そしていつの間にか隣に立っていた初老のサッカーファンの声が重なった。「おまえらサッカー知ってるじゃねえか」と目で語りかけてくる。「いえいえ、それほどでも」と目で返す私と友人。これもサッカー観戦の魅力だ。

 今日も、そんなサッカーの魅力を楽しみたくてスタジアムへ足を運ぶ。そして、また新たな発見があるはずだ。そして、それは際限なく続いていく。本当にサッカーとは奥が深い。残念なことに、こうした試合に足を運んでくれるサッカーファンはまだまだ少ない。世間の注目は、どうしても代表やJリーグに集中しがちだ。でも、サッカーの魅力が溢れているのは少しも変わらない。スポーツが好きな人なら楽しめることは間違いない。週末の予定がない方は、近くのグラウンドへ出かけてみませんか。きっとサッカーの試合をやっているはずですから。
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