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 サッカーのある風景 03/07/03 (木) <前へ次へindexへ>

 ベルマーレの10年、そして今日から・・・


 文/神 慶知 写真/村上来夏
 誰かと話をする時、私が「ベルマーレ好きなんです」と言うと、大概きょとんとされるか、反応があったとしても「ああベルマーレ・・・平塚ね」と言われてしまいます。そんな人の為に、まずはベルマーレの歴史を簡単にご説明致します。



 ベルマーレというチームは、日本にプロフットボールリーグ『Jリーグ』ができた93年、その華やかな表舞台のすぐ下でジュビロ磐田、柏レイソルとともにJリーグを目指し戦っていました。今となっては信じてもらえないかもしれませんが、当時のベルマーレ平塚はあのジュビロ磐田を抑えJFLの頂点に立ち、Jリーグ昇格を決めたのです。

 94年、岩本輝雄、名良橋晃の超攻撃的サイドバック、点取り屋の野口幸司、CB名塚善寛、ボランチ田坂和明ら、若く才能に満ち溢れた日本人選手たちと、元ブラジル代表MFベッチーニョを看板に超攻撃的サッカーを展開。ファーストステージでは12チーム中11位と振るいませんでしたが、セカンドステージで大爆発、昇格初年度のチームながらあと一歩で優勝を逃し2位に躍進、しかもその年の天皇杯ではなんと優勝してしまいました。

 翌95年に韮崎高校を卒業した中田英寿を獲得、地球上でその名を知らない人はいない位の選手に成長した彼の、プロフットボーラーとしての第一歩はベルマーレ平塚でした。小島伸幸、呂比州ワグナー、洪明甫…数多の優秀な選手が在籍したチームでしたが98年にメインスポンサーで大手ゼネコンのフジタが経営難から資本撤退を表明すると有力選手を抱えることもままならず、翌99年、J2へ降格してしまいました。J2に参戦した2000年からベルマーレ平塚はホームタウンを広域化、湘南ベルマーレとして生まれ変わり2003年になってもまだ、J2で戦い続けています。

 湘南ベルマーレのホームタウンは神奈川県厚木市、伊勢原市、小田原市、茅ヶ崎市、秦野市、平塚市、藤沢市、大磯町、寒川町、二宮町の7市3町。試合会場はベルマーレ平塚の時代から変わらず平塚競技場。湘南地域独特の海風とまぶしい陽光が注がれ、週末ともなれば競技場の周囲にある総合公園に家族連れが多数訪れます。JR平塚駅等からシャトルバスで10分、歩けば20分、試合のある日であってもそれを感じさせないホームタウンに一抹の寂しさを覚えますが、一歩競技場に足を踏み入れれば熱いサポーターの声援と、J2とは思えないスタジアム演出で「これから試合が始まる!」と思えるでしょう。



 湘南ベルマーレの2003年は周囲からの大きな期待を受けてスタートしました。2002年ワールドカップ日本代表コーチであったサミア氏を新監督に迎え、イングランドプレミアリーグのミドルズブラでプレーしていた大型FW、コロンビア代表経験もあるハミルトン・リカルドを獲得、小長谷社長も目標を3位以内と掲げ、開幕戦にはメインスポンサー「リズメディア」所属のアーティストMISIAさんも来場、雨さえ降らなければ入場者数もフルハウスとなっていたはずでした。試合も快勝し、誰もが明るい未来を予想できた立ち上がりだったのですが、その後連敗を重ね、気がつけば最下位。サミア氏は辞任してしまいました。

 サミア氏の後を受け、新監督に就任したのは昨年からトップチームのコーチを務めていた山田松市氏。就任記者会見で「やるべきことは見えている」と自信のあるところを明らかにされ、5試合を得点2、失点3とまずは守備から手直しをしましたが、4引き分け1敗と勝利に結びつきません。しかし選手は気持ちの入ったプレーを見せてくれるようになり、先制されても追いつく粘りも出てきたことで、後は勝利という結果が出れば自信になると思います。

 そうして迎えた第20節、4位の水戸とホーム平塚競技場での対戦、スターティングメンバーはGKに小林弘記、正GKの鈴木正人が13節川崎戦で負傷、交代後4失点と散々なデビューを迎えましたが、その後8試合徐々に試合感をつかみ、日一日と良くなってきました。ピッチに響き渡る大きな声でのコーチングと見る者を奮い立たせるようなセービング、そしてこの試合からはスキンヘッドにして「湘南のバルテズ」と異名を取るほどの威圧感を備えています。

 DFは3バックで時崎悠、パラシオス、井原康秀の3枚、CBパラシオスの圧倒的なまでの空中戦と豪快な弾丸フリーキック等、そのプレー振りは必見でしょう。3列目には右から梅山修、中里宏司、坂本紘司。22歳以下日本代表候補でもある中里宏司はチーム内で1番トータルなサッカー能力を備えた選手。試合前には「自分自身の考え方を変えてみたい、無理と決め付けずにトライしてやり遂げたい」と、この試合に賭ける意気込みを語ってくれました。

 2列目は右から金根哲、熊林親吾、高田保則。ジュビロ磐田から期限付き移籍中の熊林、金の2選手ですが、チームの中心として大車輪の活躍を続ける熊林親吾とは対照的に、金根哲は未だ日本のサッカースピードに慣れておらず、試合を通しての活躍ができずにいますが、持っているセンスは抜群です。早く日本のスピードに馴染んで、もっと起点となるパスを出すようになれば、チームは今以上に成長するでしょう。最後に1トップの柿本倫明、大分トリニータからの期限付き移籍で加入して未だ4試合ですが、周囲との連携も日増しに良くなりゴールを狙う積極的な姿勢はチームに良い刺激を与えています。



 湘南ベルマーレはここまで3勝5分11敗、5月14日の山形戦以来勝っておらず、ホームゲームでの勝利になると4月9日の鳥栖戦まで2ヶ月以上遡らなければなりません。前述しましたが、若い選手たちに自信を与える意味でもこの試合是非勝利して欲しいところ。

 ここ数試合立ち上がりが悪かった湘南ですが、この試合では序盤から迷わず前向きなプレーを見せ試合を支配、水戸のカウンターに注意しつつ逆に前半26分、相手CKがこぼれたところを拾った中里が物凄いスピードで疾走、熊林とのパス交換から最後は併走していた高田にラストパス・・・と思いきや自らシュート、湘南にとってひさびさとなる先制点を決めてくれました。ゴールを決めた中里はベンチに走り寄り山田監督と握手、チームに歓喜をもたらします。前半をリードして終えた湘南、水戸はCBパラシオスをサイドに引き出そうとしますが狙い通りにはいかないようでした。

 後半、水戸は3トップ気味に布陣を変更して追いつこうと押し気味に試合を進めますが、CBパラシオスの活躍と、GK小林がスーパーセービングを連発、FW柿本が惜しい場面を作りますが追加点は奪えず、それでもなんとか水戸の猛攻をしのぎきった湘南は45日振りの、山田新監督となって初の勝利となりました。マン・オブ・ザ・マッチはゴールを決めた中里宏司。山田監督は試合後ほっとした表情で「この1勝がスタート、このスタートで自分の中で自信をつけさせてもらって、チーム全体としても自信をつけさせてもらった」と語りました。

 長丁場のJ2ですが早くも20試合を消化、ここまでで4勝という結果は予想できませんでしたが、この水戸戦での勝利、リスタートを切ることとなった勝利は、チームを変えてくれる大きな一歩となるに違いありません。

 ジメジメとした梅雨が明ければ季節は夏。湘南の海には太陽が照りつけ、海風も心地よいものになっていきます。オーシャンブルーのユニフォームが光り輝き出すのも、きっとこの夏からではないでしょうか。
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