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 福岡通信 01/08/10 (金) <前へ次へindexへ>

 胸を張れ! 新たな挑戦の始まりだ。


 文/中倉一志
 5勝10敗、勝点14。福岡サポーターにとっては何とも辛い1st stageだった。昨シーズンの2nd stageでクラブ史上最高順位となる6位に躍進。今シーズンは真価が問われていたが、ここまでは思うように勝ち星が挙げられず、結局12位に低迷している。しかも1st stage最下位の東京Vとの勝点差は僅かに4。下位チームとの差はないに等しい。気がつけば、J2降格ラインを気にせざるを得ない状況に陥った。

 まさに福岡の欠点である「層の薄さ」がもろに響いた。レギュラーメンバーの個々の力は、他チームと比較して決してひけを取るものではないが、バックアッププレーヤーを使わざるを得ない時にチームの力が見劣りするのは否めない。膝の手術の影響でビスコンティが長期離脱していることに加え、怪我人が続出するという状況では、不本意な結果に終わったのも、ある意味では必然だったのかもしれない。ベストメンバーで戦えたのは本当に数試合しかなかった。

 しかし、そういう状況においてもベストは尽くしていたのではないか。開幕戦で勝利を飾った後、常に負けが先行する中で、コンフェデ杯による中断までの10試合を5割の成績で乗り切った辺りまでは、苦しみながらも何とか踏みとどまる粘り強さを見せていた。問題は再開後の鹿島と磐田の2試合。Jリーグの強豪相手に内容で勝り、しかも狙い通りの戦いを展開したにもかかわらず、結局は敗れたことでチームのリズムは大きく狂った。

 その後の3試合は、ただ単調な攻撃を繰り返すだけに留まった。相手陣内に攻め込んでいるシーンが多いとはいえ、実際は相手の守備陣を崩せず、単調なクロスを放り込むだけの攻撃では得点が生まれるはずもない。再開後の5試合での得点は僅かに1。通算得点13は横浜FMと並んでリーグ最下位で、結果として得点力不足が致命傷になった。ビスコンティの長期離脱による影響が大きいのは明白だが、それにしても攻撃のリズムが悪すぎた。



 再開後の5連敗。さすがにショックは大きかった。監督記者会見場の雰囲気は暗く、地元メディアの質問にも元気がない。ロッカールームから引き上げる選手たちは口数も少なく、サポーターも打つ手がない現状に途方にくれているようだった。昨シーズンの成績を上回る好成績を目指し、そしてサポーターもそれを期待していた中で、結果はJ2降格ラインを気にせざるを得ない順位。そのギャップはあまりにも大きすぎた。

 しかし、ものは考えようだ。チームの力と言うものは、レギュラー選手の力だけではなく、控の選手、チームスタッフ、フロント、サポーター、そして地元住民の支え等の集合体。そういう意味からすれば、福岡はシーズンを通して優勝を争うチームと伍して戦うには、まだまだ力不足と言える。ピッコリ監督の下、大きな改革に成功したが、まだ発展途上と言えるチームが簡単に勝ち進むことは難しい。壁にぶつかるのは当然のことだ。

 誰かが悪いと戦犯探しをしても意味はない。ピッコリ監督がいつも言うように、チームというものは全員の力の集合体。特定の誰かに頼ったり、誰か1人が悪者になるというものではないからだ。1st stageで破れそうで破れなかった壁を、2nd stageで見事に破った昨シーズン。ならば、今年も、もう一度直面している壁を突き破ればいいだけだ。それには相当の努力が必要だ。しかし、そのために我々は戦っている。苦しいのは承知の上だ。

 勝負の世界である以上、勝敗という結果は必ずついてくる。場合によっては受け入れ難い結果になることもある。しかし、前を向くことを忘れてはいけない。うなだれて、そして後ろを気にしているようでは、いつまでたっても結果は得られない。現状を真正面から受け入れ、足りないところを確認し、自分たちの強みを認識する。そして、可能な限りの対策をとって勝利を目指す。どんな状況にあっても上位を目指すことによってしか現状は変わらない。



 そんな中、福岡は呂比須と内藤をFC東京から獲得した。狙いはもちろん、2nd stageで上位進出を目指すためだ。ピッコリ監督からの誘いが移籍のきっかけになったと言う呂比須は、言わずと知れた元日本代表のストライカー。今シーズンは春先に痛めた足首の怪我と、チーム戦術の関係で出場機会を失っていたが、その実力、意欲ともに、まだまだトッププレーヤーとして活躍できる選手だ。福岡にとって大きな戦力になることは間違いない。

 完治していないと言われる足首の怪我が心配であったが、現在はそんな心配をよそに順調な仕上がりを見せている。高く、そして滞空時間の長いヘディングの威力は抜群。ここまで得点力不足に泣いた福岡に新しい得点パターンをもたらせてくれる期待が高まっている。ビアージョとの相性もいいようで、6日に行われた入団記者会見では、ピッコリ監督に「(2ndの開幕戦は)呂比須とビアージョの2トップで行く」と言わしめた。

 そして内藤就行。もともとはFWの選手であったが、鹿島在籍時代にSBにコンバート。その後も様々なポジションを経験し、GK以外ならどこでもやったことがあるというユーティリティ・プレーヤーだ。どちらかと言えば地味なプレーヤーだが、ある意味では、呂比須以上に福岡に大きな変化を与えてくれるかもしれない。本来は右利きだが、左サイドもこなせる彼の存在は、福岡が長年悩んでいた左SB不在という問題を解消してくれるからだ。

 更に、内藤の存在はSB不在という問題を解消するだけではない。彼がSBに入ればヤッサンを本来のボランチの位置で使える。右サイドに入れて平島を攻撃に専念させることもできる。場合によってはバデアや久永を左サイドの高い位置で使うこともできるし、中払の守備に割く労力を軽減することもできる。福岡の得点力不足の最大の原因は、中盤での組織力不足にあったことは明らかだが、その課題を解決する糸口としても期待されている。



 しかし、この2人の活躍だけで全てが解決するわけではない。例えばFWで言えば、山下の奮起が必ず必要だ。経験豊富な呂比須は間違いなく開幕に照準を合わせて万全の状態に仕上げてくるだろう。しかし、やすやすとレギュラーポジションを明渡してしまうようではいけない。そんな呂比須に堂々と渡り合ってこそチームの力は上がるのだ。互いにぶつかり合い、そしてしのぎを削る。それが互いの力を引き出すことになる。

 それはMFにも言えることだ。ビスコンティが復帰してくれば、場合によっては内藤、あるいはヤッサンを含めた6人で4つのポジションを争うことになる。中払、久永らの中堅が、この争いに勝ってピッチの上に立ってこそ、本当の意味で福岡の層が厚くなる。ベテラン勢の力は健在だ。しかし、彼らが力を発揮しているうちに追い抜いてこそ、中堅層の成長がある。レギュラーポジションを奪い取る、いまそれが彼らに求められているのだ。

 チームの年齢が高いことを気にする人もいるだろう。若い選手を使えと言う意見もあるだろう。しかし、実力の世界に年齢は関係ない。その時点で最も力のある者が出場資格を得る、それが勝負の世界の鉄則だ。本当の成長とは、そういった環境の中で、実力で出場機会を掴むことによってのみ生まれてくるのだ。そして、戦いの中で「勝つ」ということによってしか得られない経験を積み重ねることによって、チームは大きく成長していく。

 さて、いよいよ明日から2nd stageが開幕する。相手は勝点差3の横浜FM。福岡にとっては何があっても勝たなければならない戦いになる。逆に言えば、相手にとっても負けられない一戦。正直に言って厳しい戦いになるだろう。しかし、ここを勝ち抜かなければ先は見えてこない。高い目標を目指して、謙虚に、そして胸を張って戦いつづけた昨年の2nd stage。それと同じ思いを胸に秘めて戦いに臨もう。さあ、新たな挑戦の幕開けだ。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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