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 福岡通信 04/04/16 (金) <前へ次へindexへ>

 さあ、鴨池へ!


 文/中倉一志
「鴨池までは連勝で行きたいね」
「少なくとも無敗だね。直接対決で京都に勝って、そのまま勢いをつけたいもんだ」

 開幕前、サッカー仲間と会うたびにそんな会話を交わしていた。しかし、思い通りにならないのが世の常。福岡は1勝3分1敗の勝ち点6で京都と最初の天王山を迎えることになった。まあ1敗は許容範囲。しかし、1勝は勝ちきれない印象が強い。「まだまだ、これから」と思う自分と、「それにしても」と思う自分。複雑な思いを胸に抱いて京都との対戦を迎えることになった。

 ここまでの試合を振り返ってみよう。まず合格点を付けられるのは守備力だ。表面上の数字は5試合で3失点だが、そのうち2失点は微妙なPKの判定によるもの。流れの中から守備ブロックを崩されたのは第4節の甲府戦で水越に奪われた1点のみ。十分すぎる結果を残している。膠着状態の中でピンチを招くこともあるが、それは攻めきれないリズムの悪さからくるもの。高い位置からの全体守備は今年も健在。むしろ安定感が増した感が強い。

 問題はやはり攻撃面だ。ここまで5試合で5得点。鳥栖戦で上げた3得点を除けば、1点、0点、1点、0点とゴールを奪うのに苦労している現実が浮かび上がる。昨シーズン後半の爆発力から比較すると考えられない数字だ。もちろん、対戦相手が福岡のサッカーを研究しているせいもあるのだが、ここまで得点が取れないとは誰も想像しなかったはず。ポストやバーに阻まれるといった不運もあるが、ペナルティエリアに入り込めないのが問題だ。

 大きな誤算はチームの中心と見られていた林とベンチーニョの不振。林は開幕戦に出場したものの結果を出せず、現在は怪我で療養中。ベンチーニョの調子も上がらず、前節の横浜FC戦では先発を外れた。もちろん、サッカーは全員の協力で点をとるスポーツ。この2人が戦犯というわけではない。しかし、昨シーズン後半の快進撃は、ベンチーニョのゲームメイクと得点力、林のフィジカルの強さに支えられていた面が大きかっただけに、チームにとって痛手であることは間違いない。



 しかし、もうひとつの大きな要素も見逃すわけにはいかない。前節まで、J2は全部で30試合を消化したが、そのうち何と13試合が引分け。何も勝ちきれないのは福岡だけではない。Jリーグでは長い間、勝ち点ではなく勝数を意識した戦いが繰り広げられていた。しかし、引分け制の定着により「勝数ではなく勝ち点を競う」というリーグ戦本来の姿にJ2が近づいていることを、この数字は意味している。また、そうした戦術的な戦いができるだけの力を、それぞれのチームが身に付けた側面もある。

 こういう状況の中では、上位チームの戦い方は難しい。今シーズンのJ1昇格候補のひとつである川崎Fこそ4勝1敗と順調に勝ち星を重ねているが、同じく候補の京都は、まだ勝ち点8しか獲得していない。シーズンが始まったばかりのこの時期では、選手の故障や、カードの累積による出場停止の影響も少なく、選手層の薄さも直接試合に影響することもない。フィジカル面での影響が出てくる夏場までは、この傾向が続くかもしれない。

 また、指揮官や選手たちは口が避けても言わないだろうが、福岡の場合は運の悪さも否定できない。相手に守られた場合、遠目の位置から積極的にゴールを狙ったり、セットプレーから攻撃を仕掛けるのが定石だが、福岡はこれをきちんと実行している。また、決定的なチャンスも必ず演出している。しかし、これがことごとくゴールに嫌われる。「あの1点が入っていれば」。鳥栖戦以外を振り返るとき、必ずそんなシーンがひとつやふたつはある。

 不運な判定もついて回る。判定が間違っているなどと言うつもりは毛頭ないが、これ以上ないタイミングで下された2つのPKが試合の行方を大きく左右したことは誰の目にも明らかだ。緊張感あふれる開幕戦で1−0のリードのままゲームをコントロールし始めた矢先の1本。相手のプレスの緩みに乗じて一気呵成に攻めようとした矢先の1本。決定機をしっかりと決めておけば何の問題にもならないシーンだが、どこかやりきれなさが残る。



 しかし、悔やんでいても失った勝ち点が戻ってくるわけではない。過去は過去。自分たちの進むべき方向を見据えて前に進むしかない。幸い、戦い方そのものは間違っていない。堅い守りをベースに構築したチームのスタイル。長期的に見れば、これに勝るチームはない。勝負の世界というものは、レベルが上がれば上がるほど、互いの実力が拮抗すればするほど、最後はミスで決着がつく。安定した守備をベースに戦うことは上位進出に欠かせない要素だ。

 また、チームに復調の兆しも見えている。まずはベンチーニョ。第4節の甲府戦では中盤の低い位置まで戻ってボールを捌くシーンが見られるようになり、第5節では途中出場ながら試合の流れを変えることに成功した。中盤でボールを触ってリズムを掴み、その流れからゴール前に顔を出すのが特徴の選手。ここまで周りとのリズムが合わなかったが、徐々に、その特徴が現れ始めている。やる気がなさそうに見えるのはプレースタイルのせい。チームを支える自覚は強い。

 ここまで、どこか安全に、相手を受けて戦っていたチームにも攻めのリズムが戻りつつある。横浜FC戦では中盤を省略して相手の裏のスペースにボールを配給したが、その結果、スペースへ向けて積極的に抜け出そうとするプレーが随所に見られるようになった。前へ出ようとする姿勢が顕著に現れたのは、第2節の鳥栖戦以来のこと。昨シーズンの猛反撃はアグレッシブな姿勢を貫いた結果だ。そのリズムが戻ってくれば怖いものはない。

 甲府戦でJリーグ初出場を果たした有光、そして横浜FC戦でプロデビューを果たし、明日の京都戦での先発が予想される田中ら、若手選手の台頭も好材料だ。ともにスピードと高い技術が持ち味の選手。前線で積極的に相手と勝負を仕掛ける姿勢は、チームのリズムに変化を与え、アグレッシブさを呼び起こしてくれる。ベンチーニョが作ったスペースに果敢に飛び出し、相手DFとの勝負を制してゴールネットを揺らす時をサポーターは待っている。



 混戦模様のJ2とはいえ、J1昇格を果たすためには少なくとも80点以上の勝ち点が必要になる。敗戦数は10までが許容範囲だ。星勘定からいけば、残りの第1クールで5勝以上を挙げる必要性に迫られている。そういう意味では、強敵・京都との対戦は、どこかのキャッチフレーズを借りれば「絶対負けられない試合」。福岡は早くも正念場に立たされたと言える。しかし、慌てる必要は全くない。自分たちの戦い方を存分に発揮すること。相手は関係ない。それが福岡のスタイルだ。

 そもそも、J1昇格を至上命題にして臨んだ2004年シーズン。山もあれば、谷もあることは覚悟の上。ただ少しばかりの谷が最初に来ただけに過ぎない。下を向かずに、バタバタせずに、自分たちの準備してきたものを信じてぶつかるだけだ。全国メディアの福岡に対する注目度は相変わらず高いとは言えないが、対戦相手の戦い方や監督のコメントを見れば、各チームが福岡を警戒していることは明らか。J1昇格を狙うだけの力は十分にある。

 京都は崔龍洙、黒部の強力2トップが売り物だが、この2人にボールを供給する松井はボールをキープする癖のある選手。高いテクニックを有するが、ここを経由してくれるのなら、福岡のプレスが有利に働くことになるだろう。ただし、それでも一発の力を持つ2トップ。決してフリーにしないように集中力は欠かせない。攻撃面ではサイドの攻防が鍵。左サイドの古賀とアレックスのコンビはもちろん、右サイドからの宮崎の飛び出しに期待したい。

 そしてスタンドからも精一杯の声援を送りたい。チームの力とは、監督、現場スタッフ、選手たちだけの力ではない。いつも言うことだが、フロント、サポーター、メディア等々、チームを取り囲む人たちとの総合力がサッカー力だ。J1昇格という目標は、チームの力はもちろん、このサッカー力が大きくならなければ果たせる目標ではない。明日の戦いは、そのサッカー力を見せる戦いでもある。精一杯に戦って、大手を振って福岡に戻りたいものだ。
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