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 頑張れ!女子サッカー 03/01/22 (水) <前へ次へindexへ>

 流れを変えた直接FK。がっぷり四つに組んだ試合はレイナスが制す。


 取材・文/中倉一志
第24回全日本女子サッカー選手権大会 準々決勝 日本体育大学vs.さいたまレイナスFC
2003年1月19日(日)13:30キックオフ 広島県営広島スタジアム
試合結果/日本体育大学0−2さいたまレイナスFC(前0−0、後0−2)
得点経過/[さいたま]高橋(58分)、安藤(64分)


 全日本大学女子サッカーチャンピオンの称号を胸に全日本女子サッカー選手権大会に乗り込んできた日本体育大学。2回戦でL・リーグ所属の宝塚バニーズレディースサッカークラブを破った勢いのまま、さいたまレイナスFCに挑む。「守って少ないチャンスを決める」(森田英夫監督・日体大)という狙いは2回戦と同様。準々決勝でも3−6−1の中盤を厚くした布陣で臨む。豊富な運動量とスタミナは学生ならでは。果たして、L・リーグ勢に対する連勝はなるのだろうか。

 対するさいたまレイナスは、前日の試合内容を払拭してこの準々決勝に臨む。L・リーグの2002年シーズン3位の実力は順当に言えば日体大よりも上。問題は昨日のように受けに回った時の弱さだ。2回戦終了後、田口禎則監督(さいたまレイナス)は、「もう一回時間をかけて修正させて試合に臨ませるしかない。このままだったら日体大にも勝てない」と厳しい口調で話したが、どこまでモチベーションを高められたかが大きなポイントになる。



 立ち上がり、レイナスは昨日とは打って変わって軽快な動きを見せる。攻撃的MFの木原と岩倉が高い位置取りから積極的に両サイドのスペース走りこみ攻撃的な姿勢を見せれば、後方からも積極的に押し上げて前からボールに仕掛けていく。難しい初戦を突破したことで精神的に余裕が出てきたのだろう、序盤から軽快な動きで日体大陣内に攻め込んでいる。そして、守備に対する集中力も高く、日本代表FWの丸山の動きを笠嶋がタイトなマークで封じ、日体大の2列目からの飛び出しにも細心の注意を払っている。

 一方攻め込まれる形になった日体大も慌てない。相手に攻め込まれるのは承知の上、しつこい守備で決定機を与えない。攻めに出てくる選手をまずボランチがケア、そこへDFとトップ下の法師人が加わって囲い込むようにして守備に当たる。2回戦同様、中盤のそこでバランスをとり守備の要を果たす大堀と、身長150センチと小柄ながら驚異的な運動量で攻守にわたって貢献する法師人の活躍が光る。今日も堅い守備は健在だ。

 前から攻めにかかるレイナス。守りに守って一瞬のチャンスを窺う日体大。互いに集中力あふれる戦いを展開する両チームは、中盤でつぶしあい、決して相手にチャンスを与えない。そのため、前半に生まれたシュートはレイナスの2本だけだったが、試合は非常に緊迫感あふれる試合になっている。加えてファールも少なくボールがめったなことではラインの外に出ないスピーディーな展開がスタンドの観客を引き付ける。攻めも攻めたり、守りも守ったり。極限の戦いは0−0のままハーフタイムを迎えた。



 後半も全く流れは変わらない。丸山のポストプレーから、法師人、村岡の飛び出しに攻撃の活路を見出そう手する日体大だが、これはレイナスのDFが見事にケアしてチャンスを与えない。「サイドの選手と、中盤の選手がもっとサイドから攻撃を仕掛けなさい」(田口監督)という指示のもと、右サイドから崩しにかかるレイナスだが、これは日体大の厚いDFが許さない。試合は全くの五分と五分。拮抗した試合は延々と続くかに思われた。

 そんな試合をひとつのファールが大きく変えた。時間は58分、ペナルティアーク付近で日体大がファールを犯し、レイナスに直接FKが与えられた。ボールをセットしてゆっくりとゴールマウスを見つめるのは、レイナスのキャプテン高橋。そして、一呼吸置いてから右足を振りぬくと、ボールはきれいな弧を描いてゴール上段、右隅に吸い込まれた。反応したGKの両手の先を通り抜けていった見事なFK。「FKだけは与えないようにと言っていた」と森田監督は悔やむしかなかった。

 そして続く64分、レイナスは左サイドを突破した木原がセンタリング。そのボールがゴール前中央に構えていた日体大DFの頭上を越えると、そこへ走りこんできた安藤が右足ボレーできれいに合わせた。いたるところで数的有利を保って守っていた日体大が、初めてレイナスの選手をフリーにしたシーンだった。先制点を喫し集中力を欠いていたのかもしれない。しかし、その時間帯を突いて追加点を挙げたレイナスの攻撃を誉めるべきだろう。そして、試合はこのまま試合終了のホイッスルを聞くことになった。



「大学生相手ですけれど、(日体大は)大学日本一になったチーム。上のチームを喰おうという意気込みで臨んでくる中で、L・リーグらしさを出せたということで、選手たちは頑張ってくれたと思います」と満足気に話してくれた田口監督。拮抗した試合だったが、選手たちの戦い方に手応えを感じていたのだろう。試合中も大きな声を発することはなく、前日とは対照的に静かに試合を見守っていた。そして準決勝では、いよいよ女王ベレーザと対戦する。

 今年のベレーザとの対戦成績は1分2敗。しかし、3年続いていたベレーザの連続得点記録をストップさせ、敗れた試合も1点差。L・リーグの一次リーグでは2−3という堂々のスコアで渡りあった。「自分たちはやれるんだっていう気持ちを持って戦っている。ベレーザに一泡吹かせたいなと思っています。もちろん、西が丘に行って、国立に行くというのが夢」と力強く語ってくれた田口監督。果たしてどんな戦いになるのか目が離せない。

 そして残念ながら準々決勝で姿を消すことになった日体大は、学生らしいさわやかな印象を残してくれた。守りに守って、僅かにチャンスを日本代表FWの丸山に託すという戦い方は、戦術的に高いものだとはいえないかもしれない。しかし、勝利を目指して11人が力をあわせて戦う姿は好感が持てた。「学生でも頑張ればここまで出来るんだっていう、ある意味で自信を持ちました。だから、来年こそリベンジでやりたいと思います」。森田監督はそういってスタジアムを後にした。


(日本体育大学) (さいたまレイナスFC)
GK: 平田麻利絵 GK: 山郷のぞみ
DF: 吉村萌 岩田久美 田代久美子 DF: 角田純子 笠嶋由恵 仲希理子
MF: 田村奈津枝 大堀幸恵 松窪裕子(73分/竹村由美子) 藤巻藍子 法師人美佳 村岡夏希 MF: 高橋彩子 木原梢(78分/伊藤知沙) 片桐ひろみ 赤星照美 岩倉三恵
FW: 丸山桂里奈 FW: 岸一美 安藤梢
※このレポートは「fantasista online magazine 2002CLUB」に掲載されたものです。
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