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 頑張れ!女子サッカー 03/01/22 (水) <前へ次へindexへ>

 ベレーザ、女王の貫禄。決定力に課題を残すも順当にベスト4へ


 取材・文/中倉一志
第24回全日本女子サッカー選手権大会 準々決勝 日テレ・ベレーザvs.ジェフユナイテッド市原レディース
2003年1月19日(日)11:00キックオフ 広島県営広島スタジアム
試合結果/日テレ・ベレーザ4−0ジェフユナイテッド市原レディース(前1−0、後3−0)
得点経過/[日テレ]小林(21分)、大野(54分)、窪田(60分)、須藤(63分)


 濃紺のトレーニングウエアで身を包んだ日テレ・ベレーザの選手がウォーミングアップのために姿を現すと、ピッチの雰囲気がガラリと変わる。その立ち姿、ジョギングの姿勢、ボールを扱う身のこなし、そしてボールをしっかりと捉える技術、どれをとってもほかのチームの選手たちとは明らかに違いがある。「運動能力の差が随分違う」とは鈴木政江監督(市原)。その言葉通り、彼女たちの運動能力の高さが別のレベルにあることは想像に難くない。

 先発メンバーのほとんどを代表経験者で固めるベレーザは、2002年シーズンのL・リーグを負けなしで駆け抜けて8回目の年間チャンピオンに輝いた。目指すは全日本女子サッカー選手権を制しての2冠。同じく、女子サッカー界を牽引する田崎ペルーレ以外には敵はいないようにも思える。そんなベレーザに挑むのはL・リーグ9位のジェフ市原レディーズ。今シーズンはL・リーグで僅かに1勝しか挙げられなかったが、シーズンを締めくくる大会を納得の行く形で終えたいところだ。



 試合は予想通り、ベレーザの一方的なペースで進んでいく。開始直後の1分に窪田が放ったシュートを皮切りに、次から次へとシュートを市原ゴールに浴びせる。やはり両チームの間に存在する力の差は簡単に埋められないほど開きがあるようだ。フラット4のラインディフェンスを敷く市原は、ラインを高い位置に上げてベレーザの攻撃を封じ込めようとするのだが、パスの出し手にプレッシャーをかけられないばかりか、2列目から飛び出してくる選手を全く捕まえきれず、やすやすと裏を取られては決定的なピンチにさらされている。

 そんな市原にもいい時間帯はあった。何度も訪れる決定的なチャンスを決めきれないベレーザがリズムを乱しはじめた10分過ぎからは、最終ラインを高く上げて狭くした中盤でベレーザにプレッシャーを与えることに成功、互角にボールを奪い合う時間帯が続いたのだ。しかし、残念ながら、その時間帯も長くは続かない。21分、ベレーザに先制点を奪われると、再びベレーザの猛攻にさらされた。「こちらの運動量が減ってきたり、相手が入れ替わり立ち代り出てくるんで、そういうのに段々対応が遅れたりしてきた」(鈴木監督)市原は、これ以降、自陣内に押し込まれたままになってしまった。



 ベレーザの攻撃の中心は、2トップの小林・大野と、攻撃的MFを勤める四方、窪田の4人。この4人が前後左右に出たり入ったりしながら、フリーになった選手がラインの裏へ走りこみ、そこへボールを供給するというもの。狙いそのものは単純明快、そして同じパターンから数え切れないほどのチャンスを演出した。それでも市原は極端に高く保つラインを下げようとはしない。しかし、4人の動きに全くついていけず、中盤でのプレスもかけられない状況でラインを上げたままにしておくのは自殺行為に等しかった。

 ベレーザは、たった1本のパスで簡単に裏を取り、何度もGKとの1対1のシーンを作り出す。ゴール前でのミスを連発したため、市原が何とか凌ぐ時間帯が続いたが、54分に大野が1対1から確実に決めて2点目を奪うと、60分、63分とあっという間に追加点を奪って市原を突き放した。そんなベレーザの前に、反撃をしかけるどころか、ベレーザの攻撃を受け止めることさえ出来ない市原。この後はベレーザのパターン練習を見ているようなゲームになっていく。そして試合終了を告げるホイッスルが鳴り、ベレーザが順当に準決勝へ駒を進めた。



 市原のシュートを0に抑え、4点を奪って勝利を収めたベレーザ。しかし、その表情に喜びはない。「相手との力の差を考えると、今日の試合は決して満足のいく試合ではない。特に、前半はあれだけチャンスがありながら1点だけしか入らなかった。裏に出して、そして走ればキーパーと1対1になってしまうような状況で、もっともっと楽な試合が出来たはずだが、そういう点からいくと非常に課題が残る」と宮村監督(ベレーザ)は試合を振り返った。

 確かにベレーザは、あまりにも決定的なチャンスでのミスが多すぎた。実力差があるチームにならともかく、優勝を争うことになるであろう田崎ペルーレには、このままでは苦労することは間違いない。「この大会に入る前から2冠を取るということでやってきた。手応えよりも、それを達成しなくちゃいけないという気持ちのほうが大きい」と話してくれた宮村監督。「これから先はL・リーグで戦った知っているチーム。今まで通りやるしかない」と気を引き締めていた。



 さて市原。自分たちのサッカーをすることを目指して、果敢にラインを上げてベレーザに挑んだが力不足は否めなかった。何が起こるかわからないトーナメント戦とはいえ、あまりにも力の差がありすぎた。ある意味では、敗れても仕方のない試合だったといえるが、彼女たちは、シーズンの最後となる試合で納得のいく試合が出来たのだろうか。そんな彼女たちの気持ちを、この日、はるばる東京から応援に駆けつけたサポーターが代弁してくれた。

「いままでのベレーザ戦の中では一番いい試合。戦力的に、実力的にまだまだ差があるのかなというのは認めざるを得ないのかなという感じを受けましたけれど、前半は良く凌ぎきったと思う。そこが見えただけでも良かった。そういう意味では自分たちのサッカーがよく出来たほう」(鈴木俊一・UNITED ADORER会長)。しかし、破れたという悔しさは変わらない。僅かに見えた光明を具体的な形にするには、これからの練習にかかっている。来シーズンは、この経験をもとにして一回り大きくなった姿が見てみたいものだ。


(日テレ・ベレーザ) (ジェフユナイテッド市原レディース)
GK: 小野寺志保(72分/増田亜矢子) GK: 伊藤美幸
DF: 中池舞(65分/山崎由加) 藤井奈々 馬場典子 戸崎有紀 DF: 田口佳子 中里祐子 五味織枝 堀川有紀乃
MF: 窪田飛鳥(60分/荒川恵理子) 酒井興恵 須藤安紀子 四方菜穂 MF: 岡上麻里(82分/岡内実樹) 小野芙美子 河村乃理子(62分/阿部麻美) 三上尚子
FW: 小林弥生 大野忍 FW: 水野奈緒子(55分/河村真理子) 金野結子
※このレポートは「fantasista online magazine 2002CLUB」に掲載されたものです。
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