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 頑張れ!女子サッカー 03/09/05 (金) <前へ次へindexへ>
 サッカー教室の子供たちと手をつないで入場

 手に汗握る好ゲーム。田崎、薄氷を踏みながら9連勝。


 取材・文/西森彰
第15回Lリーグ一次リーグ 西日本リーグ第10節 田崎ペルーレFCvs.伊賀FCくノ一
2003年8月31日(日)13:00キックオフ アスパ五色 観衆:500人 天候:晴
試合結果/田崎ペルーレFC1−0伊賀FCくノ一(前1−0、後0−0)
得点経過/[田崎]大谷(16分)


 Lリーグの一次リーグは東西とも、上位リーグへ進むものと、下位リーグで戦うものがふるいわけられた。西日本リーグは8連勝で1位の田崎ペルーレFCを筆頭に、2位伊賀FCくノ一、3位スペランツァ高槻という3チームで予選リーグの順位が決している。この日の関西2強による直接対決はいわば消化試合というシチュエーションだった。さらにプレーヤーには辛い炎天下のコンディション。そんな悪条件にも関わらず、互いの意地が剥き出しになる好試合となった。



 この試合が行われる8月最終週には、第4回ワールドカップに挑む日本女子代表候補の合宿が行われた。これに田崎は大谷未央、川上直子、柳田美幸、山本絵美、磯崎浩美、そして初招集の白鳥綾の6人が参加。「今週は代表組がごっそり抜けたんで、人数が足りなくなって、ロクに練習ができない状態」(田崎・仲井昇監督)だった。

 もっとも伊賀のほうも宮本ともみと宮崎有香の2人が合宿に参加。中盤の那須麻衣子は、韓国で行われた第22回ユニバーシアード・大邱大会で準優勝したユニバーシアード日本女子代表の主力メンバー。前日の決勝戦まで勝ち残ったため、この試合はメンバー入りしていない。どちらもこの試合について直前に詰めるまでの時間は足りなかった。

 順位の決まった予選リーグでの勝敗よりも、決勝リーグへ向けて内容を問いたいゲームということもあり、田崎が3−5−2、伊賀は4−4−2と、どちらもいつもどおりのシステムで特別なことはしない。序盤から自分たちの持ち味を互いに出そうとする積極的な試合運びとなった。



 キックオフからまず伊賀が攻め込み、中央の原歩を経由して左のオープンスペースに走りこんだ堤早希がシュート。記録的な大敗を喫した前回の借りを返そうという闘志をまず見せる。田崎も右サイドの土橋優貴が山本を使ったワンツーで右サイドを突破する。これを伊賀の馬場典子がカバーしたが、この際に馬場は腰のあたりを強打してしまう。

 負傷を押してプレーを続けた馬場だが、16分、センタリングに体を張った際、負傷個所に強烈なボールを受けて、倒れてしまう。一瞬、エアポケットに入った伊賀のディフェンス陣からフリーになった大谷が、ペナルティーエリア外から強烈なシュートを放ち、伊賀GK・小林舞子の両手を弾き飛ばして得点。この日も田崎が主導権を握った。

 前回の対戦ではこのままズルズルと一方的な展開に持ち込まれた伊賀だが、この日は切れずに1点のビハインドを追いかける。馬場の負傷退場に伴い、山岸靖代を以前プレーしていたセンターバックに回し、新たに小山美佳を山岸のいた右サイドハーフに投入。山岸が宮崎と共に最終ラインで田崎の攻撃を食い止め、宮本もポジションをやや下げてゲームメイクよりも、カバーリングに汗を欠く。

 もちろん、攻撃力のダウンは否めなかったが、それ以上の追加点を田崎に許すこともなかった。スコアを維持したい伊賀に対し、2点目を奪って試合を決めてしまいたい田崎は、これに追いすがり、ラッシュをかける。しかし、粘り強い黄色の壁に手を焼き、1−0のまま折り返すことを許してしまった。



 熱い女の戦いは田崎が紙一重で制す
 ハーフタイムにかなり檄を飛ばしたという伊賀の江川重光監督。その効果があったのか、それとも田崎にオーバーペースのツケが出たのか、後半は伊賀がペースを握る。前半よりもさらに運動量の増えた小山が右サイドにできるスペースに何度も走ってボールを呼び込む。50分前後には波状攻撃から、中川、小山のシュートが田崎のゴールを掠めた。

 さらにヒートアップする試合の中で、後半から出場した鈴木智子も負傷退場でピッチを去る。直射日光に顔を真っ赤に焼きながら、試合の流れを生かすジャッジをした吉澤久恵主審だったが、両チームの関係者からは「もう少し厳しく吹いてくれたほうが良かった」との声も。そこここで見られるフェアで激しい接触プレーをどう裁くべきなのか。レフェリーには本当に難しい試合だった。



「予選リーグの順位は決定している。激しいプレーが増えてきていたし、ワールドカップ前でしたからね。やっぱりケガとかいろいろ考えると、後半は代えたい気持ちもありました」(伊賀・江川監督)

 いったんは、代表の中軸プレーヤーでもある宮本を交代させようと考えていた伊賀の江川監督だが結局、「最後までやりたいと本人が言ってきたので、その気持ちを大切に」(伊賀・江川監督)してフルタイム出場させた。しかし、損得勘定を考えず、この一戦に全力を尽くすチャレンジャーに対し、受けて立つ女王のプライドも負けていなかった。

「こんな不景気の中、会社がサポートしてくれているウチは恵まれているんです。だから結果を常に求めていかなければいけないんです」(田崎・川上直子)

 相手陣内で試合を進める伊賀は、何度もゴール前でチャンスを作った。しかし、シュートチャンスを得るたびに、ゴールとの間に田崎の選手が姿を見せる。「打てば、ディフェンダーに当たって入ることもあるんだけれど…」と最後の場面での積極性に注文をつけた江川監督だが、勝負に賭ける執念を滲ませた田崎の選手たちの気迫は、伊賀のアタッカーにシュートコースを狭めた。

 結局、伊賀の猛攻を凌いだ田崎が、1−0のまま逃げ切って試合終了。全勝優勝へ向けて西日本リーグで9つ目の白星を並べた。



 つい一月前の同一カードと試合内容があまりに違ったことに正直驚いた。そのあたりを質問した私に「今日やろうとしたことは、これまでやってきたことと同じ。やろうとしていること、戦術への理解が深まったことが大きいです」と江川監督は答えた。0−4の屈辱から、宝塚戦バニーズレディース戦までの14日間、伊賀のチーム内に相当な化学変化が起こったようだ。

 一方、苦しい展開に晒されながらもしぶとく白星につなげた田崎の仲井監督は「ああやって凌がれると、どうしてもこういうゲームになっちゃいますよね」と、前半のうちに2点目を奪えなかったことが苦戦の原因かという点については頷いた。しかし、「今週は練習不足だし、今日のところは内容については仕方ありません。勝ちにつなげたことを評価します」と続けてポジティブに振り返った。

 以前にレポートで書いたとおり、少数精鋭だけに田崎の大敵はケガだ。佐野弘子の復帰にメドが立った途端に鈴木が古傷を傷めてしまった。ワールドカップに主力5人を送り出すことになった田崎。指揮官は、大きなアメリカ土産を期待しながらも、彼女たちが無事にチームに合流することを第一に願っている。


(田崎ペルーレFC) (伊賀FCくノ一)
GK: 大西めぐみ GK: 小林舞子
DF: 磯ア浩美、白鳥綾、甲斐潤子 DF: 藤村智美、馬場典子(17分/小山美佳)、宮崎有香、仁科賀恵
MF: 土橋優貴、川上直子、新甫まどか、柳田美幸 、山本絵美 MF: 山岸靖代、中川愛美(83分/小松愛)、宮本ともみ、堤早希
FW: 大谷未央、渡辺千尋(45分/鈴木智子、60分/早坂優) FW: 井坂美都、原歩
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