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 頑張れ!女子サッカー 03/10/22 (水) <前へ次へindexへ>

 白熱!九州女子サッカーリーグ


 取材・文/中倉一志
「落書き帳有志による九州オフラインミーティング」に参加した翌日、前日のお酒で少々痛む頭と、喋りすぎてしゃがれた声で朝早くから家を出る。行き先は宇美町(うみまち)総合スポーツ公園。福岡市の西側に位置する糟屋郡にある公共施設までは、我が家から自家用車を利用すれば恐らく30分強程度なのだろうが、運転免許証を持たない私は路線バスを利用するしかない。天神発9:00の路線バスに揺られること約50分、ようやく、小高い丘の上にグラウンドが姿を現わした。

 宇美町総合スポーツ公園は4機の照明設備を備えた日本陸上競技連盟第3種公認の陸上競技場。トラックは全天候ウレタン舗装が施されており、ティフトン芝が敷き詰められたインフィールドは、105メートル×68メートルのサッカーコートや、100メートル×68メートルのラグビーコートとして利用できる。また、メインスタンドに設置された管理塔には1300名収容のスタンドが併設されている。小高い丘のてっぺんから見渡す眺望は心が洗われるほどのどか。ただし、空から直接降り注ぐ日差しは少々つらい。

 この日は第6回九州女子サッカーリーグの後期3節。今シーズンは女子リーグをどうしても観戦したいと考えていたのだが、スケジュールの関係でこの日が初観戦となった。熊本ユナイテッドSCフローラ(以下、熊本USC)は別会場での試合だが、九州女子サッカー界のトップチームである福岡女学院FCアンクラス、福岡県で最も古い歴史を持つ福岡ファーストレディ・イレブン(以下、F.F.L)、そして、上位進出を狙う福岡大学女子サッカー部、北九girlsが揃って登場。九州の女子サッカーの現状を知るには最も都合のいい組み合わせになった。

 5月18日に開幕した九州女子サッカーリーグは前期、後期合わせて2回戦総当りで行われ、11月24日に閉幕する。参加しているのは8チーム。中学生主体のチームから、高校、大学、社会人中心の町のクラブまで、その範囲は非常に広い。前期を終了した時点でトップに立つのは7戦全勝の福岡女学院FCアンクラス。2位は5勝2敗の熊本USC。以下、福岡ファーストレディ・イレブン(以下、F.F.L)、福岡大学、北九girlsと続いている。試合は40分ハーフで行われる。



 この日の第1試合は福岡大学とF.F.Lが対戦。この両チームは、先月行われた福岡県女子サッカー選手権大会の準々決勝で顔を合わせたが、そのときは0−0の末、PK戦でF.F.Lが勝利。ただし、前期リーグでは1−0で福大が勝利している。今シーズン、公式戦で3度目の対戦となる試合は、前回の福岡県選手権同様、福大が攻め、F.F.Lが守るという展開で進んでいく。徹底的に両サイドを崩す福大。そして、いいタイミングでFWが飛び出してゴールを狙う。

 しかし、ここで得点を許さないのがF.F.Lの強み。押し込まれているようで決してゴールを許さないのが、このチームの持ち味だ。私がF.F.Lの試合を見るのは、これが4試合目。どの試合も押し込まれているようでゴールを許さず、そしていつのまにかペースを奪ってカウンターからしっかりとゴールを奪った。そういう意味では、この試合も私が知っているF.F.Lのサッカーだった。決して引いているのではない。いわゆる大人のサッカーの匂いがする。

 ただ、これまでと違っていたのはボールを捌くゼッケン10の三保選手にボールが入らないこと。そして福大がじれることなく、しつこく、しつこく同じ攻撃を繰り返しつづけたことだった。そして73分、左からのCKのチャンスにファーサイドに飛び込んだ田宮選手が見事に頭で合わせて1点を先制。結局、これが決勝点になった。悔しい失点にF.F.LのGK石原選手はうつむきかげん。福岡県選手権も、この試合でも、試合後は痛々しく足を引きずっていたが、「足さえ動けば」、そんな思いが脳裏をかすめていたのかも知れない。



 第2試合は中津ポマトと北九girlsが対戦。残念ながら、両チームの間には少々力の差がありすぎたようだ。一方的に攻め立てる北九girlsは26分に先制点を挙げると、28分、32分にも追加点。前半だけで勝負を決めてしまった。さらに後半に入っても攻撃の手を緩めない北九girlsは後半開始直後の20秒に4点目。その後もこれでもかとばかりに攻め込んで、結局、最終スコア11−0で中津ポマトを下した。

 北九girlsの設立は平成8年。サッカーをする場所がない女子中学生に試合参加の場を作るために結成され、現在は、社会人から中学生までが参加する一般のクラブとして運営されている。先発メンバー中5人が中学生という若いチームであるが、それを社会人、大学、高校の選手たちが上手くフォローしながらチームをまとめている。特にトップ下を勤める大田選手の存在感は抜群。FW、左右のMFの3人の中学生を引っ張って、見事に攻撃を組み立てていた。

 残念ながら敗れた中津ポマト。こちらは先発メンバーのほとんどが中・高校生。経験という意味では、おそらく出場チーム中で一番浅い。敗れたこと自体はやむを得ないだろう。それにしても、福岡と大分の県境に位置する中津市から、若い選手たちを連れて九州を転戦する苦労は並大抵のことではない。指導者の情熱や家族の理解があってこそ成り立つクラブ。そして、その存在が女子選手たちにとって貴重なプレーの場を与えている。ある意味では、こうしたクラブが女子サッカーの底辺を支えてくれている。これからのチームだが、是非、頑張ってほしい。



 さて、この日の最終戦に登場したのは福岡女学院FCアンクラス。福岡女学院の中高校生やOGが加わるクラブで、第2回大会に初めて参加して以来、連続優勝を継続中の九州No.1の実力を誇るクラブだ。ボールタッチの柔らかさはもちろん、両サイドからしっかりとクロスボールが上げられるのは基礎技術がしっかりしている証拠。当然のように、試合は福岡女学院FCアンクラスの一方的なペースで進む。対戦相手の島原商業は防戦一方。自陣内から抜け出すことができない。そして6分、福岡女学院FCアンクラスが先制点を挙げた。

 しかし、福岡女学院FCアンクラスには問題もあった。ボールを持ててしまうためフィニッシュに向かうプレーが少ないのだ。実力上位チームが引いて守るチームに対して陥りがちなパターンにはまっている。加えて島原商業もよく守る。左右に振られても、1対1でボールを奪われても、最後までボールに喰らい付いていく。攻めあぐねてはシュートが打てず、決定的なチャンスでは島原商業の身体を張ったDFにシュートをはじかれる。福岡女学院FCアンクラスにとっては厄介な試合展開になった。

 早々とゴールを挙げたものの、その後も集中を切らさない島原商業の守備に手を焼く福岡女学院FCアンクラス。それでも、68分、72分に追加点を挙げて最終的には3−0で勝利を収めた。ところで、前期を終えた段階で、首位に立つ福岡女学院FCアンクラスだが、得失点差では、2位の熊本USCのほうが5点上回っている。熊本USCが圧倒的な得点差で勝っている相手に対し、福岡女学院FCアンクラスはそれほどの得点差を稼げていないのが原因だ。ボールの持ちすぎは女学院FCアンクラスの課題なのかもしれない。



 さて、この日感じたことを・・・。
 様々な問題点を抱えながら、指導者と選手たちの情熱と努力で運営される九州リーグ。その存在は九州の女子サッカー界において大きな役割を果たしている。そのことを大前提に置いた上で、敢えて感想を述べれば、参加しているチーム同士の格差が大きいということだ。トップを走る福岡女学院FCアンクラス、熊本USCと上位チームとの差、上位チームとそれ以外のチームとの差、この日の試合を見る限り、その差は埋めようがないほど大きい。

 同じ傾向は全日本女子サッカー選手権でも見られた。L・リーグ上位と下位、L・リーグとその他のチーム、さらに、その他のチーム同士にも大きなチーム間格差が存在する。小学校卒業後はプレーする環境がほとんどなく、そのために競技人口が増加しないために生まれてくる現象だ。結果としてトッププレーヤーが集まるクラブは限定され、そうでないクラブとの格差は広がるばかり。しかも、限られた環境の中でのプレーを強いられている現状では、トップチーム以外が自らの手でレベルアップを図るのは不可能に近い。

 しかも、競技人口の少なさは、12歳以上を一括りにして「オーバー12」という概念を導入しないとチーム自体が成り立たず、さらには大きな格差を抱えたチーム同士が同じ土俵で戦わなければ大会そのものが成立しないという問題も生み出す。女子サッカーのトップレベルの強化はもちろん大切だ。しかし、それ以上に、中学校年代以上のプレー環境を整えることが急務と言える。回り道に見えるかもしれないが、それが結果的にはトップレベルの強化につながっていく。


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