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 頑張れ!女子サッカー 03/10/21 (火) <前へ次へindexへ>

 10月25日(土)、神戸ユニバーでL&J同日開催。


 文/西森彰
 絶妙のタイミングでカナダ女子代表の最終ライン裏に小林弥生が抜ける。飛び出したGKをも交わし、後はループシュートをゴールマウスに流し込むだけ。引き分けでOKという状況で2点目が入ろうとしている。「よし、これで勝った!」。テレビ画面に向かってガッツポーズをしたその瞬間、美しい弧を描いたボールは僅かに枠を逸れた。プレーオフ以来二人三脚してくれていたサッカーの神様が、日本女子代表に残酷な「さよなら」を告げた。

 その後の展開は読者諸兄も知ってのとおり。ビッグチャンスを逃した後に連携ミスを突かれて同点。体格差を生かしたパワープレーの前に逆転を許すと、大谷未央のビューティフルゴールにはオフサイドの判定が下され、相手の苦し紛れのクロスが絶妙のコースに吸い込まれる。悪夢のような試合展開の中、上田栄治監督が最後に切ったカードはチーム最年少の宮間あや。すでに奇蹟が起こることを信じきれなくなっていた私の目には、小柄な体に大きな背番号を背負った宮間の姿が、ジェルランのピッチに飛び出していった5年前の小野伸二にダブった。

 試合は1対3のままタイムアップ。初の2ndラウンド進出に沸き返るカナダチームの逆サイドで、日本女子代表は涙にくれた。彼女たちを倒してベスト8に進んだカナダは強豪・中国を接戦の末1対0で退け、最終的に4位という好成績を収めた。そしてグループリーグで圧倒的な強さを見せ付けたドイツは優勝。「組分けに恵まれた」と思っていた自分の不明を恥じねばならない。最終結果から振り返ると、アメリカ、スウェーデン、北朝鮮、ナイジェリアで構成されたグループAに次ぐ激戦区だったのだ。

 最大目標としていた決勝トーナメント進出を果たすことなく、アメリカを後にした日本女子代表。しかし、アメリカンフットボールのラインが引かれた北米のピッチを駆け回り、ベンチから喉を嗄らして声援を送った彼女たちにとって、メキシコとのプレーオフからこのカナダ戦までは、夢のような2ヶ月間だったはずだ。



 これまでは全日本女子選手権の決勝戦でさえ、ところどころでぶつ切りにされた一部ダイジェストの深夜録画放送という仕打ちを受けていた。そんな「商品価値がない」と思われていた女子サッカーの試合が、地上波、それも民放で完全録画中継、グループ最終戦に至っては生中継で放映され、そこそこの視聴率を収めたのだ。あくまで「代表」というブランドウェアあってこその値付けではある。しかし、それでも一昔前を考えれば考えられないことだ。

 上記のテレビの対応に見られるように、マスメディアの捉え方も変わった。前述の全日本女子選手権では決勝戦を除くと、記者席にいたのは当サイトの中倉一志編集長他1名。それが、メキシコとのプレーオフ第2戦には、取材申請が却下されるほど多くの報道陣が詰めかけた。そしてUSA2003への切符を勝ち取ると、翌日には日刊紙、スポーツ紙の各紙が1面もしくはそれに準ずるスペースを割いてくれた。

 本大会直前には、私が足を運んだLリーグの各会場にも、本番へ向けて代表選手たちの抱負、コメントを録ろうとするテレビ局スタッフの姿が必ず見られた。これもワールドカップ効果には違いない。正直、これからどれだけの取材陣記者が残ってくれるかは分からない。しかし、女子サッカーというカテゴリーに目を向け始めた専門誌記者、フリーのライターが増え始めているのも事実だ。

 それはサッカーファンも同じ。30度を超える猛暑の中、自分たちの応援するJリーグ各クラブの試合会場への経由地として、国立霞ヶ丘陸上競技場まで足を運んでくれた12,743人。そして深夜、早朝にゴソゴソと起きてテレビの前に体を運んだ延べ100万人近くのサッカーファン。彼らの数パーセントがLリーグの会場にも足を向けてくれれば、100人単位の観衆しかいなかったスタジアムもより一層盛り上がることだろう。



 そして今週の土曜日、Jリーグのファンにも、気安くLリーグのゲームを見る機会が設けられた。10月25日に神戸ユニバー記念競技場で行なわれる田崎ペルーレFC対伊賀FCくノ一のゲームだ。「10月25日」と「神戸ユニバー記念競技場」という文字にピンときたファンもいるかも知れない。そのとおり。J1残留に向けて全てを賭けるヴィッセル神戸と逆転優勝を信じて戦う鹿島アントラーズのゲームの前座試合として組まれているのだ。

 おそらく、史上初めてJリーグの前座試合として組まれた公式戦となる田崎対伊賀のゲームは、Lリーグの覇権を賭けて戦われている決勝リーグの第2戦だ。田崎はさいたまレイナス開幕戦を制している。関西2強の対決である。予選リーグとも言える西日本リーグでは4−0、1−0と田崎が伊賀に連勝している。ワンサイドゲームで屈した頃の伊賀とは比較にならないくらいチーム力がアップし、第2戦では田崎も苦しい試合に持ち込まれている。「全勝優勝」を目指す田崎に、伊賀がストップをかけられるか、興味はつきない。

 田崎は磯崎浩美、大谷未央、川上直子、柳田美幸、山本絵美と5人のメンバーが本大会のゲームに出場し、伊賀も宮崎有香、宮本ともみ、山岸靖代と3人が代表入りしていた。田崎の山本はアルゼンチン戦の、宮本ともみはカナダ戦のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されるほどの活躍を見せたし、大谷未央はハットトリックも達成している。「女子代表の試合なら見たことがある」というファンには格好のファーストゲームだ。



 当日の神戸ユニバー記念競技場は、午前11時に開場時間が早まる。そして、Lリーグのゲームが11:45キックオフ、その後に行なわれる神戸対鹿島のゲーム開始は15:00だ。もちろん、神戸対鹿島戦のチケットで2試合とも観戦が可能だ。神戸ファンなら、同じ兵庫県でクラブを運営するよしみで田崎を応援すれば良いし、鹿島ファンならアウェーという同じ境遇で肩を寄せ合う伊賀をサポートするのも良いだろう。

 これは来年度以降のJリーグとLリーグの同日同所開催まで睨んだ、大きなテストケースに違いない。「あのプレーオフにも行きたかったが、試合会場が国立なので諦めた」という関西のサッカーファンは(贔屓チームの試合スケジュールと時間がかぶっていないようなら)、ぜひ神戸ユニバー記念競技場に足を運んで、女子サッカーのリスタートを見守ってもらいたい。
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