リーグ戦初勝利をめざして積極的な出足を見せたルネサンス熊本。

健闘もルネサンス力及ばず。岡山湯郷BELLEが順当勝ち。 　取材・文／中倉一志

第15回Ｌリーグ決勝リーグ　下位リーグ第３節　ルネサンス熊本vs.岡山湯郷BELLE
2003年11月2日（日）12:00キックオフ　熊本市水前寺競技場　天候：雨
試合結果／ルネサンス熊本１−５岡山湯郷BELLE（前０−０、後１−５）
得点経過／［熊本］佐藤（53分）、［岡山］江口（69分）、光藤（72分、79分）、江口（86分、88分）


　東西リーグの４位以下で行われるＬ・リーグの下位リーグ。今年はその意味合いが大きく変わった。来年度からＬ・リーグの開催方式が２部制の全国リーグに改められることに伴い、下位リーグでの成績によって１部、２部が振り分けられることになったからだ。１部リーグでプレーできるのは、上位リーグ進出チームに下位リーグ上位２チームを加えた計８チーム。生き残りをかけるリーグ戦に臨む各チームのモチベーションは高い。

　下位リーグで戦うそれぞれのチームの目標は、まずは１部リーグ参入決定リーグへの出場権を得る上位４チームに入ること。とりわけ、わずかに勝ち点１差で上位リーグ進出を逃した岡山湯郷BELLEにとっては、１部リーグに参入することは至上命題だ。日本代表の宮間あや、福元美穂を擁する岡山湯郷BELLEのポテンシャルは高い。しかし油断は禁物。相手が西日本リーグ最下位のルネサンス熊本とはいえ、全力を挙げて試合に臨む。

　一方、ルネサンス熊本にも何が何でも勝ちたい事情がある。2000年シーズンからＬ・リーグに参戦しているルネサンス熊本の昨年までの通算成績は２分33敗。昨年、ようやく勝ち点を挙げたものの、今シーズンもここまで勝ち星がない。まずは１勝。それがチームの願いだろう。確かに両チームの間に力の差は存在する。しかし、ここは地元の水前寺競技場。スタンドに駆けつけた支援者の声援にこたえるためにも勝利を目指す。

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日本女子代表の宮間あや。卓越した技術と戦術眼は、この日も健在。
後半から出場して２アシストを決めた中川。宮間とのコンビで何度も 　右サイドを崩した。

　そのルネサンス熊本が立ち上がりから積極的な姿勢を見せる。岡山湯郷BELLEが前に出てくるところを激しくプレス。ボールを奪ってFW佐藤に預けると、左からはMF寺澤が、右からはサイドに流れたFW田代が前へ飛び出す。高い位置で奪ったボールを素早く前線に送り、スピードを生かして裏を取ろうという狙いのようだ。強豪、岡山湯郷BELLEに対し一歩も引かない構えを見せるルネサンス熊本。ここまで未勝利のチームとは信じられない。

　一方、４−５−１の布陣を敷く湯郷BELLEの攻撃の中心は宮間あや。攻撃に転ずるときは必ずといっていいほど宮間を経由する。ワンタッチでボールを捌く高い技術。スペースを見つけてスルーパスを通す広い視野。チャンスと見れば積極的にシュートも打てる。その存在感は他を圧倒している。しかし、ルネサンス熊本の厳しいプレスの前に岡山湯郷BELLEはチャンスが作れない。それどころか序盤戦は自陣に押し込まれるシーンが目立つ。

　しかし、ルネサンス熊本の頑張りも20分まで。飛ばしすぎたのか、中盤のプレスが緩み始めると岡山湯郷BELLEが猛攻を開始した。宮間からのパスを受けた中田が何度も左サイドを突破。そこから決定的なシーンを再三演出する。いつゴールシーンが生まれても不思議ではない展開が続く。しかし、際どいコースに飛んだシュートはことごとく枠をはずれ、あるいはルネサンス熊本の必死のDFに阻まれてゴールを奪うことが出来ない。

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　一方的に攻めながらもゴールが生まれない岡山湯郷BELLE。後半に入るとボランチの位置にいた高畑と右サイドのMF泉を下げて、光藤と中川を投入。中盤をダイヤモンド型にした４−４−２にシステムを変えてさらに攻撃に出た。宮間、中川のコンビで右サイドを切り崩し、中央には光藤と江口がつめる。もはやルネサンス熊本は守るだけで精一杯。ルネサンス熊本もここまでかと思われた。しかし、サッカーは思うように行かないから面白い。

　53分、久しぶりに攻めあがったルネサンス熊本が一瞬の隙を突いて先制点を奪ったのだ。ピッチの上で抱き合うイレブン。スタンドから歓声が上がる。そして、この後、守るだけだったルネサンス熊本に勢いが戻ってきた。ゴールという結果は、それほどイレブンに勇気を与えるものなのだ。さすがの岡山湯郷BELLEも攻撃が手詰まりになってくる。幾分攻撃が中央に偏り始めたのは焦りなのか。岡山湯郷BELLEにとっては嫌な展開になっていく。

　しかし、この流れを宮間が変える。69分、ボールをキープして右に流れると絶妙のクロスをゴール前へ。これをゴール前に飛び込んできた江口が頭で合わせた。ファインゴール。そんな言葉が思わず口をつく。ここからは岡山湯郷BELLEの独壇場。続く72分に逆転ゴールを決めると、あとはゴールラッシュ。結局終わってみれば５−１の大差で岡山湯郷BELLEが勝利をものにした。宮間は３アシスト、交代出場の中川も２アシストの大活躍。また、江口はハットトリックを記録した。

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	ルネサンス熊本の攻撃の起点を務めた佐藤。先制点を奪う活躍を 　見せたが・・・。

　雨交じりの中、必死にボールを追いながら地元の期待に応えようとプレーしたルネサンス熊本のイレブン。強豪相手に１点をリードし、もしかしたらと思わせる大健闘を見せたが最後は力尽きた。後半だけで浴びたシュートは19本。力の差はいかんともしがたかった。しかし、前線で起点になった佐藤。左サイドでスピードのある突破を見せた若干15歳の寺澤。敗れはしたが好材料はある。初勝利は手に入らなかったが、これからの戦いに期待したい。

　一方、勝った岡山湯郷BELLEはまごついたものの、最後は評判通りの実力を見せた。司令塔・宮間あやを中心に両サイドから崩すスタイルは見事。是非、１部リーグで戦って欲しいクラブである。何もないところから官民一体となって０からスタートしたクラブの平均年齢は19.4歳。新しいクラブスタイルを模索しながら、かつての名選手、本田美登利監督の下、その実力を磨いている。まだまだ伸びしろたっぷりのチーム。どこまで強くなるのか楽しみだ。



（ルネサンス熊本）
　GK　野添七美
　DF　島田佳由子　倉本直子　荒木真実（45分／高橋桃子）　奥村沙代
　MF　安部友美　寺澤希　有富明菜　北川ちはる
　FW　田代弘美（17分／歌野あきな）　佐藤恵利子

（岡山湯郷BELLE）
　GK　福元美穂
　DF　高畑愛美（45分／光藤友希）　北岡幸子　福原理恵
　MF　松原めぐみ　宮間あや　泉紀子（45分／中川理恵）　中田麻衣子（75分／赤井歩）　城地泰子
　FW　岡本美代　江口なおみ