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 頑張れ!女子サッカー 03/12/24 (水) <前へ次へindexへ>
 胴上げされる田崎仲井監督

 田崎ペルーレ、待ちに待った悲願のリーグ初優勝。


 取材・文/西森彰
第15回L・リーグ決勝リーグ 上位リーグ第10節 田崎ペルーレFCvs.YKK AP 東北女子サッカー部フラッパーズ
2003年12月21日(日)13:15キックオフ さいたまスタジアム2002 観衆:500人 天候:晴
試合結果/田崎ペルーレFC4−1YKK AP 東北女子サッカー部フラッパーズ(前3−0、後1−1)
得点経過/[田崎]大谷(3分、31分)、山本(37分)、白鳥(59分)、[YKK]高橋(81分)


 常盤木学園や聖和学園など高校女子サッカー界をリードする宮城県は、女子サッカーが盛んな地域のひとつだ。その地で近年、上位リーグの常連となっているのがYKK AP 東北女子サッカー部フラッパーズ。昨年、上位リーグに進めなかった屈辱を胸に、今年は東日本リーグで見事に優勝を飾った。上位リーグに入ってからは4−4−2が通じず連敗。そこで3−6−1と中盤を厚くするシステム変更に踏み切り、ようやく立ち直りの兆しを見せはじめた。もちろん優勝チームを相手に、東日本の1位として最後に意地を見せたいところ。

 対する田崎ペルーレFCは目の前で日テレ・ベレーザがさいたまレイナスFCに破れ、最終戦のキックオフを待たずに初優勝が決まった。ピッチ上の全局面で1対1を走り負けない。それが田崎の強さのベース。イーブンボールに対しての出足が1歩早く、そして持続力が1歩長い。「1対1に負けない。取られたボールについては必ず追いかける。そういった部分が一番大事だと思いますから」(田崎・川上直子)。共通項が多いのは別のカテゴリーだが国見高校だろうか。とにかく運・不運の介在する割合が極端に少ないサッカーだ。



 L・リーグ最終戦。既に優勝は決まっていたが、両チームとも力の
 全てを出して戦った。
 既に先週の時点でセーフティーリードを作り上げていたが、正式に優勝が確定した心理的影響は大きかったはずだ。リラックスした状態でゲームに臨んだ田崎は、3分にさっそく大谷未央がゴールを奪う。「試合の立ち上がり、入り方は良かったのだが、早い時間帯に先制されて落ち着きをなくしてしまった。田崎のプレッシャーに負けてしまった」。YKKの齋藤誠監督はゲームプランを台無しにした早すぎる失点を悔やんだ。

 1点を奪った後もほとんど相手陣内に押し込んでガードの上からパンチを繰り出す田崎は31分、右サイドに流れた鈴木智子が折り返したボールに大谷があわせて2点目をゲット。直前の接触プレーで負傷していた大谷はこの2点目でお役御免。優勝に加えて最優秀選手、得点王にも輝いた日本代表のエースストライカーは、渡辺千尋に後を託してベンチに退いた。

 防戦一方のYKKは、37分にも土橋優貴のセンタリングから山本絵美にゴールを奪われ、前半で既に3失点。ハーフタイム。ともすればゲームへの気持ちが切れてしまいそうになる選手たちに、齋藤監督は「0-0のつもりで、1点を取りに行こう」と声をかけて送り出した。59分にコーナーキックから白鳥綾が田崎の4点目を頭でねじ込む。それでもYKKの選手たちは諦めずに戦った。

 65分に投入された高橋唯が2列目からの飛び出しで反撃を試みる。ハーフコートゲームになりかけているため、田崎の最終ラインは高い。その裏のスペースが狙いだ。76分、中央やや左の位置から北郷祐子が送ったライン裏へのフィードに反応してGKと1対1のチャンス。ここはややシュートが弱く、田崎のGK・大西めぐみに防がれたが、このゲームで初めてと言って良いYKKの決定機だった。

 そしてその5分後、今度は正真正銘のゴールが生まれる。3バックの中央に陣取る宇野涼子が蹴ったボールに再び、高橋が走る。1分前に行なった選手交代によって、田崎の選手たちはマークする相手を捕まえ切れていなかった。その間隙を突いてフリーになった高橋が右足でシュートを放った。L・リーグ北限の地から応援にやってきたファンに喜びの笑顔が生まれた。



 試合後、取材を申し込んだ我々に「優勝監督は向こうだよ。あっちあっち」と茶目っ気たっぷりに笑った齋藤監督。東日本リーグ優勝という好成績、そして決勝リーグに入ってからの低迷について「前半に点を取られないように守備の意識を持って戦い、先取点も取ることができたことが、東日本リーグ1位通過につながった。決勝リーグでは、やはり相手チームのレベルが高く、プレッシャーの速さやシュートの精度などが違っていた」。

「力が足りなかった」「チームの完成度はまだまだ」などの厳しい自己採点の言葉が、齋藤監督の口からは漏れたが、この日の敗戦については「今日の試合で、へこたれずに最後まで戦えたことは次につながると思う。年明けの全日本女子選手権が楽しみです」と、後半の粘り強い戦いぶりに一筋の光明を見出したようだ。前回大会もベスト4まで進んでいる。今度は国立霞ヶ丘陸上競技場の決勝まで辿り着きたい。



 初優勝を喜ぶ田崎の選手たち
「あー、良かった。ここでひとつ勝てて本当に良かった」と心の底からホッとした表情を見せた田崎の仲井昇監督は、L・リーグ優秀監督賞も受賞した。「チャレンジリーグ(2部リーグ)の頃からずっと会社がサポートしてきてくれたので、恩返しができました」と田崎真珠の後援に感謝する。他チームに比べて恵まれた環境と、得点王、最優秀選手賞を受賞した大谷をはじめ、充実した戦力が揃っていたのは確かだ。

 しかし、少数精鋭のチームは、代表選手を供出すると紅白戦もできないような状態にさらされた。ケガ人の回復状況に委ねる流動的なメンバーとともに、仲井監督は頭を悩ませたという。シーズンのハイライトについては「駒沢でのベレーザ戦の後半。諦めずに最後まで戦って1点差に迫ったこと。そしてキャプテンがいない次の高槻戦での圧勝。あそこがひとつの山だったと思います」と、決して平坦ではなかった、栄光への道程を回顧してくれた。

 チームをまとめたキャプテンの川上直子にも勝因を訊いた。「ベレーザ戦の後半は、カウンターから大量失点してもおかしくなかった。そこを1点差まで追いかけてくれた。そして2回戦に入るあたりのレイナス、伊賀との1点差ゲームで勝ち点3を取れた。昨年までならここで引き分けて、最後に紛れを残していた」。苦しい中、きっちりと3ポイントを積み続け、他チームへ無言のプレッシャーをかけた。それが日テレなどのライバルの取りこぼしにつながった部分は確かにあるだろう。

 今の田崎は「ひとつの完成形」にも見えるが、当事者に言わせれば「毎年やっていることは同じなので、これを続けていくことで、もう一歩上のレベルに行けると思う」(田崎・川上)と、まだまだ伸びシロ十分の様子。どこまでレベルを上げていくのか、そのプロセスを見守っていきたい。


(田崎ペルーレFC) (YKK AP 東北女子サッカー部フラッパーズ)
GK: 大西めぐみ GK: 内田由布子
DF: 磯ア浩美、白鳥綾、佐野弘子 DF: 大部由美、宇野涼子、増田明子
MF: 土橋優貴(87分/早坂優)、川上直子、新甫まどか、柳田美幸 、山本絵美 MF: 棚橋美智子、北郷祐子、鹿毛亜希子、槇寛美(78分/本間真喜子)、梅原美砂子(65分/高橋唯)、染矢晴海
FW: 鈴木智子(80分/甲斐潤子)、大谷未央(33分/渡辺千尋) FW: 佐藤春詠
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